9 なんか、旅に出ます(出発編)
0時に間に合わなかった…
「お待たせ~」
予定の時間より15分早くギルド前に着いたが、そこには既にローブをご丁寧にフードまで被って着ているセレンが立っていた。
「遅いわよ!私なんか1時間前からずっと居たのよ!」
もう一度言うが俺は遅れたわけじゃない。ってか早いな!1時間前って、今11時45分だから10時45分には居たのかよ。30分で準備終わったのか~。
「悪い悪い。待たせたついでにもうちょっと待ってくんない?」
「何よ、まだ準備終わってなかったの?」
「ちょっと約束があってさ~」
「まったく、さっさとしてよね!」
「サンキュー」
さてさて、セレンから了承も得られたところで、約束通りセレンと合流するまでの回想をしますか。
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図書館を出て俺は武器屋へと入っていった。
カラコルという街は貿易都市と呼ばれるだけあって(6話にちょこっとだけ書いてある)武器の種類は豊富だ。
剣、鎌、槍、ロッド、ハンマーなどたくさんあった。
ちなみに俺は魔法で戦っていこうと思うのでロッド希望だ。前衛後衛のバランスを考えてもセレンは明らかに前衛だからな…
というのは建て前で、ホントのところは怖いからだ。命の奪い合いなんて元の世界じゃしたことないし、相手の命を奪うことに躊躇して殺されるかもしれない。そんな前衛に少女であるセレンを出すのはどうかと思うが、こっちの世界で戦ってきたセレンの方が俺より適任だ。いずれは俺も最前線で仲間を守れるようになりたいが…
まあ、今こんな事を話してもしょうがない。
さて、この店にあるロッドだが、
・天雷のロッド(雷強化) 1万ワロ
・業火のロッド(炎強化) 1万ワロ
・氷雪のロッド(氷強化) 1万ワロ
・風斬のロッド(風強化) 1万ワロ
・店先に落ちてたロッド 1ワロ
が、主なロッドだ。ちなみにワロというのはこの世界の貨幣で、スーパーで100円で買えそうな缶詰めが10ワロだったから1ワロ10円と思ってくれて良さそうだ。
・・・・・もう突っ込んでいいよな?最後のって商品なの!?売る気ゼロだろ!
「すいませ~ん」
まあ、とりあえず俺が店員を呼ぶと、店の奥から若い男性が出てきた。
「どうしたっすか?」
口調軽いなこの人。
「この『店先に落ちてたロッド』って何ですか?」
「あぁ、それっすか?それは先週1日の仕事を終えて店をしまおうと店先に行ったら『持ち主を見つけてやってください』っていう張り紙と一緒に落ちてたんっすよ~。で、一応誰かが持ち主になってくれるように売ってるんすよ」
変わった人も居たもんだな~。まあ、そんなロッドの持ち主を本当に探す店主も変わり者ってか。
「へ~、じゃあそれ俺が買ってもいいですか?」
そして俺も変わり者ってことで。
1ワロだしな。損はしないだろ。
「へい、まいどあり~。代金は1ワロっす」
1ワロス!?と、つい反応してしまった俺だがすぐにこの人の口癖と理解する。
「はい、1ワロス」
しまった!!そんな事考えてたらつい言っちまった~!!
「? ありがとうございました~」
良かった。店員はスルーしてくれた。
さて、時間もちょうどいいし、ギルドに行きますか。
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って感じでした。
「サンキュー、終わったぜ」
「終わったぜって、あんた何もしてなかったじゃない」
変なの、と半眼で見られてしまった。
「さて、準備が整ったわけだが、どこに行こうか」
「え!?そんな事も決めてなかったの?ホント馬鹿ね!」
「ごめんなさい。じゃ、どっか静かな村みたいなのってある?」
この街は人が多くて住むには落ち着かない。東京育ちの俺とは思えない科白だな。
「この辺りだったらキルファ村かしら?カラコルから南東へ3時間くらい歩いた所にあるわ」
「じゃそこにしますか。それではそれでは、出発~!」
「ちょっと待った」
歩き出した俺の首ねっこを掴まれて立ち止まる。
「どしたの?」
「どしたの?じゃないわよ!まったく…街を出たらいつ魔物に遭遇するか分からないのよ!?戦う時のこと考えないと」
あぁ、そうか。今までは俺1人で戦ってたから全然気にしてなかったな~。反省。
「俺はロッド持ってることから分かるように魔術師。後衛で応援、もとい支援がメインだな」
いざとなったら前衛でも頑張るけど。いざとならない限り大して仕事する気も無いけどな。
「ちょうど良かったわね。私は剣士で前衛タイプよ」
「じゃ、戦闘がはじまったら・・・・・
と、打ち合わせをした。じゃ、今度こそ、
「行きますか~」
次回予告
潤「いよいよ出発か~。オラ、ワクワクすっぞ。ええっと、次回は俺とセレンによる初めての共同作業。だそうです。どうせ戦闘だろ?期待させて落っことすのは作者の常套手段だからな…みんなも気をつけろよ?」