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放課後の図書室。
学校生活において唯一心休まる場所と言っても過言ではない。
何しろ教室から解放されるので煩わしい皮だけ完璧な化物に精神汚染されることもなくなるのだ。
ただでさえ四六時中他人の思考を聞かされて疲れた頭にあれは本当しんどい。
そのうえ家に帰ったら帰ったで今度は家族の声が表も裏も関係なく無遠慮にずかずかと入り倒す。
そんなわけで、この時間だけが俺にとっての安息の地だった。
「図書室とか初めて来たわ。天羽さんが来ないなら一生来ることなかったんだろうなー」
どうやらそれも今日までのことらしい。
ガラガラと音を立て教室の扉が開かれ、配慮なんてまるでない声量の話し声がそのまま教室に足を踏み入れた。
チラリと視線を向けるとそこにはクラスメイトの男子と化物、もとい天羽さんがいた。
「で、天羽さん。用事ってなんなの? 俺も付き合うからさくっと終わらせてカラオケ行こうよ!(やべー、二人っきりじゃん!絶対距離詰める!)」
「……うん。榊君、図書室では静かにね(うっさいな。ついでに呼吸も止めてろ)」
天羽さんはともかく男子生徒の方はとても図書室に用がある人種には見えない。
一体何がどうしてここに来たのかと不思議に思ったが交わされる会話でおおよそ理解ができた。
天羽さん、どんだけカラオケ行きたくないんだよ。諦めろよ。
呆れ半分、野次馬根性半分で状況を見守る。
ここひと月散々な目に遭わせてくれた元凶が苦しんでるの超楽しい。
「…………あ、音無君お待たせ。(おい、見てるの気付いてるし、なに考えてるか見えてるからな?)」
……すみません。俺が悪かったです。だから巻き込まないで。許して。




