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今日からあなたが七不思議  作者: 蒼峰峻哉
七不思議遭遇編
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参怪.宣戦布告……?

今回から後書き部分に次回予告を書いていきます。章が終わった時のまとめのようなものは、活動報告に書くことになるかもしれません。

「おい、いつまで寝てんだよ!」

 机に突っ伏して気持ちよく寝ていた僕の頭上に、遠坂晃一(とおさかこういち)が放ったチョップが突き刺さる。晃一は昔から力の加減が出来ない男だ。今回も相当の力で僕に攻撃してきた。あまりの痛みに、僕は思わず飛び起きる羽目になった。

「おい! 何するんだよ!?」

 僕は至極当然な疑問を晃一に投げかけた。気持ち良く眠っていたところをこんな起こされ方して文句を言わない奴は、世界広しと言えども存在しないだろう。睡眠と言うのは、それほど重要で大切な事なのだから。

 時計を見るとホームルームまではまだ少し時間があった。ならば一体どのような用件で僕を叩き起こしたのか。しっかりと納得のいく、それ相応の理由でなければ僕の眠りを妨げた怒りは消えない。

「お前に用があるって奴が来てるんだよ。一年の女子みてぇだけど、お前何処であんな可愛い女子と知り合ったんだよ!」

「一年の女子、だって?」

 今のところ僕にはクラスの女子以外、同学年の女子に知り合いは居ないのだが……。一体誰が、どんな要件で僕を訪ねて来たというのだ。

「おはようございます、戒都(かいと)さん」

 そこに居たのは艶のある黒髪の長髪を持った少女だった。ほのかに薄紫色をした大きな瞳は光を反射しきらりと光り、黒髪は美しい白色の肌を余計に際立たせている。細くスタイルの良いスレンダーな身体つきの、とても可愛い女の子だった。ちなみに胸は零奈さんには敵わないようだが大きい。

 …………僕は何を考えているのだろうか。

「え、えーと。どちら様?」

 何度も記憶を辿ったが、やはり知っている顔ではなかった。第一、クラスの女子以外の女子の知り合いは、現状零奈さんしか居ないと分かっているのだから照合する必要はないのだが。

「本当に分かりませんか?」

 目の前の女の子は何やら含み笑いを浮かべてそう言ってきた。そう言われると、何処かで見た事があるような気がするような、しないような……。

 そうだ、確か入学式で新入生挨拶を任されていた人だ。名前も覚えている。でもそんな前にではなく、つい最近彼女と会っているような……。

 その時僕は気付いた。僕が知っているものとは少し異なるが、この黒髪に薄紫の瞳。先ほど会ったあの『七不思議』に酷似(こくじ)している。話し方や立ち振る舞いはまるで似ていないが、恐らく二重人格のようなものに近いのだろう。

 零奈さんはこう言っていた。七不思議達は自分の意識と能力を、つまり魂とも呼べるものを代々継承させて、現在までその姿を保ったまま語り継がれていると。自分の意識を継承させているという事は、それぞれ七不思議の位を継承された者の中には、七不思議達の意識・精神も共存しているという事になる。つまり、普段は継承者が人間として生活しているが、七不思議の力を使う時にはそれぞれの七不思議の姿を取るという事になる。目の前の女の子がもし、朝方出会った七不思議『渡り廊下の黒猫』ならば、僕の考えは正しいという事になる。

「キミは、『渡り廊下の黒猫』杉原夏織(すぎはらかおり)で間違いないかな?」

 僕は意を決して彼女に確認を取った。もしこれで僕の勘違いだったなら、頭が少し残念な奴とか思われるんだろうか。そんな事を想像すると、少しだけ悲しい気持ちになったりもした。

 そんな事を考えていたところ、彼女からの返答が耳に届いた。やはり、僕の予想通りの結果のようだ。

「正解です、戒都さん。先ほどはお騒がせしました」

 とても落ちつきのある透き通った声で彼女、杉原さんは言った。

 朝、僕を驚かせに来た時とは驚くほど印象が違う彼女に少し戸惑う僕だったが、どうやらそれが顔に出ていたようで、その気持ち分かりますよ、というような笑顔を作り僕に向けてきた。

「はは、顔に出てたかな。ところで、杉原さんは僕に何か用事でもあったの?」

「夏織だけで良いですよ。わたしも名前で呼ばせてもらっていますし」

 それならお言葉に甘えてそうさせてもらおう。僕的には、女子を名前で呼ぶのはあまり慣れていないので少しばかり緊張してしまいそうなのだが。

「それなら……夏織。一体何の用で来たんだ?」

「大した用事ではないのですけど、これからお世話になるので挨拶にと思ったのと、一つお知らせをしようと思いまして」

 夏織は微笑みながらそう言った。なるほど、真面目そうな彼女が考えそうな事だ。気になったのは後半部分、お知らせとは一体何の事だ……?

