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気まぐれセカンドライフ  作者: 誰かの何か
第5章 学校に行こう
68/78

62 なんか、もうですか

ちょっと駆け足です



「まったく、我ながら情けない」


 あの後俺たちは解散となり、俺は学園長の呪いとやらを調べるために図書室に来ていた。


「為す術なく尻尾巻いて帰るしかなかったとはな」


 今は2時限目の途中だから図書室には俺以外誰もいない。授業中に教室に入れる程俺は勇気を持ち合わせていないので、授業には3時限目から出ようと思う。


「そんな事より今考えるべきは呪いだな」


 流石学校というか、図書室には魔法の本が多くあり、その中には呪い関する本もあった。

 『呪いとは』『呪いの種類と解法』『初心者の為の呪い』『実際にやってみよう!~呪い編~』『気になるアノ子のハートを呪いでゲット!』などなど。


「最後の2つは碌でもなさそうだな…面白そうだけど」


 とりあえず真面目にやりますか。



『呪いとは』

    ノロイカ・カッター著

 ・定義

  呪いとは魔術的手続き(対象への魔力干渉など)をせず、直接的な代償によって対象に効果を及ぼすものを指す。一般に代償が大きい程効果も大きくなり・・・



 らしいです。うん、まあ、定義については分かったんだけど、作者の名前がね…ノロイカ・カッター→呪いかかったー。こんな名前の人が書いた本信用出来ねぇよ!

 次いってみよ、次。



『呪いの種類と解法』

    ノロイカ・ケッター

 ・くしゃみをさせる呪い

   代償:髪の毛、ウルフの牙、20秒

   効果:対象にくしゃみをさせる。

   解法:風邪薬を飲む。

 ・転ばせる呪い

   代償:バナナの皮、オイル、15秒

   効果:対象を転ばせる。

   解法:消毒薬が染み込んだガーゼ。

 ・ノロい呪い(クスッ

   代償:ゴブリンの耳、スライムの核、2分

   効果:対象の動きの速度が半分になる。

   解法:自己強化魔法による上書き。




 犯人いた~!カッターさんを呪った犯人だろこの人!

 ってかこの本突っ込みどころ多すぎだよ!大した呪いが無いし、転ばせる呪いなんて単にバナナの皮で滑らせるだけだろ…ノロい呪いなんて名前の横に(クスッとか書いちゃってるし、面白くねぇから!


「しかしこうなると学園長のアレは何なんだ?呪いにしちゃ強力すぎだろ」


 学園長は呪いのようなものって言ってたしな…特別魔法の一種か?

 確かこの図書室には特別魔法の一覧があったよな。


『特別魔法一覧』

 この本はウェドリア暦7628年現在に確認された特別魔法を使用者と共に載せています。

 アーキア・アライシア

  ・花鳥風月~花~ 使用属性は火と風。吹き荒れる炎の花びらが周囲を焼き尽くす。


 ってな感じで10000ページ近くあるんだが…ってか本開いて思ったんだが、学園長のアレが特別魔法だとしても口止めの呪いとやらが掛かってるからこの本に載ってるわけ無いな。

 実に無駄な時間だった。


「分かったのは呪いには代償が伴い、解法は呪いごとに異なる。そして学園長のは特別魔法の可能性が高いって事くらいか」


 はっきり言って収穫無しだな。こんな学園長が腐ってる学園、サッサと辞めたいんだが、それには学園長との衝突は確じ…


「ジュン君?」


「のわっ!」


 突然背後から声が聞こえてきて思わず変な声が出てしまった。


「そんなに驚かなくても…」


 振り返ると、そこには少し困った顔をしたハルがいた。


「どうしたんだ?こんな所で。ってか授業は?」


「ジュン君が1、2時限目にいなかったので探しに来たんですよ。それに今はお昼休みなので授業はありません」


 時計を見ると時刻は12時を少し回ったくらいだ。学院の授業は1時限90分授業だから2時限目が終わった時点で昼休みとなる。大学みたいだな。


「そういえば、いつの間にか図書室に人がいっぱいいるな」


「周囲が気にならなくなるほど何を読んでたんですか?・・・特別魔法一覧?何でこんなものを?」


 ペラペラとページを捲りながら聞いてくる。

 う~む、本当の事は言えないし、


「俺にも出来そうな特別魔法がないかな~って思ってな」


 という事にしておこう。


「え?…あ、あの…」


 突然ハルが呆然とし、話し出した。


「特別魔法はその使用者以外使えません。例えばジュン君にいくら闇属性の才能があろうと、サナトスの特別魔法は使えないんです」


「もしかしてそれって常識?」


「まあ、そうですね…知らないとすれば記憶喪失か一切世間と関わって来なかったかですね。一切世間と関わって来なかったなんて現実的には不可能でしょうからジュン君は過去に記憶喪失になったんですか?」


「そんなところかな…記憶が始まるのが1年前に草原に転がってたところからだし」


 嘘は言ってないぞ嘘は。正確には記憶喪失じゃないけどな。

 俺がそう言うとハルは少し考え込むように俯き、


「因みにジュン君はハリンテ国に来る前はどちらに?」


「どうしたんだ?急に」


「いえ、以前似たような話を聞いたので何となく…」


 歯切れ悪くハルが言う。


「ユリナント、だったかな?」


 確かそんな名前の国だったよな?そんなに長く滞在したわけじゃないからよく覚えてないな。


「そう、ですか…あ!私まだお昼食べてないんです。ジュン君も一緒にどうですか?」


 今までの考え込むような表情から一転、はじけるような笑顔でそう言うハル。

 何だったんだ一体。


「お、おう。そうだな、じゃあ行くか?」


「はい」


 というわけで本を片付けてカフェテリアへ。





「うわ~、混んでるな」


 カフェテリアは昼食をしに来た先生、生徒で満員状態だ。

 

