54 なんか、再会したみたいです
一度書いた物が消えてしまって落ち込みつつ書き直しました。
本当だったらもう5日位速く投稿できたのに…
「・・・暇だ」
現在午前8時20分。メイドさんから日の出ているうちはいつ犯人が現れるか分からないからと言われ、日の出と共に追い出されるように城を出た。
こんなに朝早くから現れるわけないけどね!そんな事は俺だって理解してる。けどメイドさんの眼力には逆らえないんだよ…
そんなこんなでかれこれ3時間くらい立ちっぱなしなわけだ。足がだるい。
「暇ならインタビューにでも何でも付き合ってよ」
俺の隣でそう呟くのは新聞記者であるルインさん。この人は8時頃にやってきた。
「ダメですよ。内部情報は洩らさない事が絶対の規則なんです」
はい、まるっきり嘘ですとも。別に新聞記者を嫌ったりしているわけじゃないが、変にボロを出して怪しまれたくない。
「お堅いな~。まあ、もともとインタビューする予定だったのは城に仕える躑躅色の髪を持つ謎のメイドさんだったんだけどね」
そうそう、昔1度だけ言った気がするけどメイドさんの髪は躑躅色、というかぶっちゃけ紫だ。
「あの人にですか。ならインタビューしなくて正解でしたよ。何せ城内では躑躅色の髪が見えたら土下座でやり過ごせと言われるほど気性が荒いらしいですから」
これまた勿論嘘だけど何か?普段虐められてる分少し位やり返してもバチは当たらないだろ。本人の前では絶対に言えないがな。
「それは初耳ね」
そう言いつつメモ帳にペンを走らせるルインさん。メイドさんめ、いつものお返しだ。・・・後がちょっとだけ恐いのは秘密だぞ?
「そういえばルインさんは戦闘の心得ってありますか?」
昨日話した感じでは無さそうだったが、まあ念のため。
「それが武術も魔術もからっきしダメでね。だからこそ危険の少ない街の新聞記者なんてやってるんだもの」
戦場の記者もやってみたかったな~とつまらなそうに呟いていた。
「そうですか。・・・ちょっと目を瞑って耳を塞いでくれますか?」
「何かするの?私に見られちゃマズいこと?」
俺の頼みはこの新聞記者の興味をかえって刺激してしまったようだ…
「えぇっと、まあ、見られちゃマズいようなマズくないような…」
「はっきりしないね。私はいないものと考えていいから早くやっちゃいなよ」
ちゃっかり見る気満々じゃねぇか!あんまり手荒な事はしたくないんだけどなぁ。
「あぁ、えっと、悪く思わないで下さい」
俺が歯切れ悪くも言い終わった瞬間に魔力をルインさんに送り込み、体内の機能を一瞬乱す事で気絶させる。魔力に抵抗を持たない相手だからこそなせる技だな。
「さて、ヴェル、いるんだろ?」
俺がルインさんを気絶させたのはヴェルを呼ぶため。プロミネントギルダーが目の前にいたらこの人は取材し始めるだろうからな。ヴェルはそういうの嫌がりそうだし。
「いや~わざわざありがとね」
いつの間にかデパート前の木箱に腰掛けて答えるヴェル。
何となくいるかなとは思ってたがやっぱりいたか。
「それはこっちの科白だよ。わざわざ来てもらって悪いな」
「いいって、それより何の用?」
「聞いてたと思うがこの人は一般人だ。もし犯人が現れたら安全な所に転移してやってくれないか?」
まるで俺たちが一般人じゃないかのような言い方で悲しくなってくるんだが、実際プロミネントギルダーや魔王は一般人には当たらないんじゃないか?
