たまには、こんな事も
閑話休題
一休み
「ジュン君ね、どうしてこのレストランを受けようと思ったの?」
俺は今、ハリンガルのとあるレストランでバイトをするべく面接をしている。
「はい、このレストランは雰囲気(と時給)が良く、私がこれから社会に出ていく上で良い社会勉強(と女の子と触れ合う)の場になると考えたからです」
たまには息抜きもいいだろ?
「立派な事言ってんのに何か釈然としないなぁ…まあ、このレストランも今人手不足だから、人格に問題はなさそうだし働いてもらえるかな?」
「はい!是非明日からでもよろしくお願いします」
「じゃあ、早速現場に立ってもらおうかな?」
そう言われて連れてこられたのはホールだ。
「俺はウェイターをすればいいんですか?」
「理解が早くて助かるよ。今日は見学して流れを掴んで、明日から仕事に入ってもらえる?」
「はい、分かりました」
じゃあね、と面接官(聞いたところ店長だったらしい)はどこかに行ってしまった。
てっきり講義を受けたりするもんかと思ってた。いいかげんだな。あ、あのウェイトレス可愛い。
1日ウェイターの仕事を見てみて得たこと。ほとんど元の世界のウェイターと同じだが、唯一違う点は店員に中学生くらいの人が雇われてることくらいか。まあ、小学生くらいの冒険者がいるくらいだからな。
あ、さっきのウェイトレスさんはハルって名前らしいよ。これも得たことだな。
「ま、明日から頑張ろう」
って事で帰って寝る。
現在は朝の5時。レストランは7時に開店なので6時にはレストランに着いていなくてはならない。
「おはようございます、ジュン様」
城の廊下を歩くと後ろからメイドさんの声が聞こえた。
「ああ、おはようございます。ちょっと仕事があるんで朝食はいりませんので」
「承知いたしました。レストランでのアルバイト、頑張って下さいませ」
そう言って完璧なお辞儀をするメイドさん。
「はい、行って来ます」
そう言って城を出た。
「そういやメイドさんにレストランでバイトするなんて言ったっけっかな?」
まあ、いいか。
「おはようございま~す」
「あ、おはよう。君が今日から一緒に働く新人さんね、よろしく」
軽くホールで挨拶すると、すでに来ていた女性が返事した。昨日知り合ったハルさんだ。
「よろしくお願いします」
「ハハッ、そんなに堅くならなくていいよ。じゃ、早速テーブルを拭いてもらえる?」
布巾を手渡され、俺は各テーブルを拭いた。
それから何チャラカンチャラで時間が経って、開店した。
午前中は人も少なく、先輩方で回せていたが、昼時になり客の数が増えてきて、俺が駆り出された。
「いらっしゃいませ~、本日はどのようなトマトになさいますか?」
客は会社員っぽい男性だ。
「え?トマト?」
「え?トマトでございますか?」
「いやいや、だって君今トマトって」
「はいはいはい……え?」
「え?」
「あ、あぁ、はい、かしこまりました」
「ん、あ、あぁ、たのむよ」
って事で2番テーブルの客にトマトをちゃんとお届けしてきた。トマトを昼食にするなんて変わった人だな。
テーブルにトマトを置いた時にどこか納得してない顔をしてたけど何だったんだろうな。
さて、仕事仕事。
「いらっしゃいませ~、本日はどのような物をお持ちいたしましょうか?」
今度の客はどこぞのマダムだ。
「いつものやつ頂戴」
いつもの?いつものって何だ?
