28 なんか、お食事みたいです
テストが終わりました
俺たちは謁見の後、夕食の時間になるまで休むようにと部屋に案内された。・・・もちろん部屋は別々だからな。
一通り荷解きが終わり、一息吐いた頃、セレンの方も終わったのか俺の部屋にやってきた。
「何で来たかは分かってるわよね?」
「あぁ。じゃ、始めますか」
そこで俺はコホンと咳払いを1つして、
「第1回、国に仕えちゃおうかどうしようか、緊急家族(?)会議~!」
「な、何であんたなんかと家族じゃなきゃいけないわけ!?まったく」
セレンは顔を真っ赤に染める。
おおう!久しぶりのツンデレ。てっきりもうデレてんのかと思ってた。
「だからちゃんと ”(?) “を付けただろ?」
これほど分かり易く表示したのに…
「括弧書きは口に出してないでしょ!!・・・ちょっと嬉しくなっちゃったじゃない…」
最後の方に何か言ったようだが小さすぎてよく聞こえなかった。
・・・なんていうラノベの主人公みたいなこと俺がすると思ったか?ふっ、甘いな読書の皆さんよ。バッチリ聞いてたぜ!
まぁ、聞いてたからってどうって事はないんだけど…
「はいはい、悪かったね。じゃ本題だ。正直セレンはどっちの方が良いと思う?」
「そうね…その仕事内容がどんなのかにもよると思う。メリットは確かに多いけど、デメリットの方が大きいんじゃ話にならないわ」
「そりゃごもっともだ。って事だ、部屋の前に居る誰かさん。少なくとも夕食が終わってからじゃないと結論はだせねぇや」
俺がそう言うと、扉が開いて1人のメイド服の女性が部屋に入ってきた。
「盗み聞きというご無礼、どうぞお許し下さい。わたくしはこの城でメイドをしております者です」
姿を現したメイドさんは躑躅色の髪で表情はほとんど見られない美人だった。テンプレだな。
年の頃は……俺より少し高いか同じかってくらいか?表情が薄いと年齢って分からないもんだな。
「・・・全然気配を感じなかったわ。あなた何者?」
セレンが尋ねる。確かに俺も見逃しそうになるほど気配が分かりづらかったからな…ただのメイドさんじゃないだろう。
「ハリンテ城に仕えるただのメイドと言ったはずですが。それとジュン様、女性の年齢を探るのはあまり感心できませんよ?」
「ハハハハハ、すみません」
どういう事だ? 確かに声には出していなかったはず。それにこの人とは思えない雰囲…
「それ以上は詮索しない方がよろしいかと」
その言葉を聞いた途端、俺は鳥肌が立ち、戦ってもいないのに死がイメージされた。これが殺気なのか?とにかくこの人は絶対に敵に回しちゃダメだ。そう俺の生存本能が叫ぶ。
「は、はい…分かりました」
この雰囲気はセレンには向けられていないのか、
「ち、ちょっと、2人してどうしたのよ。会話も成り立ってないし」
と言っていた。
「お気になさらず、ちょっとした話し合いですので」
そう言うと微かに表情を和らげた。
「で?何をしに来たんです?まさか盗
み聞きしに来たってわけじゃないですよね?」
これ以上この話題を引っ張ると俺に危険が及びそうだから話題チェンジで。
「そうでした。ジュン様と下らない話話をしている場合ではありませんでした。夕食の準備が出来ましたので、どうぞお2人とも広間へお越しください」
下らないって…まぁいいけど。
「分かりました。といっても私たちは広間の場所が分からないので案内していただけますか?」
セレン、、、お前敬語使えたのか!
「承りました。では早速行ってもよろしいでしょうか?」
セレンと俺は顔を見合わせ、
「お願いします」
と言った。
広間には既に女王が居た。
「遅かったの、さぁ席に着くが良い」
「すみませんでした。じゃ、失礼して」
と、俺たちは席に着いた。
「では、いただくとするかの」
そう女王が言うと、料理が運ばれてきた。前菜に始まり、スープ、肉料理と続いてきた。
・・・気まずい。ってか空気が重い…
「そう堅くならんでよい。食事は楽しむものじゃぞ?何か妾に質問でも何か無いかの?」
とは言ってもね~
「じゃあ…」
と俺は神妙な顔をした。
「うむ。何でも聞くとよい」
と女王。
「何歳で…」
「ジュン様、先程言ったことをお忘れでしょうか?」
メイドさんが俺に無表情で言ってくる。やべっ、めっちゃ怖い。
「よい。歳くらいいくらでも教えてやるわ。16じゃぞ?して、何故歳を聞く?」
なんとなく、なんて言ったらまたメイドさん怒るだろうな。
「いや、女王って名前の割には若く見えるな~って思ったので」
「うむ、先代女王、つまり妾の母上がの…」
女王が俯いて視線を自らの膝へと落とす。
おっと、まずいこと聞いちゃったか?
「母上が面倒くさいと言って旅に出て行ってしまっての。昨年から妾が女王になったのじゃ」
ひどく個人的な理由だったぁぁぁ!
「ハハハ…そうでしたか。ではどうしてそんな言葉遣いを?」
続けて俺は質問した。だって気になるじゃん!
「これかの?これは妾に言葉を教えたのがお
婆様での、つい移ってしまった。大臣たちも対外交渉をする時になめられなくていいだろうという事で、直されもしなかったからの」
「へ~、そうだったんですか」
てっきりキャラを立てる為かと…
「ジュン様?」
メイドさんが圧力を…ごめんなさい。
「じ、じゃあ最後に、許婚とかって居るんですか?」
なんかセレンがこっちを睨んでるが気にしない。これは今後この女王がどのポジションにつくか考えるのに必要な事だからな。下心は4割くらいしかない!
「ほう、直球じゃな。許婚は居らんぞ?ジュンがなるかの?」
そう言うと女王はクックックと笑いを漏らした。
ここは俺も冗談で返すべきだろうか?
「じゃあ立候補させていただきましょうかな?」
と笑いながら返しといた。セレンは俺が冗談で言っていると伝わったのか、特に怒らなかった。
「ふ、なかなか面白い奴じゃの。今夜妾の部屋に来るとよい」
・・・・・ぇ?どゆこと?みんなも顔を赤くして俯いてしまった。え?そゆこと?
「・・・・・勘違いしておるようじゃから言っておくが、ただ話がしたいだけじゃぞ?」
ほっ。女王のその言葉を聞くやいなやみんな胸をなで下ろした。
その後は堅い感じもなく、みんな(メイドさんを除く)で談笑しながら食事を終えた。
「おや、ジュン様、今回はここまでのようです」
「ん?あ、あぁそうみたいですね」
何で小説の事情を知ってんだ?まぁいい、じゃ、メイドさんの言ったとおり今回はここまで。
次回予告
潤「さて、読者の皆さんは分かってると思うけど、次回は女王の部屋でお話だ。果たして女王は何を聞きたいんだか…」