31 なんか、久しぶりのギルドです
あらかじめ書いておいたものが消えていてショックを受けた今日この頃
「さて、今日はギルドに移籍届を出しに行こうと思う」
朝食を終え、俺はセレンに今日の事について提案する。
「そうね。この国で働く事が決まった以上、届けは出さないといけないわね」
「じゃ、早速行きますか」
基本的に仕事をしないで良い俺たちは城の出入りが自由なので気軽に外に出れる。
「引っ越したんで移籍の手続きをしたいんですけど」
って事でやってきましたハリンガルギルド。大都市なだけあってギルドの大きさも働く人の数も相当なものだ。事前にギルドの位置を調べたのだが、その建物の大きさから迷うことなく辿り着いちまった。
「移籍ですね。ギルドカードを提出して下さい」
俺とセレンはポケットからそれぞれギルドカードを出し、職員に渡した。
「はい、ウェル・カーラーさんとセラフィ・カーラーさんのお2人がキルファギルドからハリンガルギルドに移籍ということでよろしいでしょうか」
久しぶりに偽名の方の名前を聞いたな…すっかり忘れてたぜ。
「はい、ついでに国籍の方もユリナントからハリンテに変えてもらえますか?」
「承知いたしました。しばらくお待ち下さい…………はい、これが新しいギルドカードになります。ユリナントでの活動も消えずに残っているのでご安心下さい」
そう言うと、職員は俺たちに銀色のカードを渡した。
「前回のカードはプラスチックみたいなカードだったんですけど…」
「依頼でジーニアスワームを討伐された時に初級冒険者から中級冒険者にランクアップしたみたいですね。本当なら報告したときにランクアップされるはずなんですが…」
ランクアップなんてシステムがあったのか…
ジーニアスワームを倒したときは…
「あぁ、その時は急いでいてすぐにギルドから出ました。だからじゃないかと」
「そうでしたか・・・・・はい、こちらの方でも登録が完了致しました。何時でもギルドをご利用になれます」
「ありがとうございます」
そう言って俺たちは受付から離れた。
「ジーニアスワームなんていつの間に討伐したのね」
セレンが聞いてくる。そっか、セレンは知らないんだっけ。
「ちょっとな。緊急で依頼が出てたから受けてみた」
嘘は言ってない。
「そんな気軽に受けられるような敵じゃない気がするけど…まぁいいわ。で?この後はど
うするの?」
「しばらく戦ってなかったから久しぶりに討伐系の依頼でも受けようと思うけど、どう?」
勘が鈍っても困るしな。
「良いと思うわ。じゃあ掲示板を見てみましょ」
そうして俺たちは掲示板へと向かった。
「いや~、流石に都会なだけあって依頼も多いな~!」
キルファ村の10倍くらいありそうだ。
「討伐系の依頼はこの掲示板ね」
セレンが1枚の掲示板を指す。どれどれ、とふと目に留まった依頼を読んでみる。
《Aランク討伐依頼》
東の砂漠[クレイド砂漠]にグランアスヤが現れた。冒険者はクレイド砂漠へ向かい、これを討伐せよ。
報酬:8000ワロ
証明部位:毒の牙
注意事項:牙には即効性の毒があり、人間は10秒と保たないので注意。また、今回のグランアスヤは大型種なので、魔術師を随伴する事を勧める。
写真を見ると、50メートルはあろうかという大蛇が写っていた。
確かに鱗が硬そうだ。魔法の方が攻撃が通るかな。
「俺たち2人じゃ攻撃力不足、か」
こりゃ無理だ、と諦め他の依頼を…
「やあ、おにいさん。昨日ぶりだね」
ん?この声は、
「おう、ヴェルか。ギルダーだったんだな」
真紅の髪の上に獣耳がちょこんと乗った少女がそこには居た。
「ジュン、その娘だれ?」
と、セレンが聞いてくる。そうか、セレンはヴェルの事知らないんだっけ。ってかギルドであっさりと本名出すなよ…まぁ、ヴェルなら大丈夫だろうけど。
「この娘はヴェル。えぇっと、この前道で知り合ったんだ」
ちょっと無理があるか…
「?、よく分からない出会いね。まぁいいわ。私はセレン、よろしくね」
「よろしく~。ところでさぁ、セレンさんはおにいさんの彼女?」
「か、か、彼女!?な、何いってんのよ!私はこんなバカの彼女なんかじゃ…」
セレンは顔を真っ赤にして反論している。
バカって…俺何か悪い事したっけ
「違うのか~、つまんないの」
何がだよ。ってか
「俺たちに用があるわけじゃないのか?」
「そうだった!おにいさん今グランアスヤ討伐の依頼見てたでしょ。でも火力不足で諦めようと」
何時から見てたんだ?
「あ、あぁ。そうだけど」
「じゃあ、一緒に討伐しに行かない?」
「ヴェルは魔術師なのか?」
「いや、違うけど。でもグランアスヤは5回討伐したことがあるから大丈夫だよ」
「ん~、でも今回のは大型種らしいぞ」
「大丈夫。大型種も何回か討伐したから」
ヴェルは見かけによらず強いんだな…
「分かった。そういうことなら一緒に行こう。いいか?セレン」
「えぇ私はいいわよ」
「じゃ決まりだね!あたし依頼を申請して来る」
「じゃ、俺たちも行くか」
「えぇ、……あの娘どこかで」
そんな事を呟いたセレンだった。
クレイド砂漠はハリンガルから東に1時間ほど歩いた所にあった。
「この砂漠はね、端から端まで歩いて100日かかるとっても広い砂漠なんだよ~。迷ったら生きて出てこれないから気を付けてね」
そんな事を明るく言うヴェル。
こ、怖ぇ~!帰りて~
「そんな顔しなくても大丈夫だよ、おにいさん。あたしはこの砂漠に慣れてるから」
え?顔に出てた?
「静かに!2人とも。グランアスヤがいたわよ」
見てみると、100メートルほど先に巨大な蛇が蜷局を巻いて寝ていた。
「あれか、デカいな」
「グランアスヤはね、ファイヤー系とアイス系に弱い魔物だよ」
「如何にも変温動物ってかんじだな」
「私はファイヤー系の魔法ならある程度出来るけど、アイス系はさっぱりね」
セレンって魔法使えたんだ…
「俺はアイス系とファイヤー系がそれぞれ中級レベルまでだ」
「あたしは上級レベルの魔法が1発なら撃てるよ。中級レベルの魔法なら10発ってところかな~」
「ヴェルは上級レベルも使えたのか、凄いんだな」
「1発で魔力が尽きちゃうけどね…」
「んじゃ今回は互いの実力がよく分からないから各自の行動に任すって事で、作戦は特になし」
「分かったわ」
「りょ~かい」
「じゃ…行くぞ!」
そうして巨大な蛇に向かう小さな俺たちという構図が出来上がった。
次回予告
潤「次回、ヴェルの実力が明らかに!?俺も黒い魔力は使わないようにするからな~大丈夫かな…」