「そのお知らせって言うのは何の事なんだ? ……まぁ、大方の予想は付いているんだけどさ」

 七不思議のひとつ、『渡り廊下の黒猫』が直々に伝えに来てくれるようなお知らせだ。きっと、いや、十中八九そう言う事なのだろう。僕も覚悟を決めて、彼女のお知らせを聞いてやろう。

「お知らせはですね。七不思議の一つが、今日の放課後に戒都さんに挨拶をしにいくから腹を(くく)っておけ、と言っていたのでそれをお知らせに来たのです」

 ………………やっぱりそういう事でしたか。

 大方予想していたとはいえ、実際に読みが当たっていたのは何とも複雑な気持ちだった。七不思議に会うのが嫌という訳ではないのだが、一体どの程度驚かされるのだろうかとかいう事を考えていると、素直に喜ぶ事が出来ないというのが率直な感想だった。

 とはいえ、避けては通れない道なのだし、今回に至っては相手側からの御指名を受けてしまっている。流石にそれを無視して帰るような事は出来ない。というか、そんな事をしたら後が怖い。

「き、気は進まないけどそういう事なら行かない訳にはいかないよなぁ……。悪いんだけど、帰りのホームルームが終わり次第会いに行くって伝えておいてくれないかな」

「えぇ、構いませんよ」

 夏織は僕のお願いに二つ返事で了承してくれた。大した事のないお願いだったとはいえ、少しも嫌な顔をせず即答で了承をしれくれた夏織。つくづく、七不思議モードの時とのギャップに驚かされる。まだ一度しかあの状態の夏織とは会話を交わしていないが、色々な意味で強烈な印象を受けたので良く覚えている。そりゃもう鮮明に。

 ついでに彼女に他の七不思議達の事も聞こうと思った時、ホームルーム開始五分前を告げるチャイムが鳴り響いた。

「それでは、わたしはこの辺りで失礼します」

「あぁ、また今度ね」

 僕はそう言い、彼女を送り出した。そう遠くはない内に。恐らく今日中にまた会う事になるであろう夏織は、僕の在籍する一〇四教室から三つ隣にある一〇一教室まで駆け足気味に戻って行った。……と思いきや再び僕の方に戻ってきた。

「忘れていました! 連絡先を交換しましょう」

 夏織はスカートのポケットからガラパゴス携帯電話、俗に言うガラケーを取り出しそれを僕に向けてきた。それに答えるように僕もズボンのポケットからケータイを取りだした。ちなみに僕のはスマートフォンである。幸い、僕のスマートフォンにも赤外線機能が付いているため、メアド及び電話番号の交換は簡単に済んだ。

「それでは今度こそさようなら」

 夏織は今度こそ僕に背を向け、自分の教室へと戻っていった。背後では晃一が殺気に満ち溢れた視線を送っている。笑いを堪えているのは我らが情報屋織内啓人(おりうちけいと)だろうか。とりあえずは、無視しておくのが正解な筈だ。


挿絵(By みてみん)


 突如告げられた次なる七不思議からの宣戦布告。はたして上手くいくのだろうか。だが、あまり心配をしていても仕方がないだろう。とりあえずは放課後までに覚悟を決めつつ、先に待つ授業達を消化させていかなければ。今日は理系の科目が多いため、文系の僕にとっては厳しい日なのだ。

 席に戻ろうとしたところを、僕にヘッドロックをお見舞いしようとしてくる晃一や、横から地味にちょっかいを出してくる啓人に妨害されたりもしたが、それらを何とか蹴散(けち)らして僕は自分の席に着いたのであった。

次回予告


放課後、とある用事から図書室に向かった戒都。

そこに現れたのは宵闇高校七不思議の四つ目『図書室のバラバラ死体』だった。

自身が七不思議の統括者という事を意にも介さず本気で襲ってくる七不思議に、戒都は遂に統括者としての力を呼び起こす。


次回、『目覚めの兆し』

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