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隣の天使様が今日も心の中で信じられないくらい毒吐いてて怖い  作者: 日暮キルハ


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 それにしても、サブスクという奴は本当に便利だ。

 月額いくらか支払うだけで最新作は無理としても少し時間の経った映画だったら大概見放題なんて一昔前なら考えられない。


 パチパチと泡の弾ける炭酸飲料を喉に流し込みながらその幸せを噛み締める。

 そして、クッキー缶に手を伸ばしたところで隣から声がかけられた。


「……あんたの家、家族仲いいのね」


 声に視線を向ける。

 しかし、視線が交差することはなく、彼女の視線は相変わらず少し前に話題になったアニメ映画を映すモニターに向いていた。

 それを確認して、俺もまたモニターに視線を戻して言葉を返す。


「まぁ、悪くはないと思いますよ」


 世間一般的な観点で見て、決して悪くはないと思う。

 妹はどうやら人の性格の善し悪しを俺と仲良くできるかどうかで判断しているらしいし、両親に至っては天羽さんを見て俺が美人局にかかっている可能性を考慮していたけれどそれでも悪くはないと思う。

 少なくとも両親と妹の仲はいい。


 もしかして俺だけ嫌われているのでは?


「遥ちゃんのこと、可愛がってるものね」


「……しょっちゅう喧嘩もしますけどね」


 週に一回は死ぬほどしょうもないことで揉めてる気がする。

 そんで大概両親が召喚されて俺が負ける。


 やっぱり俺だけ嫌われているのでは?


「……それは、喧嘩できるくらい仲がいいってことよ」


 その言葉は危うく聞き逃しそうになるほどに小さく、まるでひとりごとのように呟かれた。

 思わず視線を向けるも彼女は変わらず前を向いている。

 ただ、その視線は先ほどと違いモニターからは大きくずれて、伸ばした足先に向けられていた。


「……」


 あいにく俺は鈍感ではない。むしろ、こんな超能力があるのだから人の気持ちには敏感なはずだ。

 だから、なんとなく彼女の悩みの種に予想はついた。


 けれど、そこに踏み込んでいいものか。

 ……いいわけがない。

 散々失敗を重ねて、その先はよくてやぶ蛇にしかならないことはとっくに学習している。


「……家族と、何かあったんですか?」


 それでもこうして聞いてしまうあたり、どうやら俺の学習能力はよっぽど低いらしい。


「……後悔するくらいなら聞かなきゃいいのに」


「……仕方ないでしょ。天羽さん、どう見たって凹んでるんだから」


「……なにそれ。もしかして、私のこと好きなの? ごめん、音無君のこといい奴隷だとは思ってるけど恋人とは……」


「違うし、振るにしてももうちょい言葉選べ。もう俺の優しさ返して」


 モニターから目を離さずに絞り出した言葉はやはりやぶ蛇だったらしい。

 隣から聞こえる笑い声にいよいよ後悔は募るばかり。

 しかし、不意に笑い声が止んだ。


「……ありがとね」


 不思議に思って視線を向ける。

 それを待っていたかのように、彼女はまさしく天使様と呼ばれるに相応しい、けれど間違いなく天羽天音の魅力的な笑みを浮かべてそう言った。

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