「それは……おにいさんの心からの望みかな?」
突然声のトーンが低くなり、睨みつけるような目でルインさんを見ていた。
「ッ!あ、あぁ、心からの望みだ」
戦いに縁のない普通の人間なら一発で意識が飛んでしまう程の殺気がヴェルから発せられていて思わず後ずさりしてしまった。
「そっか、じゃあいいよ。もしもの時はそうする」
そう言った瞬間には先程までの殺気が嘘のように消え、いつものヴェルに戻っていた。何だったんだ一体…
「・・・うぅ、私何で倒れてるんだろ?」
おっと、ルインさんがお目覚めのようだ。ヴェルは…いつの間にか見えなくなってるな。ホントにどうやってんだアレ。
「急に倒れ込んだので俺もビックリしましたよ。きっと立ち眩みじゃないですか?」
ここ10分位の嘘を吐く頻度が半端じゃない。
「そうだったんだ。ところで、私に見られたくないことはどうなったの?」
「ルインさんが倒れてる間に済ませましたよ・・・タイミングもちょうど良かったみたいです」
そう言うと俺は予め腰にさげていたオルギヌスを抜き放ち、ルインさんの背後に向かってくる何かに突き出した。
「ほう、今の攻撃を見切るとはなかなか」
キンッと澄んだ音がしてオルギヌスと相手の剣が交差する。
ルインさんは俺がオルギヌスを抜いた時にヴェルが転移したみたいだ。
「殺気が見え見えなんだよ。お前が辻斬り犯で間違いないか?」
俺は向かい合っている銀の仮面を付けたガッチリした体格の男に尋ねる。
「ああ、そうだ…」
そう言いながら俺から間合いをとり、ゆっくりと仮面を外す。
「久しぶりだな、ウェル」
「お、お前は、タカシ!?」
いや、まあ、仮面の下から出てきたのは全く知らない人でしたけどね…何か言わなきゃいけないみたいな雰囲気に流された次第です、はい。
「誰だよ!?キルファ村のギルドで闘っただろ?」
そういえばそんな事もあったな~。じゃあこの人はカレーっぽい名前のあの人か。
「あぁ、カーラー…だっけ?」
「それはお前だろ!カリーだ。アレン・カリー。思い出したか?」
「そうだそうだ。思い出した。んで、わざわざ国境まで越えて辻斬りしにきたのか?」
コイツが思い出せない人は16話らへんをチェック!
「俺はお前に倒された以来…」
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・
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長くなりそうだからカットしちゃったが問題ないよな?
「つまりお前はあの時の俺のスピードを見て、俺に勝つためにはスピードが必要っていう安直な結論に至ってスピードを磨きつづけたと」
「安直という部分が気になるが、そういう事だ。そして俺はスピードを手に入れた。(自称)プロミネントギルダーにも劣らないスピードをな!」
「あ~、うん、まあ、おめでとう?ってか辻斬りしにきたのかをしたのは俺をおびき寄せるためか?」
「あぁ。お前がハリンテの城に仕えてると聞いてな。さあ、あの時のリベンジだ。覚悟しやがれ!」
一通り喋って満足したのか剣を構えて再び戦闘体制をとった。
「逆恨みも甚だしいが、少しだけ付き合ってやるよ。サッサと終わらせるぞ」
「相変わらず生意気な奴だ。いくぞ!」
カリーは一瞬にして俺の背後に回り込んで剣を突き出した。
「見え見えだって言っただろ」
俺は振り向きざまに一閃し、剣を逸らす。更にそのままオルギヌスを振り下ろす。
「遅ぇ!燃え盛る憤怒の炎、ファイア!」
奴は再び間合いをとり斬撃をかわすと、最も速く発動できるファイアで牽制してくる。確かに速い、が、赤マントの男や今まで会ってきた強者達と比べると足下にも及ばないな。ってかファイアの詠唱厨二くさいな!
