21 なんか、悪魔らしいです
何とか2話目投稿
「ここが王都ユリナントか…」
俺は村の人に王都の方角を教えてもらい、身体能力強化を使って1時間程走って王都に着いた。
石造りの街は、王都なだけあってかなり活気があった。
「んでもってあれが城と」
街の中心には一際大きく、豪奢な建造物がある。
「早速乗り込みたいところだけど、顔は見られない方が良いな…」
という事で近くの店で翁の能面のような面を買い、早速着けた。
顔が知られているという可能性があるが、念の為というヤツだ。
「さて、行くか」
「ここはユリナント城であるぞ。怪しい面を着けおって、何者だ!」
あの後、俺は城へ向かって今門番に足止めを食らっている。
「俺は羽山 潤だ。話は聞いているだろう?」
「貴様が羽山 潤か。確かにその珍しい黒髪も一致するな。よし、通れ。城の中に案内がいる」
しまった!黒髪はこっちじゃ珍しいんだった。これじゃ後で染めないと駄目だな。
「了解した」
そう言って、俺は城の中へと入っていった。
「あなたが羽山様ですね。それでは謁見の間へと案内させていただきます。それと、王にお会いになるのですから、その面はお外し下さい」
「悪いが外せない理由があってな、外す事は出来ない」
案内役の爺さんに面を取るように言われたが俺は拒否した。髪の事くらいで計画を変更するわけにはいかない。
「ハァ、絶対に失礼をはたらかないと誓うというのなら許可しましょう」
爺さんがため息をつきながら言ってきたので、
「分かった」
とだけ返しておいた。
「この先が謁見の間です。くれぐれも王に失礼の無いように」
再度俺に釘を差して、爺さんは扉の奥へと消えていった。
それにしても無駄に豪華な扉だ。この扉を売るだけで何人の貧しい人が救われることか…
「こんな事考えてても時間の無駄だな」
そして俺は扉を開けて謁見の間とやらに入っていった。
「面を上げよ」
60歳を越えたくらいの白髪白髭の王にそう言われて俺は顔を王に向ける。今俺は片膝をつき右手を左胸に当てるという相手に敬意を表す格好をしている。形だけだがな。
「大臣から話は聞いた。やむを得ない事情があるそうじゃから面を着けての謁見を許そう」
「ありがとうございます」
ホントはこれっぽっちも感謝してないがな。
「今日そなたを登城させたのは、他でもない。ワシがそなたの…」
「そんな事よりセレ…連れはどこですか?」
王のお言葉を妨げるなんて!というような声が聞こえるが無視する。そもそも俺の目的はセレンの救出だ。
すると王は、よいよいと取り巻きを落ち着かせ、
「そなたの連れは無事じゃ、ほれ」
そう言って王は兵士に顎で指示した。すると兵士はセレンを連れてきた。
・・・首に剣を突き付けながら。その光景は俺の理性を吹き飛ばすには十分過ぎた。
「てめぇ、どういうつもりだ?」
「さて、やっと本題じゃ。今日そなたを登城させた理由。それはそなたをこの国のために利用することじゃ。断るとは言わせんぞ。この娘が死ぬことになるからの」
王がとやかく何か言っている間に俺はセレンとアイコンタクトをする。良かった、面をしているが通じてるようだ。
んじゃ、俺も行動を起こしますか。
「断る。兵士なんかに捕まるような役立たず、俺の手で殺してやる。闇針っ!」
そう言って俺は技を繰り出す。新技闇針は、俺の魔力を針状にして対象を貫く技だ。今回俺は闇針を2本使い、1本目を俺の手からセレンの腹の直前、2本目をセレンの背中から発動させることによってセレンに貫通させたように見せかけた。
セレンも口の中を歯で切って血を出し、如何にも吐血しましたって感じで倒れた。良い演技だ。
「な!?貴様、気でも狂ったか!?仲間を殺すとは!」
王や謁見の間に居る者全員が驚きを隠せずにざわめきだした。
「これで足を引っ張る奴もいなくなった。思いっ切りいくぜ!」
「ク、クソ!お前たち、何をしておる!サッサとこの化け物を殺さんか!」
王がそう指示すると兵士が王を守るように俺の前に立ちはだかった。
そんなに固まってると、
「黒鴉!」
格好の獲物だぜ?
俺の黒刀から出る黒い魔力の波動が広間に居る兵士たちの命を残さず刈り取る。戦闘中だからか不思議と人を殺すことに躊躇のや罪悪感は無い。
後は王だけだな。
「な!?闇魔術じゃと!?そなた、悪魔か!?」
「何の事やらさっぱりだな。そんなことより、殺す前にお前に聞きたいことがある」
「な、何じゃ?答えるから命だけはたす…」
「何で俺の本名をしってる?」
これが一番の疑問点だ。セレン以外に俺の本名を知ってる人間は居ない。セレンもそうペラペラとは喋らないだろうしな。
「ウィスニルという旅をしておる呪術師がそう予言したのじゃ」
「そいつは何て言った?」
「羽山 潤という異世界人がこの国に現れ、圧倒的な力を以てこの国を大きく変えるだろう。と言っておった」
「そうか。じゃ、次の質問だ。さっき俺の事を悪魔と言ったな?それはどういうことだ?」
「その魔力の事じゃよ。闇魔術を使える者は悪魔の血を引いている。今はもう世界に数人居るか居ないかじゃがな」
「そうか、分かった」
「じょ、情報を渡したのだから見逃してくれ!」
「そうしても良かったんだがな、お前は俺の仲間を人質にとった。これは俺の中じゃ万死に値する」
「な、何をぬけぬけと!仲間は貴様が殺したのではないか!」
「まだ分からないか。・・・セレン」
そう呼びかけるとセレンが起き上がった。
「何よ。私を置いて依頼に行っちゃった悪魔さん」
・・・大分ご機嫌斜めだ。
「そう拗ねるなよ。ちゃんと助けにも来ただろ?」
「遅いのよ!全く」
そんなやりとりを王は信じられないといった顔で見ていた。
「セレン、こいつに何かされたか?」
「私の身体をペタペタと触ってきたわ。殴り返したけど」
セレンの容姿は上の上だからな。
「そいつは良くないな。何かセレンが男に触られたってだけで腹が立ってきた。やっぱり許せないわ。じゃあな」
俺はそう言って黒刀を王に振り下ろした。
「さて、行くか。セレン?」
俺はセレンが真っ赤な顔で立ち尽くしている。何か言ったっけ?
「私がジュン以外の男に触られるとジュンは腹立たしい?」
う、そこか…何だか俺まで顔が赤くなってきた気がする。
「ま、まあな。さ、サッサと行くぞ」
俺すんげ~しどろもどろ。
いつもと態度が逆転してるな。これは良くない。
「フフッ」
そう言って小悪魔的な笑みを浮かべるセレン。お前だってある意味悪魔じゃねぇか。
そんな事を思いながら帰路につこうとしている俺たちであった。
次回予告
潤「最近セレンがツンデレじゃなくなってきてる…まぁ、素直になってくれるのは嬉しいんだけど。さて、次回は城を出てどっか行きます。そうだ!指輪わたさねぇと!」