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気まぐれセカンドライフ  作者: 誰かの何か
第5章 学校に行こう
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69 なんか、浮遊感がなんとも




「学園長の提案により突如実現したこの学年対抗試合!3年生は修学旅行中の為いませんが、1、2年生の代表には3年生の分まで素晴らしい闘いを見せていただきたいと思います!それでは、学園長から挨拶があります」


 やたら大きな声で司会をする生徒が喋り終わり、学園長へとマイクが渡される。

 現在午後1時。学園の闘技場には1、2年生が勢揃いしていた。なんでも機密事項である特務隊同士が闘うので、学年対抗試合という名目にした方が怪しまれないんだとか。

 因みに闘技場の中央には1年生の特務隊5人と2年生の特務隊4人が揃っている。


「続いてルール説明と選手の紹介です。

ルールは簡単。2年代表4人と1年代表5人が闘い、どちらかの代表の全員がHP0になった時点で決着とします。1年生はハンデとして5人での参加が認められています」


 いつの間にか学園長からの挨拶も終わったらしく、ルール説明に移っていた。まあ、決闘は一度やってるからだいたい分かってる。そんな事より問題は…


「選手の紹介です。まず2年生代表から、A組2番シン選手、A組3番ミント選手、A組4番シュミット選手、そしてリーダーA組1番タレス選手」


 昨日の新聞部のタレスって先輩がいる。しかも1番って事はあの人がプロミネントギルダーに一番近いっていう魔科学か。この学園じゃ有名人らしく名前が呼ばれたとき闘技場から歓声が響いた。


「続いて1年生代表、E組40番ジュン選手、A組2番グレスト選手、A組3番ラステル選手、A組4番マワター選手、そしてリーダーA組1番ハインウェル選手。以上が選手となります」


 俺が紹介がされた時周囲から笑い声がしたんだが…まあ、確かにE組なんて明らかに場違いだわな。


「よろしくね。良い試合をしよう」


 タレスが微笑みながら俺に手を差し出す。リーダーはナルシストなんだけどな…


「こちらこそ。お手柔らかにお願いしますよ」


 そう言って俺はタレスと二度目となる握手をした後、両チーム距離をとる。


「では早速始めます。電光掲示板にご注目ください」


 頭上の電光掲示板を見ると俺達9人のステータスの横に10、9、8、とカウントダウンが開始された。あれが0になったら試合開始なんだろう。


 今のうちに選手のステータスを見ておくか。

 俺とナルシストは前に見たとおりの数値だ。他の1年の特務隊とタレス以外の2年特務隊はナルシストと似たり寄ったりな数値だ。問題なのはタレスだ。



 タレス・マークル

  2年A組1番 上級冒険者

   闇属性

   HP:8974

   MP:9361

    力:502

   防御:485

   魔力:998

  魔防御:897

   敏捷:924

    運:438



 さすがプロミネントギルダーに一番近いだけあってかなりの高水準だ。ステータスから考えるに魔法が主な攻撃手段なんだろう。それに属性が闇属性とは珍しい。俺も人のこと言えないけど…



『ピーッ!!』



 一通りステータスを見終えた時、甲高い電子音が聞こえた。試合開始のようだ。


「んじゃ、作戦通り頼むぜ!堅牢な壁よ、ストーンウォール!」


 中級魔法の1つ、その名の通り岩の壁を創り出すストーンウォールを発動させ、俺とタレス、ナルシスト達4人とシンっていう2年生を囲うように壁を創る。これが作戦の1つ。俺が一番強いタレスを足止めしてる間に他の4人で2年生の1人を確実に倒すことで5対3にしようってわけだ。


「戦力の分散かい?やってくれるね。これだけ魔力が込められた壁は僕や君クラスの能力を持ってないと壊せないだろうしね」


 タレスが周囲の壁を見回しながら呟く。


「そういうことです。本来なら俺も他の4人に加わりたいんですが、あなたに出てこられるわけにはいかないので」


「ヤレヤレ、なんの作戦も考えなかった僕の判断ミスってところだね。ほら、もうシン君が負けちゃった」


 タレスが電光掲示板を見上げてそう言う。確かに、電光掲示板にはシンって人のHPが0になっている。とりあえず第一段階はクリアだな。


「第二段階に移行するかなっと」


 ナルシスト達の周りの壁を解除し、ナルシスト達4人対残り2人という状況にする。先程よりも難易度は高くなったが4対2ならまず負けないだろう。


「う~ん、このままじゃ僕たちが負けちゃうな。みんなが見てる前で負けるのも嫌だからちょっと闘うか」


 着々と削られていく残り2人のHPを見ながらポケットを探り出す。

 本来俺たちは学園長に力を見せれば良いだけで勝つ必要はないのだが、どうせなら勝ちたいからな。タレスが何をするのかよく分からないがナルシストたちが決着つくまで足止めはしないとな。