「い、いつものやつでございますか?」
「そ、いつものやつ。分かるでしょ?」
そんなプレッシャー掛けないで。
「は、はい。かしこまりました」
・
・
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「お待たせ致しました。ト、トマトでございます」
苦し紛れのトマトです。はい。
「ふ、ふざけないで!帰るわ!お代は払わないからね!!」
トマトみたいな顔をして帰ってしまった。おっ、今のうまくなかった?え?そうでもない?さいですか。
「食い逃げを公言なさるとは大した度胸ですね?」
「食べてないので食い逃げにはならないはずですわ!」
「いえ、すでにお客様のお頼みになった食事の方をお届けしましたので、申し訳ありませんが代金はお支払いして頂きます」
「そんなのおかしいわよ!」
「やれやれ、では逆にお聞きしますが半分だけ食べたお客様はお支払いの方も半額で良いのですか?」
「それはダメよ。食べているのだもの」
「半分は当たっておりますが、半分は間違っております。例えばお客様が唾を入れてしまったら?」
「それもダメね、うまく言えないけどダメだと思うわ」
「それは食事をお客様のテーブルに運んだ時点で私たちの所有を離れお客様のモノとなったからです」
「そ、そうなの、かしら?」
「私たちの損害は大したものではございません。しかしお客様の心の問題なのです。今後のお客様の善良さを保つためにも必要な事なのです」
「・・・分かったわ。私も熱くなりすぎたわ。それだけ客と真っ向から向かっていく店員初めて見た。これからも頑張ってね」
そう言って代金を置いて出て行った。
適当に言い訳してたけど何とかなるもんだな~。え?詐欺師だって?俺は魔王だよ。
「お仕事頑張っているようですね、ジュン様?」
「メ、メイドさん!?どうしてここに!?」
「ジュン様が真面目に仕事をしているか見に来させていただいたのですが…どうやらおふざけになっているようで」
「いや、それはその・・・・・お客様、ご注文はお決まりでしょうか?」
「言うに事欠いてマニュアル通りにならないでください」
「お客様、他のお客様もいらっしゃいますのでお静かにお願い致します」
「ほう、わたくしにそのような事を言いますか。いいでしょう」
そう言って立ち去った。何しに来たんだ?あの人。ってか後がメッチャ怖ぇ~!
「いらっしゃいませ~、本日はどのような物をお持ちいたしましょうか?」
次の客は街の青年だ。
「おう、この『こだわりステーキ(120ワロ)』をくれよ」
「『王虎のこだわりステーキ(5300ワロ)』ですね。かしこまりました」
「え?あ、ちょ…」
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「お待たせ致しました。『王虎のこだわりステーキ』でございます」
「いや、あの、俺が頼んだのは…」
「こちらが伝票となります。ではごゆっくりどうぞ」
そう言って俺はその場を離れた。
その後どうなったかなんて知ったこっちゃない。
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「仕事お疲れ様、で、君を呼び出した理由だけど…」
仕事が終わり、店長に呼び出された俺は、面接をした部屋に行った。
「何となく分かります。国に仕えてる人から私の接客態度が極端に悪いってクレームが入って、実際に現場を見た店長さんも同じことを考え、クビにする事を決めた。こんなところですか?」
すると店長はキョトンとして、
「あ、あぁ、それで君には申し訳ないが…」
「はい、自分でも分かったので、辞めます。バイト代はいらないので」
「すまないね。また今度うちにおいで」
「はい、ありがとうございました」
甘い店長だ。
「お仕事お疲れ様でした」
レストランを出たところでメイドさんに会った。ってか待ち伏せしてただろ絶対。
「してましたが何か?」
「開き直らないでください。メイドさんのせいでバイトクビになっちゃったんですよ?」
「ジュン様の自業自得です。それにあまり乗り気なバイトではありませんでしたね?」
「まあ、そうですね。・・・帰りますか」
「はい、夕食の準備も出来ております」
「呼びに来てもらって悪かったですね」
「いえ、仕事ですので」
「それでもありがとうございます。・・・クッキーでも食べます?」
俺はクッキー屋が目につき、メイドさんへのお礼を兼ねて提案する。
「ジュン様の奢りであるなら」
「もちろんです」
その後はクッキーが入った袋を片手に城に帰ったとさ。
・・・これで終わりと思うなよ?
「無駄に伏線をはってないで、行きますよ?」
「はい」
次回予告
潤「今回は予想外の客が来たからな…次回はばれないように頑張りますか。って事で次回も俺がなんかやらかすぜ!」