「生徒の90%近くがここを利用するらしいですからね。加えて教員も利用するとなると400席じゃ少し足りませんよね」


「単純計算生徒だけで500人以上が使うんだもんな…お、そこが空いたな」


 俺たちは席を確保した後、俺はカレーライス(250ワロ)、ハルはパンを買った。


「流石に学食だけあって安いな」


「そうですね。それにここで作ってる物はみんな美味しいらしいですよ」


「もしかしてそのパンもここで焼いてるとか?」


 ハルの持っているロールパンみたいなパンについて聞いてみる。


「はい、ここにはパン工房もついてるらしく、焼きたてのパンが食べられます。その・・・食べてみます?」


 ハルは顔を赤くしながら上目遣いで聞いてくる。

 まったく、男の上目遣いと女の上目遣いでどうしてこうも違うんだろうな。反則だろ…


「じゃ、一口貰えるかな?」


 するとハルはパンをちぎり、


「あ、あ~ん」


 滅茶苦茶恥じらいながら一口分差し出してきた。

 ・・・はい?『あ~ん』って何だっけ?口開けさせる時にやつ?いやいや、口開けさせるなら『あ~ん』じゃなくて『あ~』だろ。『あ~ん』じゃ『ん』の部分で口閉じちゃうもん。

 って、そんな事を考えたいんじゃない。今考えるべきはこの状況をどうすべきかだ。ここは第1回脳内会議を開くしかないようだな。



「え~、これより第1回脳内会議を始める。進行は俺、パン食べちゃえよ派も俺、断っとけ派もやっぱり俺でお送りします。ではまずパン食べちゃえよ派から意見だして」


「へいへい、え~っとだな、せっかくハルが善意でパンをくれるって言ってるんだから方法はどうであれ素直に貰うべきだと思うんだが」


「これに対して断っとけ派、反論は?」


「まず、ハルが本当に善意でくれたかなんて俺たちが判断出来ることじゃない。それにだな、この小説のあらすじで『仕事したり戦ったりしてリアルが充実してはいるが、リア充とは違うと思わざるを得ない今日この頃…』って言ってる。なのにこれからしようとしていることはリア充そのものなんじゃないか?ってかそんなフラグ立ててないだろお前は」


「あらすじとかサラッとメタ発言してんじゃねぇよ…だいたい、ハルがあんなに恥ずかしがってまで『あ~ん』してくれてんだぞ?これ以上彼女に恥をかかせるわけにはいかないだろ?」


「お前は危機管理能力が無さ過ぎんだよ」


「お前は俺だよ、バカめ!」


「俺にバカと言われるとは…やってられるかこんな会議、解散だ解散!」



 何だこの脳内会議。全く役に立たねぇ…有り難く貰うしかないのか?確かに断る理由は無いしな。


「あ~」


 腹を決めて口を開ける。今頃俺の顔もハルに負けず劣らず赤いんだろう。めっちゃ顔が熱い。


 パク


「ど、どうですか?」


 ハルがパンを俺の口に入れて心配そうに聞いてくる。


「あ、うん。美味しいパンだな」


 実際は恥ずかしさのあまり味なんて分からなかったけどな。


「それよりもハルは何でこんな事を?」


 とりあえず落ち着くため俺は話題変換になってない話題変換をする。


「その…ジュン君が決闘で頑張ってくれたので、せめてものお礼と言いますか…」


「別に大した事でもなかったから礼なんていいのに」


「いえ、それでは私が納得出来ないので。・・・・・あの、ジュン君…」


『生徒連絡、生徒連絡。1年A組ハインウェル君、同じくマワター君、グレスト君、ラステル君、1年E組ジュン君、以上の者は学園長室に集合するように。繰り返す。1年A組…』


 ハルが何か言いかけていたが、空気の読めない放送によって遮られてしまった。しかも俺の呼び出しかよ。


「おっと悪い。呼び出しみたいだ。また後でな」


「・・・はい、教室でお待ちしてます」


 ハルは少し残念そう顔をしていたように見えたが、笑顔で俺を送り出してくれた。







「ナルシストやマワターって奴らが呼び出されたってことは特務とやら関連だよな?」


 学園長室で俺が学園長に尋ねる。ってか用があるんならさっき顔合わせした時に言えよ…


「いかにも。諸君を集めたのは他でもない、討伐任務を与えるためじゃ」


 何となく予想はしてたけどやっぱりか。本当なら今すぐにでも学園長をぶっ飛ばしてやりたい気分だが、あの呪いがある以上簡単に手を出せない。


「ご、午前中に結成されたばかりなのにもう任務ですか!?」


 マワターって前回呼ばれてた少女が驚嘆の声を上げる。


「そうやで、オレらまだ大した連携もとれへんのに無謀ちゃいますか?」


 続けて緑髪の関西弁の人も抗議の声を上げた。


「ひょひょひょ、心配するでない。今回の任務は諸君のレベルを測るために簡単なものを選んでおる。連携については…そうじゃな、ハインウェル君、今回は君がまとめてくれないかの?」


 学園長が長い髭をいじりながらナルシストに視線を送った。


「全力を尽くさせていただきます」


 するとナルシストは手を胸に当て、恭しく一礼する。

 ふむ、ナルシストは完全に学園長側についたみたいだな。


「さて、では今回の任務の発表じゃ。今回の任務、それは…」


 そこで学園長は焦らすように俺たちを見回したあと、こう続けた。


「龍窟に生息する黒龍の討伐じゃ」


次回予告


潤「黒龍の討伐だってさ。黒龍ってどう考えても強いだろ…ゲームとかだと中ボスかラストダンジョンにいる類のやつじゃん!」

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