ツバメと王子
とある街の中心に、幸福な王子の像がたっていました。
体は金箔で覆われ光り輝き、腰にはルビーをはめ込まれた剣、瞳は美しいサファイア、心臓だけは鉛でできていました。
幸福な王子の像は街の人気者でした。
そんな王子のもとに一羽のツバメがやってきました。
王子はツバメに頼みました。
「病気の子どもがいる貧しい母親に、このルビーを届けてやっておくれ」と。
ツバメは言われたとおりに剣からルビーを取り母親へと届けました。
王子はまたツバメ頼みました。
「ここから見える貧しい劇作家のもとへ、私のサファイアの瞳を届けておくれ」と。
ツバメは躊躇いましたが、結局その王子の頼みを聞き、劇作家へとサファイアを届けました。
王子はまた頼みます。
「もう一つの瞳を、不幸なマッチ売りの少女に届けてほしい」と。
もう、冬は間近に迫っていました。
それでもツバメは王子の頼みを引き受け、サファイアの瞳を取ると少女の手に入れました。
ツバメはそれからも王子の願いを叶えるため、その身を覆う金箔を街の貧しい人たちに届けていきました。
冬がやってきました。ツバメは寒さに耐えきれず、死んでしまいます。
同時に王子の心臓も、二つに割れてしまいました。
金の箔も美しい宝石も失ってしまった王子の像をみた街の人たちは「なんとみすぼらしい像だ」。そう言って王子の像を取り崩し、溶かしてしまいました。
溶け残った鉛の心臓と、ツバメの死骸はゴミとして捨てられてしまいました。
そこに天使がやってきました。
彼は世界で最も美しいものを持ってきなさいと、神様に言われていたのです。
ツバメの死骸と、王子の心臓は、天使によって展開へと持ち帰られました。