たまには、・・・えっ?
遅くなりました。
因みにタイトルに意味は特にありませんので悪しからず。
ヤバい…いきなりピンチだ。何がピンチかって?高級レストランに付き物の事って何だと思う?そう、マナーだ。何でこんなにフォークとかが並んでんだよ!フォークにナイフにスプーンそれぞれ1本ずつで十分だろ。
「あの、どうかしましたか?」
前菜を前に固まっている俺を心配して、カトレアが声を掛ける。
「い、いえ、何でもありません」
外側から取っていくんだっけか?カトレアを一瞬盗み見て、彼女も外側から取っている事を確認し、外側のフォークとナイフを取る。
さて、やっと食べられるぞ。音はさせないようにして食べるんだよな。クソッ、こんな事なら普段城で食事する時もマナーに気を配るんだった。
慎重に、ゆっくりと、緊張の面持ちで前菜を食べていく俺。
「あの、ジュンさん?」
「は、はい、なんですか?」
きっちりとナイフとフォークを八の字に置いて、食事の中断の意を表した。
「食事のマナーの大前提は楽しむ事です。そのようにマナーに縛られていてはせっかくのお料理が美味しくなくなってしまいますよ?」
・・・・・流石貴族だな。色んな意味で。
「いや、それはそうなんですけど…チラチラとこちらを伺ってる人たちはカトレアさんの付き人ですか?」
そうだとすれば、マナーをしっかりしないわけにはいかない。女王にも迷惑が掛かるかもしれないしな。どんな感じかって?そうだな、食事のマナーもまともに出来ない女王派にこの国の政を任せて大丈夫なのか、みたいに貴族派が言ってくるかもしれないしな。まあ、これは大袈裟な例で、多分ないだろうけどな。
「気付いてましたか。すみませんでした。私は来なくていいと言ったのですが聞いてくれなくて…」
「謝らなくていいですよ。恐らくですが、このレストランの中にはメイドさんがいます」
そう言った瞬間、カトレア含めレストラン中の空気が一気に張りつめたものになった。
おっと、もしかして言っちゃいけない事だったか?
辺りはざわつきはじめ、席を立つ人がチラホラとでてきた。
「あ、あの、急な用事を思いついてしまいましたので、今日はこれで失礼させていただきます」
青い顔をしてそう言い残すと、カトレアはそそくさとレストランを出て行ってしまった。
ってかカトレアさんよ、急な用事を思いついたって言い間違いか?それとも本音か?
5分もすると、レストランに残った客は俺と見知らぬ老紳士だけになった。
「やっぱり居たんですね?メイドさん」
俺は老紳士に向かって話し掛ける。
「はて、誰かと勘違いをしておらぬかの?」
と、嗄れた男性の声で受け応えられた。
って男の声!?そういえば骨格もどう見ても男性のそれだ。あれ?もしかしてホントに人違い?
「え、あ、そ、その…」
やべっ恥ずかしさと驚きで頭の中が真っ白だ。
「ふふふ、随分な慌てようですね?ジュン様」
「って、その声はメイドさん!?」
さっきまで老紳士が居た場所にはいつものメイド服を着たメイドさんが居た。
おかしいな、さっきの老紳士から目は離してないのにいつの間にこの姿になったんだ?
「メイドの秘密に御座います」
人差し指を立て唇にあてるあの動作をするメイドさん。
無表情でそれをやられても、どちらかというとこわ…
「ジュン様?そこから先を考えますとわたくしの心が深く傷付き、ジュン様に何をするか保証は出来ませんよ?」
「ハイ、スミマセンデシタ」
そんなにすぐに頭を下げるなんて恥ずかしくないのかって?いやいや、俺だって命は惜しいからな。ってかこの状況でメイドさんに逆らえる人が居たら見てみたいもんだな、うん。
「分かっていただけたようでなによりです」
「で?何でメイドさんはここに来てたんですか?」
「貴族派動向を探りあわよくば弱みを握る、というのは建て前で、本心はジュン様のデートを滅茶苦茶にしようという目的のもと、ここに参りました」
ん?あれ?
「逆、ですよね?」
ってか逆であってほしい。
「さて、どうでしょう」
マジなのか?いや、でもメイドさんの立場からするとやっぱり逆なんじゃ…だがメイドさんだからな、マジで本心が俺の邪魔って可能性もあるか…
「いい感じで混乱しているところ申し訳ないのですが、いつまでこのレストランに居るおつもりでしょうか?」
「えっ?あ、あぁ、そうですね。行きますか」
って事で俺はお代を払ってメイドさんと共にレストランから出た。
「それで?本当は俺に伝えたい事があって来たんじゃないですか?」
城への帰り道で話を切り出す。
「なぜそう思うのですか?」
「貴族派の動向を探るにも、メイドさんなら俺にも考え付くような事をしないでも出来たでしょう?デートを邪魔しに来たってのは本気っぽくて何とも言えないんですけど、変装をしていたってところから、本気で邪魔しに来たというよりは手出しが出来なかったって感じでしたよね」
「時々ジュン様には驚かされます。その通りでございます。ジュン様にお伝えしなければならない比較的緊急な事があり、カトレア様がジュン様から目を離した隙にお伝えしようと試みたのですが、カトレア様のお付きの方が常時ジュン様を見張っていたもので、なかなか手出しが出来ませんでした」
「やっぱり見張られてたのか…ところでメイドさんは何でカトレアさんの付き人がいるときには手出しが出来なかったんですか?」
「貴族派の中ではわたくしという存在は女王派の中でも厄介な者と認識されているようでして、恐らく今回の件でしばらくは表立った動きは控えるようになるでしょう」
確かにメイドさんに目を付けられたら積極的に動こうとは思わないわな。
「って、もしかしてそれって俺のせいですか?」
「誰のせいとは言いませんが、最近動きが目立ち始め、動向を掴みやすくなっていた貴族派を一気に警戒させてしまったのは痛手ですね。誰のせいとは言いませんが」
「・・・・・」
「まあ、その事はどうでもいいのですが…ジュン様、勇者が動き始めました」
「へ~、そうだったんですか・・・って、えっ!?それって俺の命の危機じゃないですか!?」
「はい、ですからそれを伝えようと機会を伺っていたのでございます」
「で、勇者についての情報はありますか?」
「ありますが…」
「も、もしかして」
「はい、時間ですので次回に持ち越しです」
「うわぁぁぁ!」
次回予告
潤「次回は俺にとっての鬱回だ。対策を考えますか。・・・・・はぁ」




