詩・短歌 「電話」「手紙」
詩『電話』
電話越しの君の声
その打ち明け話に息を詰める僕
嫌われたくなくて黙っていたのだ、と
壊したくなくて枉げていたのだ、と
聞かないふりをしたのは好きだったから
見ないふりをしたのも好きだったから
大事で大事で
自分自身よりも大事で何より大切だった
なのにすべては裏目に出て
なにもかもが修復不可能で
君の足元には
とうとう砕け散った結果の残骸があるのだ、と
君のすすり泣きを聞きながら
僕は辛抱強く繰り返す
「君は悪くないよ。」
窓の外は雨
梅雨ざむの冷気が忍び寄る
「ふたりは始めから似合わなかったよ。」
今だから
嫉妬ではなく慰めの言葉になる
それなのに
どうしてなのか
嘘をついたわけでもないのに
どうしてなのか
君に告げた言葉が痛かった
短歌『手紙』
誰に宛てて書くというのではない作業僕の手紙は長い独白
崖っぷちいつでもそんな気がしてる平穏無事の日々の連鎖に
なぜだろう僕であって僕じゃないテープの声も写真の姿も
もう、何年前になるでしょう。
今はなき「小説JUNE」の投稿コーナー「黄昏詞華館」の投稿者仲間で詩歌の同人誌を作ろうという企画があり、お仲間に加えていただいたことがあります。
そのときの「お題」が、『耐え難い夜に書く手紙』でした。
(JUNEごころをくすぐるお題ですねー。)
詩プラス短歌という変則スタイルで参加しました。
(連載第1回目を御参照ください。)
同じメンバーで、もう一冊同人誌を出したわけですが、今度のタイトルは確かフリーで、私は『電話』にしたんだったような………。
………懐かしいです。