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気まぐれセカンドライフ  作者: 誰かの何か
第5章 学校に行こう
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60 なんか、来ました


((ジュン君ジュン君、私だけどさ…))


 決闘を申し込まれた翌朝、突然頭の中で声が響いた。


((んぁ?ふぁへはよ、ほぉんはあふぁはら))訳:あ?誰だよ、こんな朝から


((私、私だってば。この小説のメインヒロインだよ~))


 なんで通じてるのかは謎だが、もっと謎なことがある。


((ふぉほひょうへふほへいんひほひんっへはへはほ))訳:この小説のメインヒロインって誰だよ


 セレンか?ヴェルか?はたまたメイドさんとか?う~ん、思い当たらん。


((え、もしかしてホントに分かってない?私だよ~))


 なんか必死に私と言ってるな…これはまさか、


((はらはなほへほへはひ!?))訳:新たなオレオレ詐欺!?


((違うよ!?ってかジュン君、なんでそんな喋り方してんの?))


((ふぁひはひひゅうはんはほ~!))訳:歯磨き中なんだよ~!




((んで?お前は誰なんだ?))


 歯磨きを終えて俺から話し出す。

 なんか(())←この記号使って喋った記憶はあるけど、相手誰だったか覚えてない。

 

((ほら、29話で名前を付けてもらった…))


 29話って言うと運命の女神にニックネームを付けた気がするな…


((フォー、だっけか?))


 頭の隅っこにあった名前を言ってみる。


((惜しい!でもそれは運命の女神の方。ほら、勇者を迎え撃つときにもナレーションをした…))


((まさかと思うがサナトスさんか!?))


((その人もナレーションしたけど、声からして違うでしょ!?))


((だよなぁ…だとするとホント誰だ?KY女神な訳ないし…))


((それぇ!KYじゃないけどそれだよ~))


((KY女神、だと…生きてたのか))


((いやいやいや、全く命の危険は無かったから))


((いや、小説的な意味で))


((メタ発言すなッ!))


 さっきまでお前の方が『小説のメインヒロイン』とか『29話で』とか言ってたじゃねぇかよ…


((死の淵から生還したKY女神が何の用だ?))


 世の中の理不尽さを痛感しつつ、話を進める。


((だぁかぁらぁ、死の淵には全然瀕してないから!まあ、それは置いといて本題だけど、人神の最後の1人が復活したよ))


((えっ・・・))


((思わず言葉に出ないのは分かるけど事実な…))


((人神って何?))


 初耳なんですけど。そんな知ってて当然みたいな感じで話を進めないで。


((はあ、異世界で1年近く過ごしてきてるくせに何も学ばなかったんだね~))


 うわ、コイツの上から口調めっちゃムカつく。


((だから今こっちに来てまでわざわざ学校に通ってるって。それで?人神って何なんだよ?))


((ん~、長話してると今月の念話代が凄い事になりそうだからそっち行くね))


 念話代っ!?これ料金掛かってんの?


((えっ?あ、ちょっとま…))


「来ちゃった~」


 待てと言おうとしたときにはすでに遅く、KY女神は俺の前に立っていた。


「来ちゃった~、じゃねぇぇぇ!」





 あの後、足音が聞こえたので急いでKY女神を隠したり、案の定やってきたレイシスに大声を出した嘘の理由を半ば強引に納得させたりとなかなか大変だった。





「ホント、なんでわざわざこっちまで来たんだよ」


 レイシスが風呂に入ったので再び目の前にいるKY女神と話し出す。


「ジュン君を直接サポートするという建て前のもと、私の出番を増やすため」


「せめてその碌でもない本音は隠せよ!」


「冗談はさておき、時間も無いからサッサと人神について話しちゃうから頭に叩き込んでね~。人神っていうのは、簡単に言えば神の加護を受けた人の事を言うの。加護を受けると神魔法っていう奇跡を1つだけ使えるようになるんだ~」


 そういえばKY女神と会ったときもそんな魔法を使ってたような気がする。


「それで~、この世界にはその人神が3人いて、その3人共がこの大陸にいるんだよ~」


「何でそんなヤバそうな人たちがこの大陸に揃ってんだよ」


「それはね~、その3人ってのが初代勇者パーティだったからなんだよ~」


 ・・・え?色々分かんないんだけど…


「その初代勇者パーティっていうのは?」 


「この世界に現れた歪み、魔王を倒すためのパーティだよ~。勇者、魔帝、武帝の3人は神に加護を受けて魔王を倒しに行くんだけど、結局返り討ちにあって封印されちゃったの」


