39 なんか、涙目です
久しぶりの本編です。
「んじゃ、説明書を読みますか」
何で説明口調なんだ?俺。
《神魔剣オルギヌス 取扱い説明書》
お買い上げありがとうございます。本品は呪いの武器につき、返品が出来ませんので、予めご了承下さい。
尚、本品は吸呪性に優れております故、意思を持つもの(人や魔物など)を斬りつけますと、より一層扱う者を選ぶ剣となりますので、代々受け継いでいこうとお考えのお客様はあまり意思を持つものを斬りつけないようご注意下さい。
(保管方法や保証期間など、どうでもいい事なので省略)
神魔剣オルギヌスは魔剣ですので、黒魔力を注ぎ、一定の行動をする事で剣技が扱えます。
・N-001
剣を地面に突き刺し、魔力を注ぐ事で発動します。剣の周囲を魔力を注いだ分だけ広がる漆黒の球体で、相手の視界を奪います。発動者はこの限りではないのでご安心下さい。
・N-002
魔力を注ぎ、剣を前に突く事で発動します。切っ先の方向へ螺旋状に進む黒い魔力砲を生み出します。魔力を注いだ分だけ魔力砲は太くなります。
以上が剣自体に備わっている剣技となります。
では、今後とも我が社の通信販売をご贔屓に。
だそうだ。魔剣みたいなのってダンジョンとかにあるものかと思ってたわ…通販で買えんのな。
しかも魔王、絶対人斬りまくっただろ。滅茶苦茶邪悪なオーラを感じるんだけど…
「とりあえずは、儲けたって認識でいいのかな?」
俺武器になるもの黒刀しかないし。
「さてと、用事も終わったみたいだし、戻るか」
今は夜中の3時頃だ、多分。説明書読むのに時間が掛かったからな。
俺は神魔剣とやらを持って、もと来た道を歩いていった。
ヴェルの居るところまで戻ると(事前にヴェルに掛けておいた闇玉のおかげで魔力を辿って戻れた)緑色の光について行った時と特に変わったことは無さそうだった。
俺はヴェルに掛けた闇玉を解き、起こさないように静かに寝っ転がった。
「ん~!朝かぁ」
朝日が眩しく、目を細めながら伸びをするヴェル。
「おはようさん、よく寝れたか?」
「うん、っておにいさんどうしたの!?」
「どうしたって何が?」
寝癖でも付いているんだろうか。
「いや、隈がすごいよ!」
「あぁ、昨日は寝られなくてな…」
と、俺は昨夜にあった事をヴェルに話した。あぁ、もちろん武器にキスされたなんて事は言ってないぜ?
「やっぱり……だからあたしに魔法を掛けたんだ」
「そういうこと。んじゃ、この剣の事は道中話し合うとして、朝ご飯にするか?」
「うん!お腹と背中がこんにちはだよ~、朝ご飯は何にするの?」
小学生かっ!?いや、今どきお腹と背中がこんにちはなんて幼稚園児レベルだよ!
「そうだな…昨日の肉がまだ余ってるからヴェルはそれでいいか?」
「あたしはいいけど、おにいさんはどうするの?野菜は昨日食べきっちゃったよね?」
別に俺が大食いなわけじゃないぞ?野菜は日持ちしないかなって思って1食分しか持ってこなかっただけだ。
「缶詰めがあるから俺の分は大丈夫だな。んじゃ、とっとと食べてレーテルンに行きますか」
「うん、いっただっきま~す!」
朝食を終えた俺たちは、魔物との戦闘もなく、昼過ぎには森を抜けた。
「それにしても、旅をしてから今まで1匹も魔物に出くわさないな」
「アハハ~、何でだろうね~…」
何か物凄く白々しい返しがきた。ヴェルが何かしてるのか?まあ、敢えて追求はすまい。
「魔物が少ないのはいい事だから気にしないでいっか。ところでヴェル、レーテルンまではあとどの位なんだ?」
「う~ん、このペースで行くと、明日には着くかな~」
期限は1ヶ月、今日がハリンテ城を出て25日だからちょうどいいか。
「んじゃ、黙々と歩いていきますか」
~10分後~
「・・・・・」
「・・・・・」
~20分後~
「・・・・・」
「・・・・・」
~30分後~
「・・・もうダメだ!黙々となんて歩いてられねぇよ」
「限界早っ!!まだ30分位しか経ってないよ!?」
おっと、ヴェルに突っ込まれちまった。俺の横を歩くヴェルは何だか得意げな顔をしてるし…って、
「森に入ってから俺のローブに入らないけど、大丈夫なのか?」
「うん、もう尾行されてる気配は無いし大丈夫だよ。ありがとね、おにいさん」
今まで尾行されてたのか……全然気付かなかった。俺が気付かないなんてメイドさんレベルか…厄介なのに追われてるな。
「いやいや、気にすんな。ヴェルの耳も堪能できたことだしな」
「まったく、おにいさんったら」
ハハハ、と俺たちは笑いあって、歩き続けた。え?平和すぎるって?安全第一、平和が一番ってな、HAHAHA
歩き続けること更に10時間、俺たちはレーテルンに入って初めての村、ピテルンに到着した。
何か可愛い名前だな、ピテルン。
「ちょうど夕方だし、今日はここに泊まるか」
「そうだね、じゃあ宿屋を探そうか~」
「その前に1つ聞きたいんだが、レーテルンの貨幣を俺は持ってないんだが…」
「ん?この世界はどの国でもワロ貨幣で統一されてるよ?おにいさんの世界では色んな貨幣があったの?」
「あぁ、国によって独自の貨幣を使う国が多かったな」
この世界は元の世界のEUみたいなものって認識でいいのか?国を行き来するのにパスポートとかも要らないし…まあ、便利だからいいけど。
「へ~、不便だね」
「まあ、俺はそれが普通だったから不便に感じなかったけどな。さて、サッサと宿をとっちゃうか」
「2部屋、それぞれ1泊でよろしいでしょうか」
宿屋の受付のスケルトンのお兄さん(お姉さんだったらゴメンナサイ)に俺とヴェルの部屋をとってもらった。
「はい、大丈夫です」
「食事は付きませんので、各自調達してください」
「分かりました」
「さて、じゃあ食事をとるついでに村を見て回りますか」
自分たちの部屋を確認して、俺たちは再び宿屋の玄関で待ち合わせた。
「この村はあたしも初めて来たからね」
そう言って俺たちは宿の外へとくりだした。
よし、村を散策した結果から報告しよう。
・・・何にもねぇぇぇ!!確かに規模の小さい村だったけど、宿屋1軒に食事処2軒、民家13軒の村って…武器屋も無いがどうやって魔物が襲ってきた時に撃退するんだ?
ま、そんな事より夕飯にしよう。
「え~っと、ヴェルは普通の定食屋と虫をふんだんに使った定食屋、どっちがいい?」
ちなみに今俺は涙目だ。理由は…察してくれ。
「おにいさん…あたしだって虫なんて食べたくないよ。普通の定食屋にしよ?ほら、涙拭いて」
これは気を使ってもらえたのか?それともやっぱり虫をたべるなんて特殊なのか?
俺は涙を拭いて普通(ここ大事)の定食屋に入っていった。
次回予告
潤「虫ったって食えるのもあるけどさ…やっぱり俺は無理。あ、別に虫を食べるの事を批判してるわけじゃないからな。好みの相違ってヤツだ。次回はいよいよレーテルンに到着する!……かも」