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気まぐれセカンドライフ  作者: 誰かの何か
第5章 学校に行こう
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64 なんか、契約しちゃいました

お気に入り登録100件突破

これからもよろしくお願いします



「うぉぉぉらっ!」


 1000倍返し宣言から10分位が経った頃、俺たちはまだ闘っていた。

 俺のローブは奴のひっかきやらブレスやらでボロボロ。身体は強化してるおかげで骨こそ折れてないが、あちこちから血が滲み出ている。アースドラゴンの方も身体を覆う硬い鱗の多くは剥がれており、防御も薄くなっている。

 互いに限界が近いことは誰が見ても一目瞭然といったところだろう。


『ガァァァ!』


「ったく、一人前に頭使いやがって…闇桜ァ!」


 アースドラゴンがブレスを放つ。

 戦闘になってから何度目かのブレスとひっかきのコンビネーションが来るだろう。

 ブレスを俺の魔力に変換しようにも、その後のひっかきが避けられなくなるので闇桜で相殺せざるを得ない。


「ハッ!・・・はぁはぁ、クソッ魔力が足りねぇ」


 案の定ひっかき攻撃がきたのでオルギヌスでいなすが、体力も魔力も底を尽きかけ、息があがる。

 魔力量だけは人並みしか無い俺にとって長期戦は好ましくない。


『ゴォ・・・ゴォ・・・』


 アースドラゴンの方も呼吸が荒い。


「食らっとけ!闇針ッ!」


 アースドラゴンの胴体に3本、尻尾に1本、頭に1本の計5本で動きを封じにかかる。

 しかし実際に効果があったのは鱗の剥げた尻尾と胴体の4本。ダメージは与えたが致命傷にはならない。


「あぁもう、これでラストだ!」


 人差し指と親指でピストルの形をとり、人差し指の先に魔力の塊を作り、ジャイロ回転をさせながらアースドラゴンに何発も撃ち込む。


『ガッ、ギャァァァッ!』


 最期の抵抗と言わんばかりに吼え、後ろ足で立ち上がり、


「おいおい、マジか…」


 俺の方に向かって倒れてきた。

 俺は必死に足を引きずって範囲から外れようとする。


 ドォォォン!


 俺が範囲から外れたのとほぼ同時に洞窟中に地響きがした。砂埃が舞っていて見えないが、動く気配が無いからアースドラゴンは力尽きたのだろう。


「あぁ、疲れた…これから黒龍なんて無理そうだし、帰るか」


 任務は失敗になるが、引き際は大事だからな。

 そう思い元来た道を戻ろうと振り返ると…


「ホント、あのアースドラゴンは俺に恨みでもあるのかね」


 見事に入り口が崩れて塞がっている。残っているのは先に進む道のみ。

 このままじっと魔力が戻るのを待って転移魔法を使うってのも手だが、暇だから先に進む事にする。一目黒龍を見ても罰は当たらないだろう。





「ここで行き止まりか」


 特に敵も現れず、ダラダラと最奥まで来るとそこは一言で言えば神秘的な場所だった。

 最奥部はアースドラゴンと闘った広場と同じ位広く、中央にはどこから来てどこへ流れていくのか分からない滝があり、周囲は緑色に光る苔が神秘的な光景を醸し出していた。


「ほう、これは凄いな」


 更に今気づいた事だが、どうやらこの洞窟内は気温が一定に保たれているようで、外は10℃位にもかかわらず中は20℃はありそうだった。龍が変温動物だとすれば、この洞窟に住み着くのも頷ける。