「それが今になって復活したと。でも何かマズいのか?確かに俺にとってはマズいかもしれないが」


「魔王は封印するときに呪いを掛けた

の。勇者には全ての感情の除外を、魔帝には人を憎むこと以外の感情の除外を、武帝には人を殺すことの喜び以外の感情の除外をってね。まあ、勇者は復活したときに偶然側にいた悪魔殺しのおかげで少しは感情が残ったみたいだけどね~」


 悪魔殺しっていうとあの女王か。あれ?そうすると勇者ってもしかして…


「なあ、もしかして勇者ってのは…」


「あ~良い湯だった」


 廊下でレイシスの声が聞こえたので話し合いは強制的にストップする。

 さっきは洗面所でレイシスとエンカウントしたためKY女神を洗濯機の中に放り込めたが、今俺たちがいるのはリビングだ。特に物が置かれてないここではKY女神が隠せねぇ!

 ガチャ、とリビングのドアのノブが回り、レイシスが入ってくる。


「ジュン、何してんだ?」


 俺は咄嗟にKY女神をローブ(学園指定)に入れ、互いの身体をなるべく密着させることで多少無理はあるが、リビングにいるのは俺とレイシスだけという状況を作り出した。


「えぇっと、朝の体操?」


 言い訳が苦しいのは自分でも分かってるからそんな目で見ないでっ!


「・・・まあいい。ところでジュン、決闘って8時からじゃねぇの?」


 現在9時8分。うん、バッチリ遅刻だ。


「ヤッバ!すっかり忘れてた!ちょっと行ってくる」


「おう!僕も観に行くからな。負けんじゃないぞ」


 俺はその声に片手をあげて応じ、転移魔法で予め調べておいた決闘場の座標に飛んだ。






 余談だが、転移魔法のエフェクトは属性に左右し、火属性なら火花と共に、闇属性なら闇の塊の中からといった具合な見た目になる。

 俺は闇の塊が消えない内にKY女神を決闘場の外に転移させた。


「随分と遅れた登場だねぇ。僕だけじゃなく観客の皆まで待たせるなんて」


 動きやすさに特化した鎧、ライトメイルだっけか?それを着て手には仄かに緑に光る剣を持ったナルシストが嫌みを言ってくる。フル装備だな、おい。対する俺は身に付けているのは学園指定のローブのみ。武器も持ってない。

 ついでだが、この決闘場は地球でいうコロッセオのような形をしている。建物は円形で中心に決闘場、その周りに観客席があるといった感じだ。あと決闘場の上空にはどういう仕組みか、電光掲示板のような物が浮いていた。

 観客席は、1年生のトップの力を観るためか、500人は余裕で入りそうな席がほぼ満員になっている。


「ひょひょひょ、2人がそろったようじゃの」


 変な笑い声をしながらそう言ったのは入学式で話してた長い白髭の老人。ミュート学園の学園長だ。


「さて、ではルールの確認といこうかの。武器・防具・魔術の使用は全て許可。どちらかのHPが0になった時点で試合は終了。これでいいかの?」


「はい、問題ありません」


 と、ナルシストが言う。

 しかし俺はそうはいかない。


「あの、HPって何のことですか?」


 体力だということは勿論分かるが、HPなんて概念はこの世界には無いはずだ。ゲームじゃあるまいし。


「そんな事も知らないのかい?しょうがない、ボクが直々に教えてあげよう。この決闘場で決闘をする場合、命の奪い合いをせずに本気の戦いをするためにHPというものが導入されている。このHPは数値化されていて、この値が0になった時点で決闘者は気絶する。同様にMPやその他も数値化されるけど、これは実際に魔玉に触れてみれば分かるだろう」


