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しじゅうくにち ~ 49日 ~  作者: えだいち
3/5

そっとしておいて欲しい 『花』

 私は黄泉の世界くにの門に着いた。

すると、その使者は、

「もう、現世には未練は無いですね?」と念を押す、

「もし、未練があるのなら戻る事は出来ます。

ただし、『よみがえり』の機会はもう二度と無くなります。そして、現世の中でずっと漂っているだけです。今までの『49日』間の様な自由も無くなり、過去の事も見えなくなります。

ただ、その時のその場所、時間も進まず、人知れずじっとしている事となります……が。

…………。

 もし貴方が望むのなら、この門を通り過ぎれば、

貴方の大切な物(人)、いつつの事は、黄泉の世界からも見守る事は出来ます。

どうしますか?、

 また、『よみがえり』を望むのなら、黄泉の世界くにでの順番を待って下さい……、

そして、もうひとつ大切な事があります。

黄泉の世界では、必ず、『よみがえり』の選択を遅かれ早かれ、しなくてはいけないという、ルールもあります。」


 私は、現世で 『ただ、漂っている』 のも嫌だし、黄泉の世界からでも見守る事が出来る、そして『よみがえり』という言葉にも魅力に感じ、門をくぐった。


 そこは、幼い頃、お伽話で聞いていた 『天国のお話』 とは違っていた。


 黄泉の世界でも、人間を始め、黄泉への階段で観ていた動物、植物……等々、数多くの生命がそこにあった。

私は、

「それもそうだろう、人間だけが生き物では無い。動物だって、植物だって、飴坊あめんぼだって」……


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 黄泉の世界くにでもランク付けがあった。

人間は、他の生き物を殺生していた生き物である。不安な気持ちもあり、どの辺りかな? と思っていたが、上位ランクである。

自然界は、弱肉強食で成り立っている世界である事は事実。

例え人類が、度が過ぎていた? にしても、それが自然界のルールである。

が、しかし……。

反省する部分も多々あるのではないか?、それが本当に重要だったのかと?


 私は黄泉に来たばかりである。

落ち就かなかったが、現世で、母を看取った時の、何か言いたそうにし、人差指、中指、薬指の3本の指を立てしるした意味が、現世の時からずっと知りたく、黄泉の世界でずっと母を探していた。


 遠くに何列もの長~い列が見える。


 そんな中、ある微生物? に出会った。

その微生物も人類と同ランクのレベルであった。

私は、

「あの長い列は何ですか?」と聞くと、その微生物は、

「おい!、お前、人類だな、現世では何も気が付かなかったかも知れないが、お前達のお陰で、おいら達は住む処も無くなりみんな死んでいった。黄泉の世界に来て、前の自分達に戻りたいと思っていても、お前達が反省もしていないあんな世界に戻りたくないと……な、

本当なら、答えたくもないが新入りのようだから、

あの列はなぁ、『よみがえり』のための列だよ!、

だだしなぁ~、……、

半数以上は『よみがえり』を希望していないと思うがな。

出来れば、この黄泉の世界くにで平穏無事に、自分の大切な物を見守っていられるのなら、それだけでいいと思っているんじゃないかな。

お前には、まだ時間があるだろうが、いずれその時は来る。半強制的にな。

その時、お前は何を選ぶのか? おいらには解らんが、考えとけよ。それが、今おいらが言えるアドバイスだ。いいか……、

まえらさえいなければ、おいら達も……、

そして、いずれ解るよ、馬鹿な生き物、人類とな……」

と、口を噤んだ。


 振り返ってみると、我々人類は、私利私欲のために突っ走ってきていた。

でも、もう遅いのかもしれない、

この黄泉で、こうして微生物と話、気づいたとしても「あとの祭り」なのかもしれない。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 私は、とにかく母に会いたくて黄泉の世界を探した。

そして、やっと逢える事が出来た。

それは、あの幾筋も延びていた列のひとつだった。

私は、母に

「逢いたかった!、ごめん、ろくな親孝行も出来なくて」

と、黄泉の世界ではあったが、涙を溢した。

母は、私に、

「もっと、しっかり生きていなきゃ駄目じゃない!……。でも嬉しいよ逢えて」と、

えっ、と思い、

「これからもずっと此処でいようよ」と言うと

「もう、かあさんはね……、この黄泉から現世に戻らなくちゃらない時が来てしまったの、

お前が『よみがえり』のその時に何を選択するか? 解らないけど、その時は必ず来る。

もし、また来世でお前に逢える事があり、前世の記憶があればいいね。その時まで、元気でね」

私は、母に

「ねぇ、来世では何になるつもりなの?」

「それは言ってはいけないし、これから決まる事だから……、でも、もう人間には戻らないと思うよ……」

「そんな事無い、また、俺の母さんになってよ!!」

「いずれ解るよお前にも、何故母さんが『よみがえり』として、人間を選ばなかったのか……」

「じゃぁ、これだけは教えて、何故母さんが前世の最後の時に3本の指を立てていたのか?」

「それはね……。

あの事は、前世での出来事。

黄泉の使者の方も言っていたでしょう? 現世での未練は無くさなくては逝けないの。だから、もう忘れたし、忘れなさい。お前にはまだ『よみがえり』の期限までは時間もあるし、今、見守る事をしなくてはならない事があるのなら、それを大切にしなさい、

もう母さんには時間も無いし、この黄泉の世界くにでお前とも逢えたし、来世でまた逢おう、元気でね」

それは、現世時代の優しい母さんだった。


「じゃぁ、最後にこれだけ教えて。

父さんはどうしたの? 黄泉にはいないの?」

すると母さんは、

「現世の時から庭いじりが好きだったでしょう? 実家にも松とかまきとか、そして、綺麗な庭石もあったでしょう? 父さんはね、みんなから好かれる石に成るんだって、先に現世に戻ったわ。昔から後先あとさき考えなかった人だったからね……。

でもいいかい、お前は、これからの黄泉の時間で来世の事を良く考え、その時が来たら決断し……、もし、

また、逢えたらいいね……」


 そして、私は決して未練に思ってはいけない現世の時を思い出し、

「おふくろ……」と、涙した。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 母さんは、「じゃぁね」とほほ笑みながら、

その列は、徐々に先へと行ってしまった。

私は、前世でも好き勝手だった父さんが、『石』を選んだのを解るような気がした?……、まっ、それもいいか。

なら、母さんは?……、

母さんは、地味な人だった。

何の欲も無く、強いて言えば『花』が好きだったかな?

お金を掛ける様な趣味も無い。

きっと、来世は道端でもいい、目立たなくてもいい、むしろそんな『花』に成る事がいいのかな? と思っていた。


 すみません、本稿でも『セミ』まで辿り着けませんでした。


次話では、きっと『セミ』を選んだ訳を書きたいと思っています。


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