「だぁれだ?」


「うぉ!?」


 不意に視界を塞がれて変な声を出しちまったじゃねぇか。

 どうやら誰かが後ろから手で目隠しをしているようだ。


「そんなに驚かないでよ、魔王様・・・


 声質からして女の子だろうか。って、そうじゃなくて、


「何でそれを!?お前何者だ?」


 手をすり抜けて振り返る。そこにいたのは黒いコートに黒いミニスカートを身に着けた全身黒ずくめの少女。この世界では珍しく黒髪黒眼で、肌は対称的に透き通るほど白い。


「何となく言っただけだったのにぃ…ホントに魔王様だったんだぁ」


 癖なのか語尾を伸ばしながらニコニコと言う。


「・・・誤魔化しようがねぇな…そうだよ、よく分からんが俺は魔王とやらになっちまったらしい。んで?そういうお前は何者なんだよ?」


「うぅん、色んな呼ばれ方があるけど、最近は黒龍って呼ばれてるかなぁ」


 さっきと変わらずニコニコしながら、何でもないようにサラッと衝撃の事実を暴露する。


「んな訳あるか。どう見たってお前は人間じゃねぇか」


 ヴェルみたいな耳がついてたりしてない分、余計に信じられない。


「こっちの方が魔力消費が少ないからねぇ。龍の姿になるのは闘うときだけだよぉ」


 ひらひらと身体を動かしながら言う。


「えぇっと、つまりは特別魔法か何かで変身出来るだけで元は人間って事か?」


 それが一番現実的な予想だろう。


「いやいやぁ、魔王様ちゃんと頭使って考えてよぉ。さっきこっちの方が魔力消費が少ないって言ったでしょぉ?つまりこの姿も変身してるに過ぎないんだよぉ」


 さり気なく怒られた…だがそうするとコイツは一体?


「う~ん、分からないかぁ。魔王様、三宝って知ってるぅ?」


「仏・法・僧とか?」


 元の世界ではそんなんだった気がする。


「何それ、全然違うよぉ。三宝っていうのは、魔剣オルギヌス・聖盾エギス・魂装レンテの3つだよぉ」


 へぇ、オルギヌスって凄い剣だったんだな~。確かに手入れしてないのに刃こぼれ一つないもんな。


「で、それとお前がどう関係があるんだ?」


「もう、察しが悪いなぁ。オルギヌスも大変だったでしょぉ」


 女の子がオルギヌスに向かって話し掛ける。うぅむ、シュールだ。


「オルギヌスは契約したら意思が無くなるだか喋れなくなるだかって言ってた気がするぞ?」


 昔の事だからよく覚えてないが、湖の畔で夜中にオルギヌスを名乗る女性からそんな事を言われた気がする。確かファーストキスを奪われたんだったな…武器とが初めてだなんて泣けてくる。


「あぁ、そういえばオルギヌスとエギスにはそんな制約があったねぇ。じゃ、ボクと契約しちゃおっかぁ?」


「さり気なく契約させようとするなよ!つまりはアレか、お前は三宝の魂装レンテだってわけか?」


「そういうことぉ。そんなボクが契約しよって言ってるんだから早くしちゃおうよぉ」


「何でお前らはそんなに契約したいんだ?」


 オルギヌスといい、コイツといい、せっかち過ぎないか?


「そりゃ、ボクたちは装備品だもん。使って貰うのが本望なんだよぉ。あと、誰でも良いってわけじゃないんだよぉ?」


「どういう事だ?」


「装備品だって使い手は選びたいって事ぉ。まったく、質問ばっかりの面倒くさい魔王様だなぁ。もう契約しちゃうからねぇ」


 そう言うと女の子は俺に飛びかかり、強引に唇を奪った。

 うぅ、2回目のキスまで装備品とかよ…


「はぁ、もう完了か?」


「うん。じゃ、帰ろっかぁ」


 そう言ってレンテは洞窟の出口に向かって歩き始める。


「って、ちょっと待て。お前は契約したら装備品になったりしないのか?」


 オルギヌスの時はすぐに剣になったぞ?


