37 なんか、怖いです
最近スマートフォンが落ちやすくて文章が消える…
「ハッハッハッ!俺より強いと言われた獣懐狼を倒したぞ!」
肌が黒く、目が真っ赤な魔族が、下には約30メートル、上には雲まで三角錐に切り取られ、いや、消された風景を前に高笑いをしていた。
「ホント、おめでたい魔族だよ、魔天剣」
魔天剣は思わず冷や汗を浮かべる。
「ハハハッ、まだ奴の声が聞こえてきやがる。幻聴か?」
「やれやれ、五感が封じられたおにいさんを移動させるのも大変だったよ」
「そんなバカな!てめぇは確かに俺の魔天・断罪で空間ごと消し去ったはず」
「プロミネントギルダー第3位が空間転移の1つも出来ないと思う?第7位の魔天剣さん」
「クソがァァァ!!」
そう叫びながら魔天剣は天叢雲剣を振り上げる。
「そうやってすぐに頭に血が上るのが悪い癖だよ。せめて第5位に勝てるようになってから出直してきなよ。テレポートっと」
そう唱えると魔天剣の身体が光り出し、消えた。
「行き先は・・・・・よく分からないや」
そんな事を言いながらおにいさんに掛かっているクローズを解く。
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潤視点
寝ていたら急に明るくなって、目を開けると前にはヴェルが居た。
「お?おうヴェル大丈夫だったか?心配したぞ~」
「ウソだ!今絶対寝てたでしょ!」
何でバレてるの!?完璧に隠せてたはず…
「ちょっと心眼使って戦闘の様子を窺ってた」
するとヴェルはジト目をして俺を見てきた。どういう事?
「おにいさん、涎」
そう言って俺の口元を指でなぞった。
う~ん、確かに涎だ。って、
「女の子がそんな事するんじゃありません!」
まったく、はしたない。不覚にもドキッとしちゃったじゃないか。
「お母さん!?あたしのお母さん!?」
「いや、おにいさんだ」
「急に冷静にならないでよ…しかも自分でおにいさんって」
「それよりも、大丈夫だったか?」
「うん、相手も本気じゃなかったみたいだからね」
「何にせよ、無事で良かった」
一通り安否も確認出来たし、
「んじゃ、行きますか」
「いいの?」
「ん?何が」
行っちゃ何かまずいのか?
「あたしの事、気にならないの?」
「え?そりゃあ女の子としては魅力的な方かと思うけど…」
「ありがと。って、そうじゃなくて!あいつが言ってたことの方!」
「あいつ?ああ、魔天剣とかいうプロミネントギルダーの事か。ヴェルの事何か言ってたな。まあ、気にしないさ、ヴェルが言いたいときに言えばいいよ」
「・・・・・そう」
「じゃ、行こうぜ。あと1週間でレーテルンに着かなきゃいけないし」
「うん!じゃ、またローブにいれて~」
「おう!ヴェルの耳は任せとけ」
「や、やっぱやめようかな…」
そう言って俺から離れようと後ずさる。
「フッフッフッ、よいではないか~」
俺はそんなヴェルを抱き寄せて撫で回す。
「あ~、もう!おにいさんったら。・・・・・ありがと」
聞こえないように言ったつもりなんだろうが、この至近距離じゃ丸聞こえだぞ。
「ハハッ、どういたしまして」
「き、聞こえてたの!?サ、サッサと行こ」
ヴェルはローブの中にいるから顔は見えないが、きっと顔を赤くしていることだろう。
「いつの間にか夜になっちゃったな~」
俺たちは今レーテルンの森にいる。めっちゃ不気味なんですけど…
「しょうがない、野宿にしよっか」
「ヴ、ヴェルさん?野宿ってこの森でですか?」
「そうだけど?夜に森を歩くのは遭難の危険があるからね」
「いや、遭難と同じくらい危ないものがここには居そうなんだが」
「獣は何故かここら辺にはいないから大丈夫だよ?」
「何かいるからじゃね?獣は分かってるん
じゃね?」
「もしかしておにいさん、怖い?」
「な、な、な、何の事やら」
「んじゃ、野宿しても大丈夫だね」
「お、おう、サッサと寝る場所探そうぜ?」
声が震えてる上に裏がえってしまった…恥ずかしい。
「ここでいいかな?」
俺たちは森の中でも比較的開けた場所で一晩過ごすことにした。
野宿なんてこの世界が飛ばされた時以来だな…
「じゃ、暖をとって夕食にするか」
枯れ木を拾ってファイヤーで焚き火をした。
「夕食は干し肉と野菜と缶詰めがあるけど何がいい?」
「あたしは干し肉だけでいいよ~」
「ちゃんと野菜もとりなさい!栄養バランスが悪いわよ!」
「お母さん!?ってもういいよ、そのノリ…」
「だが実際に野菜はとった方がいいぞ?太るぞ」
「女の子にその言葉は禁句だよ!人狼族は肉食で野菜は食べないの。体重だって軽いんだよ?」
ヴェルは肉食系女子と、え?意味が違う?
「ふ~ん、ならしょうがないな…じゃ、どうぞ、お姫さま」
「どうも、おにいさんは何食べるの?」
「俺は野菜でいいかな、そんなに肉は好きじゃないし」
「おにいさんだってバランス悪いよ。お肉も食べなきゃ」
「へいへい、今度な。じゃ、夕食にしようぜ」
「うん。いっただきま~す」
夕食なんて普通の風景はカットさせてもらうぞ?
夕食が終わって俺たちはすることも無いので寝ることにした。
「見張りは俺がしてるからヴェルは寝てていいぞ」
「この森に魔物の気配は無いし、おにいさんも寝て大丈夫だよ?」
「そうですか。じゃ、寝ましょ寝ましょ」
そう言って俺たちは寝袋の中で寝ることにした。
いや~、怖ぇなぁ…ヴェルはもう寝息を立てている。って早!!
目開けてんのも怖いけど閉じるのも怖いな…どうしろっていうんだ。
そんな事を考えてたら、ふと視界の端に緑色の光が見えた。
あ~、嫌な予感しかしねぇ…
「行かないわけには……いかないんだろうなぁ。ヴェルは、寝てるか。一応魔法掛けとくか、闇玉っと」
そう呟いてヴェルを俺の魔力で包む。新技というほどのものではない。単に魔力の壁で防御力をあげるだけだ。
「行ってくるか…ちょっと待ってろよヴェル」
そう言って俺は緑色の光を辿って歩いていった。
「ん?これは?おにいさんの魔力?どこか行ったのかな?あ~眠っ、寝よ寝よ」
次回予告
潤「怖ぇ~、行きたくねぇ~。何で緑色の光について行っちゃったんだよ俺!もうやだ。帰りたい…」