 長々とご苦労様です。つまりは魔王と魔玉がぱっと見そっくりだって事だな、うん。


「ハインウェル君の言った通りじゃ。では2人共、魔玉に触れて決闘者の登録を」


 学園長にそう言われ、ナルシスト、俺の順に魔玉に触れていく。


 すると突然、上空の電光掲示板が光り出し、2人の情報を映し出した。


 ハインウェル・ライク・サースティア

  1年A組1番 上級冒険者

   風属性

   HP:3851

   MP:3263

   力:341

   防御:476

   魔力:415

   魔防御:511

   敏捷:498

   運:472


 周囲からおぉ~という驚きの声が挙がる。こんなの見たこと無い俺にはバランスが良い位しか分からないが、反応から察するにかなり凄いんだろう。ナルシストも得意気だしな。

 続いて俺。


 ジュン・ハヤマ

  1年E組40番 中級冒険者

   闇属性

   HP:E

   MP:1046

   力:E

   防御:891

   魔力:E

   魔防御:974

   敏捷:E

   運:3


 あちこちで、アイツが学年最下位か、Eって何だよ、防御と魔防御パネェ、運もある意味パネェ、今度から掃除当番はジャンケンで決めようぜ、とかザワザワと声が聞こえる。

 とりあえず最後の奴、俺の運が3なのを良いことに俺に掃除当番を押しつける気だろ。


「ひょひょひょ、儂の魔玉でこんな事が起きたのは初めてじゃわい。面白い戦いが見れそうじゃの。では2人共、準備は良いか?」


 学園長に確認をされた俺たちはほぼ同時に頷く。


「うむ、では始めッ!」


 先に動いたのはナルシスト。


「風の如き速さを!クイック!研ぎ澄まされし鋭さを!シャープエッジ!」


 自己強化魔法の重ね合わせか。風属性は自己強化魔法が得意って聞いたような気がするし、そこら辺は流石なのかな?


「重ね掛けは上級冒険者の中でも出来る者は少ないというのに、あの若さで出来るとは流石じゃな」


 と、学園長が解説しております。


「まあ、無闇に突っ込んでこないあたり流石優等生と言いたいところだけど、俺にも自己強化魔法はあるんだよな」


 闇が一瞬俺を包み込み、身体能力強化を完了する。いちいち詠唱とかがいらないから闇属性の魔法は便利だね。


「うむ?どうやったのかは分からんかったがあやつも自己強化魔法を使ったみたいじゃな」


 と、解説の学園長。その都度実況されんのも中々に五月蝿い。


「まずは小手調べだ!エッジウィンド!」


 ナルシストが剣を振る度に風の刃が俺に飛んでくる。

 間髪入れずに飛んできた風の刃を避け終わり前を向き直ったときには既にナルシストの姿はなかった。


「後ろかっ!」


 背後で横凪ぎに剣が振るわれる気配を感じ、振り返りながらしゃがみ込む。


 剣が頭上を過ぎた頃にナルシストと向き合った俺は一旦距離をとるべくバックステップをする。

 しかしナルシストはその行動を見て待ってましたと言わんばかりに口角をつり上げる。


「チェックメイトだぁぁぁっ!」


 一瞬にして俺の背後に回り込み、剣を振り上げるナルシスト。

 バックステップ中のため空中にいる俺に避ける術はない。


「やべっ!・・・・・なぁんてな」


 ここで俺の『なかったことに』を発動させる。

 剣とナルシストを通過し、背後をとった俺は思いっきり蹴り飛ばす。


 身体能力強化の掛かった身体から出た蹴りをモロに食らってナルシストは決闘場の壁まで吹っ飛び、激突した。

 HPはリアルタイムで増減するのか電光掲示板を見るとナルシストのHPが5分の1ほど減っていた。勿論俺はまだノーダメージ。


「クッ…奥義写し身っ!」


 口に付いた血を手で拭ったナルシストがそう叫ぶと、ナルシストの身体が霞み、2人になった。

 って、2人!?


「あ、あれは風属性奥義写し身!MPの消費こそ莫大だがそれ以外のデメリットを一切なしに分身出来る技じゃ!」


 だそうだ。解説ありがとうございます。

 確かに頭上の電光掲示板を見るとナルシストのMPが1000ほど削れている。俺のMPでやったら写し身だけでMPが尽きそうだ。


「いくぞっ!」


 俺の正面と背後に瞬時に移動したダブルナルシストは同時にエッジウィンドを無数に放ってくる。

 足下に斬撃が飛んでこないので再びしゃがみ込んでやり過ごそうとする。

 しかし、見計らったようにダブルナルシストは俺がしゃがみ込んだ瞬間、距離を詰めて必殺の一撃を放ってきた。


「「ダブル、インパクトォ!」」


 剣に風の魔力を高濃度に圧縮させ、俺に振り下ろしてくる。

 当たれば即アウト。避けたとしてもても爆風などで吹っ飛ばされ、『なかったことに』が使えない俺はトドメをさされて終わりだろう。

 まあ、当たる気も避ける気もさらさらない俺にとっては関係ない話だがな。


「俺だって一応…」


 闇に隠れた空間から3メートル近い禍々しい大剣、オルギヌスを抜き放ち、ダブルインパクトとやらを軽々と受け止める。瞬間的に風魔力も闇魔力に塗り替えてしまったため爆風も起きない。


「コイツと修羅場を乗り越えただけの実力は持ってるつもりだぜ?」



次回予告


潤「次回はいよいよオルギヌスが登場。そうだ、知ってたか?オルギヌスってall geniuses<オールジーニアス>つまり全才能=全知全能って言葉が変化したものらしいぜ?・・・・・まあ、勿論嘘だけどな」

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