「何しようとしてるのか分かりませんけど、こっちからいきますよ。黒鴉っ!」


 タレスのような実力者の目の前でオルギヌスを使うとマズいんじゃないかと最近考えだした俺は身体能力強化後、手から黒鴉を発動させる。

 鴉を形作った黒い魔力は俺の手から離れると猛スピードでタレスに向かって飛んでいき、見事命中した。

 流石にこれだけで倒せたとは思えず、舞い上がる砂煙の中目を凝らすと、やはりタレスが立っている。


「いきなり特別魔法を使ってくるとはビックリしたよ。でも、一足遅かったみたいだけどね」


 よく見ると何かを持っているみたいだ。あれは…


「藁人形?何でそんな物持って…ッグ!!」


 突然全身をトラックにはねられたかのような痛みが襲う。

 痛みに苦しみながらも周囲を見回して敵を探す。が、周囲に異常はなく、依然として壁の内側には俺とタレスしかいなかった。

 って事はこの痛みの原因はタレスか。あいつが持ってるあの藁人形に何かありそうだな…まさか


「呪い、ですか?」


 俺がその結論に至ると、タレスは満足そうな顔をして語りだした。


「ご名答。流石はユリナントの英雄ってところかな?そう、これは呪法。今は訳あって魔科学の力は使えないからね。僕の得意な呪法を使ってるんだ。ちなみにこれは身代わりの呪法って呼ばれててね。対象を指定するもの2つと藁人形を使えば、その藁人形と対象の感覚がリンクするんだ。まあ、10分間しか効果がないのがたまにきずだけどね。そうそう、今回対象を指定するものとして、ジュン君の写真と指紋を使わせてもらったよ」


 昨日の夕方の事か…写真と握手はそのための物だったのか。迂闊だった。


「って事はやっぱりさっきの痛みは黒鴉が藁人形に当たったからだったのか」


 本当は何でユリナントの事を知ってるのかを問いただしたいが、この際それは後回しだ。今は目の前の闘いに集中しよう。


「そうなんだよね。呪いの効き目は身にしみたでしょ?だから、降参してくれないかな」


 タレスが藁人形を上に放っては取り放っては取りして遊びながらそう提案する。ってか身体に妙な浮遊感があるからやめてくれ。吐きそうになる。


「みんな頑張ってるのに俺だけ痛いの嫌だからって降参なんて出来ませんって。どうやらHPのほうに影響は無いみたいですし」


 頭上の電光掲示板では俺のHPはEのままだしな。


「わざわざ痛みを伴う道を選ぶとは…ジュン君ってもしかしてMなのかい?」


 タレスが藁人形に二回転ひねりを加えて宙に放り投げながら尋ねる。

 いや、ちょっとマジでやめて。このままじゃ主人公にあるまじき醜態を晒すことになるよ?


「そうではないと信じたいですね。それよりも早く闘いましょう。向こうの決着がつくとタレス先輩が追い詰められちゃいますよ?」


 出来るだけ普通に受け答えをするように心がける。今の最優先事項はあの凶悪な動きをする藁人形を止める事だ。


「否定しておきながら敵のピンチを知らせて、より一層自分を窮地に追い込んでいくあたり君は本物だな。だが、ここはジュン君の忠告に従って早いところ勝負を付けようか」


 タレスが藁人形を右手に持ち、釘を左手に持った。うわぁ、嫌な予感しかしねぇ…だが、俺にも秘策はある。出来れば使いたくないんだがな。


「では、覚悟してくださいね?先輩」


 俺はレンテ(コート)のポケットに手を入れ、ソレに触れる。



次回予告


潤「あの気持ち悪さは尋常じゃないね。地面に立ってるのにフワフワするんだよ?眩暈Lv.maxみたいな…とにかく気持ち悪い、それに尽きる」

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