かごのなかの小鳥?
更新が途絶えている間、どこまで書いたか忘れて同じシーンをまた書いてしまったというお恥ずかしい有様。
新しく書いた方に差し替えました…。続きがんばります。
(どうしてこうなった…)
少女が足を進めると、そろそろと後ろから足音がする。
とても上品な足音だけれど、数が揃って重なるとさすがにプレッシャーじみたものを感じる。
少女がターンをすると、ふわっそろそろ、足を止めると、そっ、蟹歩きなんてしてみると、そーっ、なんて感じだ。
ちなみに特にやっていることに意味はない。
少女は意を決すると、唐突に全力でダッシュした。
そろそろの足音たちも慌てたように少しばたばたし、上品な音も大きくなり、つぉロつぉロといった感じでがんばってついてくる。
しかし、こちとら旅商人の健脚。だんだんと音は小さくなり、同時に悲鳴交じりの息を吐く声なんかが聞こえてきたりして。
「お、おまちくださいましぃ~…」
「ひぃぃふぅぅ、ひぃぃ」
そんな声が後ろからかすかに聞こえてきて、さすがに可愛そうになって少女は足を止めた。
振り返ると、汗だくになって息を切らした侍女さんたちが、こちらに駆け寄ってくる。
(そんなにきついなら、無理してついてこなきゃいいのに…)
そう思いながらも、少女は計7人の侍女たちを待ってやる。
侍女たちは本当に上品な雰囲気を漂わせた正真正銘の侍女たちで、ちまたの成金商人が丁稚奉公の少女にメイド服を着せたような自己満足の産物とはまったく違う。
髪型や服装ではなく、当人たちに貴族としての気品があるのだ。
やっぱり本物は違う。
などと少女が考えていると、最後の侍女が半泣きの顔でようやく追いついてきた。
「どうしてそんなに走られるのですかぁ~」
「そんなこと言われてもねぇ」
人が何故走るのか。
理由はさまざまだ。平和の祭典のために走る人もいれば、暴君に囚われた親友を助けるために走る人もいる。
クルスス達は手紙を届けるために走るし、犬はボールが飛んでくから走る。
(では、私が何故走ってるのかというと)
「大人数でぞろぞろついてこられると、うっとうしい。あと監禁されてストレス溜まってるから」
「ひどいっ!それに監禁ではありません。最賓客待遇です!」
侍女のリーダーが泣きながら両手を振り上げ抗議する
「じゃあ、外に出してよ」
実を言うとここ一週間、少女はお城の外に出してもらえなかった。というか、少女としては城をすぐにでも出て行くつもりだったのに、あのわけのわからない結婚しようという提案(あれをプロポーズとは認めない)という言葉を断ったあと。
「そっかぁ、残念だなぁ。でも、まあそれは置いておいて、せっかく王宮に来たんだし、しばらく羽を休めていってよ」
と、生前と同じ粘り腰の強さを発揮され、それでも一晩ぐらいお世話になったらさっさと出て行くつもりが、城の外に一歩も出してもらえず、もう一週間たったとも言える。
これを監禁といわずなんという。
「それはだめです」
「なぜに」
「外の世界は悪徳と欲望にまみれています。大変危険です。外に出すわけにはいきません」
「その外の世界から私来たんですけど…」
(むしろそういう世界で生きてきた生き証人(商人)ですが…。)
何がなんでもそこは譲る気の無い少女尽きの侍女たち。そもそも何故自分に侍女がついているのか、そこからがして少女には意味が不明なのだが、彼女たちの説明は要領を得ない。
「代わりにお城の中なら、どこへいってもいいと王子さまから許可を貰っています。王室内のコンサートホールでも、観劇場でも、王子さまのお部屋でも好きなところをお申し付けください」
代わりにとか言いながら、何も解決になってないことを言う次女たち。
それはお城にいろということではないか。
まさか外に少しでも出たら、そのまま逃げ出すとでも思ってるのだろうか。
もちろんそのつもりである。
しかし結局は王子に言わないとらちが明かないのだろうということは少女もわかっていた。彼女たちも王子の命令に従っているだけなのだから。
少女は自分をここに招待という名の監禁をした王子の憎らしい顔を思い浮かべた。
当の本人はというと、あれ以来、やらなければならないことがあるということで、一回も姿を見せない。いったいどういうつもりなのか。
とにかくまた王子に会えたら、速攻で出て行く許可を取り付け、城をでていくつもりだった。
しかし、それまではこのままでいるしかなさそうだ…。
「じゃあ、あそこに行かせて」
代案に乗る形で少女が指さしたのは、王宮の広い庭の一角だった。
そこはいろんな珍しい植物やバラが植えられている今歩いている王宮の庭とは違い、広く一帯が背の低い青草の草原のようになっていて、真ん中にぽつんと青い木の実のなった木があるだけの丘だった。そしてそのまわりを背の高い柵が囲んでいる。
選んだ理由は運動に良さそうだったからだ。
王宮の生活は閉じ込められたストレスとは別に、快適といえば快適なのだが、こういう生活に慣れていてはいけない。少女は旅商人なのである。特にスタミナは落としてはいけない。
「だめです!」
しかし、きっぱりと断られる。
(さっき城の中ならどこでもいいっていったよね!?)
少女はびっくりした。侍女のリーダーの声が叫び声に近かったので、二重にびっくりした
「な、なぜに…?」
「あそこは危険なんです!」
わけがわからないよ。
あの見晴らしのいい草原のどこに危険があるというのか。そこが危険なら、少女が良く止まる安宿は机やベットの隅が角ばっていて死の危険すら予感させる場所ではないだろうか。
「とにかくだめだといったらだめですー!」
目じりに涙すら浮かべて勝手にヒートアップしていく侍女のリーダーに、地雷でも踏んだのかと、むしろあそこに地雷でも埋まっているのかと、少女は汗をたらしながらその様子を見つめるしかなかった。
さすがにまずいと思ったのか、侍女の仲間たちが、彼女をなだめたり慰めたりしていく。
少女もそんな侍女の様子に。
「わかったわかったから…」
といわざるを得ない。
「本当ですか?」
「うん…」
少女より背が高いのに、上目遣いで見つめてくるという高度なテクニックを使ってくる侍女に、少女もうなずいた。
内心はもはや意味がわからないことが多すぎて、混乱の極みだったが。
衣食住と満たされた王宮の生活だったが、少女にとっては難儀なことだった。




