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天羽さんの協力の甲斐もあってなんとか補習地獄は無事終わりを迎えた。
これでようやく日常に戻れる。
そう、日常に戻ってしまう。
放課後、無人の図書室で声のない時間に癒されていると嫌な声が近づいてきているのが聞こえた。
慌てて逃げようと立ち上がるも時すでに遅し。
長机を挟んで右斜め前、静かに小説を机に置く彼女はこちらと目が合うとニコリと可憐な笑みを浮かべ椅子に腰かけた。
それと同時に「座れ」とただ一言、心で俺に語り掛けた。
「(マジであいつら全員自分勝手すぎ!! あんたもそう思うでしょ!? …………おい、無視すんな)」
諦めて座った途端これである。
「……いや、というか別に誰もいないんだから普通に話せばよくないですか?」
「(バカなの? 誰かがいるかもしれないでしょ)」
「心の声は隠せないから誰かが近くにいるなら気付けますけど……」
「(私が目の前に来るまで気づかなかったのに?)」
「むっ……。……それはたしかに」
何かに集中していると聞き漏らすこともある。
今みたいな状況なら十中八九大丈夫だけど、まぁ別に無理して声に出してもらうこともない。
「(私は「天使様」なの。十中八九大丈夫だとしても、万が一にでもイメージを壊すような可能性があるなら避けないと)」
顔に思考が出ていたらしい。答えるように天羽さんは心の中でそう呟く。
ドン引きするほどに高いプロ意識だ。別に誰にやれと言われているわけでもないだろうに。
そんなに周囲に配慮してばかりの生活、俺だったらストレスで精神を病む自信がある。
「(そうね。ストレスが凄いの。だからあんたで発散するのよ)」
俺への配慮だけ欠けすぎでは?




