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転
相変わらず降り続ける秋雨の中を、僕と彼女は並んで色違いのレインコートを着て歩いている。
彼女の青いそれは僕が以前使っていたもので、僕の黄色いそれは彼女が使っていたものだ。
結構前の大雨の時に、彼女が雨具を持ってきて居なかったから、僕は見かねて自分の青いレインコートを彼女に貸した。何故なら、予備の傘は持っていたし、濡れるのは嫌いじゃない。
翌日、彼女は僕に黄色いレインコートを「深い意味は無いけど、昨日のお礼よ。ありがとう」と言って押し付けるように渡してきた。
その時の彼女は珍しく、本当に珍しく顔を耳まで真っ赤にしていた。
それからは僕は黄色いレインコートを、彼女は青いレインコートを雨の日にいつも着ている。