「魔王様、ボクの称号覚えてるぅ?」


 レンテは振り返って再び俺の方へ歩いてくる。


「名前の前についてるやつだよな?魂装、だったっけか?」


「当たりぃ。魂を持った装備、それがボクなんだよぉ。つまりぃ…」


 そう言って俺の目の前で両手を広げ、抱きついてきた。


「お前、何を…って、あれ?」


 まばたきをした次の瞬間にはレンテの姿はなく、俺はいつの間にかレンテが身に着けていたコートを着ていた。


「驚いたぁ?これがボクの本来の姿ぁ。ちなみにこのコートはボクの魂で出来てるから重さも感じないでしょぉ?」


 コートから声がする。う~む、不思議な気分だ。


「確かに、着てないみたいだ。けど何の効果があるんだ?コート1枚じゃ大した防御力にすらならなそうなんだが」


「聞いて驚けだよ、魔王様ぁ。ボクの特殊付与は対象の認識なんだよぉ」


 誇らしそうな声でレンテは言う。しかし、


「特殊付与って何だ?それに対象の認識があると何が出来るんだ?」


 俺には何を言ってるのかサッパリだった。


「ホント何も知らないんだねぇ。特殊付与っていうのはボクたち三宝に許された特別な力みたいなものぉ。オルギヌスなら持続する鋭利ぃ。これは刃こぼれしたり折れたりすることがないって事ぉ。エギスは打撃の反射ぁ。これはエギスが受けた打撃を全て跳ね返すって事ぉ。で、ボクの特殊付与は対象の認識ぃ。ボクが認識した攻撃は全て無効化出来るんだよぉ」


 いつの間にか人の姿に戻ったレンテがそう説明した。


「バランスブレイカー過ぎないか?お前の特殊付与とやら」


 そんな事ができるならどんな攻撃も通らなくなるじゃねぇか。


「強大な力を持つ代わりにボクは1回だけしか契約出来ないらしいんだぁ。1度契約が切れるとボクは消えちゃうのぉ。だから、大事に使ってね魔王様ぁ」


 今までニコニコとしていた顔が一転、今にも泣きそうな顔になっていった。


「あんな簡単に俺と契約しちまったけど良かったのか?もし俺が契約を破棄したら…」


「そ、そんな事言わないでぇ。ボクは魔王様なら大事に使ってくれるかなって思ったから契約したのにぃ」


 瞳から涙が零れ、泣き出してしまった。え?なにこれ、俺のせいなの?


「あぁ、悪かった悪かったよ。ちゃんと大事に使うから。お前が俺と契約したことを後悔するまでこき使ってやるから覚悟しとけよ?」


「うわぁぁん!ありがと、魔王様ぁ」


 再び抱きつかれた。コイツは抱きつくのが癖なのか?


「さて、まあ、話がまとまったわけだが、俺としてはどうしても確認しなければならない事がある」


「なにぃ?何でも聞いてよぉ」


 抱きついたままレンテが応える。

 俺が気になる最も重要であり最もどうでもいい事。それは、


「お前は男か?」


 皆も気になるだろ?さっきは何となく女の子って言っちゃってたけど、一人称はボクだし…

 俺がそう尋ねるとレンテはムッとした顔で頬を膨らませた。


「魔王様、それは失礼すぎぃ。どこからどう見たって女の子じゃん!装備にだってちゃんと性別くらいあるよぉ」


 だそうだ。つまりレンテは男の娘じゃなくてボクっ娘だってことだな!


「悪い悪い。んじゃ、帰るか」


「うん」


「・・・・・」


「・・・・・」


「・・・ん?コートの姿にならないのか?」


 てっきり今後はコートの姿でいるものかと思って待ってたんだが、変身する様子はない。


「愛し愛されるのも装備の憧れだからねぇ。この姿の方が愛着感じるでしょぉ?」


「そういうもんか?まあ、別にどっちてもいいけど。んじゃ、今度こそ帰るぞ?」


 そう言って俺は洞窟の出口に向かって歩く。


「あ、待ってよぉ」


 レンテも俺に続いて歩き始める。



 また1人女性キャラ?が増えちまったな~なんて思いながら洞窟を歩いたのは秘密にしておこう。



次回予告


潤「うぅむ、新キャラだな。しかもまたしても女性キャラとは、俺ってもしかしてハーレム体質!?・・・いや、本気で言ってるわけじゃないんでそんなに冷ややかな眼差しで見ないでくれよ…」

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