「スピードを磨いてきたって言ってたが、その程度なのか?」
俺がファイアをオルギヌスで斬り、つまらなそうに呟く。まあ、実際に期待はずれ過ぎてつまらない。
「うるせぇ!お前の攻撃だって俺に掠りもしねぇじゃねぇか!」
奴は頭に血を上らせて言うと、今度は俺に向かって真っ直ぐ突っ込んできた。
「安い挑発に乗りやがって。甘いんだよ…ハァッ!」
俺はオルギヌスを大きく振りかぶり、剣を打ち落とそうと振り下ろす。当然、このままいけば剣を弾いて俺の勝ちとなるはずだった。しかし、
「甘ぇのはお前だよ」
奴はニヤリと笑い、姿を消した。
そんなわけでオルギヌスは剣を打ち落とす事はなく、空振りに終わる。
「クッ、右か?左か?後ろ?いや、上か!」
上を見ると、奴が光り輝く剣を俺に向けている。
「終わりだぁっ!!ライトニングブレードォ!」
剣から光のレーザーみたいなものが出て俺に迫る。
「防御は、間に合わねぇな」
俺は上を見ながらそう呟く。
シュィーンッという空気をも切り裂く音と共に、レーザーは俺に直撃した。
「やったか?」
レーザーが起こした土煙の中で奴が呟く。ってか、
「やったか?とか究極のやってないフラグじゃねぇか。黙ってれば勝ってたかもしれないのに」
「なっ!無傷だと!?どうなってやがる」
黒い魔力で土煙を吹き飛ばしつつ、さっきと同じ体制で立っている俺。どうよ?ちょっとは格好ついたか?
「まあ、簡単に言えば魔力を"喰った"」
光属性と闇属性は相性が良いらしく、魔力に干渉すれば自分の魔力と同じになるらしい。イメージ的にはオセロを考えてくれれば早いかな?
「そんな馬鹿な。そんな事出来るはずが…」
呆けた顔でブツブツと喋っている。
「まったく、現にお前はその目で俺が無傷なのを見ている。その結果だけで十分だろ?今回は俺の方が上手だったと諦めて帰れ。辻斬りについては今後しないという事を誓うなら見逃してやるから」
「辻斬りを二度としないことは約束しよう。俺もギルダーとしてあまりいい気分じゃなかったからな。だが、勝敗はまだついちゃいねぇ!光剣壱式、抜光!」
剣を収めて腰を落とし、居合いのような構えをしたかと思うと、その体勢のままさっきとは比べ物にならないスピードで俺の懐に入って来た。
「はぁ、力量の差くらい分かれよ…」
速いとはいってもまだなんとか目で見える程度。確かにギルダーの中じゃトップクラスかもしれないが、俺を相手にするにはまだ足りない。
俺は瞬時に身体能力強化をかけ、強化された腕力と動体視力で剣を指2本で白刃取りする。
「なっ!?」
「ちょっと痛い目見てもらうぞ。闇桜っ!」
俺を中心に、無数の黒い魔力の刃が吹き荒れる。
もちろん剣を握ったままの奴に避ける術など無く、死なない程度に身体を斬り裂いていく。
「グアァァァッ!」
叫びながら膝をついている。やりすぎたかな…手加減はしたんだけどな。
「さてさて、メイドさんに見つからない内に強制送還してやるか。感謝しろよ?」
キルファ村のギルドの座標は調べてあるし、転移は問題ない。
「クソッ!覚え、てろよ」
普通なら気絶してるような怪我だが、元気な奴だ。
「まあ、期待しないで待っとくよ」
俺がそういい終わると同時に転移の魔法陣が完成し、奴が飛ばされる。
「終わった終わった。あれ?そういえば、あいつの名前何だったっけ?まあ、いっか」
1人取り残された俺はそう呟きながらその場を後にした。
次回予告
潤「久しぶりの登場過ぎてあいつが誰だか全く覚えてなかったよ…そもそも初登場したときも再登場する伏線みたいのなかったじゃん。さて、次回は俺が登場したりしなかったり、どうやら俺が闘ってる間のメイドさんとヴェルの話みたいだな」