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隣の天使様が今日も心の中で信じられないくらい毒吐いてて怖い  作者: 日暮キルハ


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 なつやすみ、ああなつやすみ、なつやすみ


 おっと、あまりにも夏休みが快適すぎて思わず一句読んでしまった。

 学校がないだけでここまで人生が快適になってしまう辺り、学校とかもうなくなった方がいいんじゃないかな。


 なにしろいいところが多すぎる。


 まず第一にどれだけ自堕落な生活を送っても許される。

 まだ夏休みが始まって一週間だがすでに昼夜がすっかり逆転してしまった。だが、当然そんなことでは怒られない。だって学校ないし。

 母から軽く小言は言われたが、夏休みが終わる頃にもう一回逆転させるので心配は無用だと伝えたらゴミを見るような目で見られるだけで済んだ。


 つぎに勉強から解放される。

 だって「休み」だ。勉強なんてしていい訳がない。

 なんか夏休みの課題とか訳の分からんもんが渡されたがあんなの何かしらの法に引っ掛かってるに決まってるので無視でいい。

 休日に仕事をさせたら代わりの休みを与えるか、もしくはそれに応じた給与を与えないと違法らしい。

 しかし、夏休みの課題とやらはやったところでそれに使った休みが増えるわけではない。

 つまり、違法だ。うちの学校は法に反するようなことして恥ずかしくないんか?


 最後に、一番のメリットとして煩わしい他人の心の声に悩まされることが激減する。

 学校では四六時中聞きたくもない声に延々と曝されるが、家の中なら聞こえるのもせいぜい家族のものくらい。


 そしてなにより、顔がいいだけの狂人から聞きたくもない人間関係のあれこれを聞かされることもない。

 なんか夏休みも会うとか馬鹿みたいなことを言っていたがそんなことはあり得ない。


 だって、彼女は天使様だから。

 彼女はイメージを守ることにキモいレベルのプロ意識を持っている。

 天使様は皆に優しいので夏休みに特定の男子と会うようなことはしない。

 みんながそれを期待するから彼女はその期待に応える。


 だから、いくら彼女が家を知っていようがやって来ることはないし、連絡先を知っていようが証拠が残るような連絡をとるわけもない。

 つまり、俺が不用意に外に出て偶然(・・)会ってしまうようなへまでもしない限りは無問題(モウマンタイ)というわけだ。


 怖い。自分の優秀さが怖い。


「お兄ちゃん、開けるよ」


 自身の優秀さにうち震えていると扉越しに声がかけられた。

 それと同時に扉が開く。扉の前にいたのは我が妹、(はるか)だった。

 どうやら彼女はノックという概念を知らないらしい。


「ノックくらいしなよ」


「どうせしなくたって近づいたら気付くんだからいいじゃん」


 いや?自身の優秀さにうち震えるのに忙しくて何も気付いてなかったが?

 さすがにそれを口にするのは情けなさすぎるので肩を竦めて誤魔化すに留めた。


 で、一体用件は何…………ちょっと待て。


「今日さ、天音さんうちに泊まるから。変なことして迷惑かけないでね?」


「そんな迷惑だなんて。むしろうるさくしちゃったらごめんね音無君。……夏休み、楽しんでるみたいでよかったよ」


 は?夏休みとかくそだが?今すぐ終われ。

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