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「おはよう、音無君。遅かったね(まさか本当に休むつもりだったなんて……。ご両親に連絡いれておいて正解だったわね)」
そもそもなんで俺の両親と妹の連絡先を抑えているのかを教えてほしい。
サボる気満々だったのに家族総出で家を追い出されてしまった。しかも勝手に今日の荷物の用意までされて。
「(音無の野郎……許せねえ……っ)」
「(クソッ……羨ましい……)」
「(殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す)」
「…………」
座席に着くや否や感じる嫉妬と殺意とその他諸々揃った悪感情。
その原因は改めて考えるまでもなく隣の席の美少女にあって、当の本人がそれに気づかないわけもない。
「……天羽さん、やっぱりバスの座席は自由の方がいいんじゃないですか」
「え、そうかな? ……もしかして、私の隣は嫌だった……?(バカなこと言ってないで早く座りなさいよ。あんたが遅いから朝から色々面倒だったのよ)」
にもかかわらず彼女は気づかないふりをする。
それどころかしなを作ってまるで俺の言葉のせいで傷ついたような素振りすらとって見せる。
そんなことをすればどうなるか。
「(あ、あの野郎……! 天羽さんを悲しませやがった!! 許せねえ!! 死ねっ!)」
「(天羽さんの隣の席になっておいてなんて厚かましい奴だ!! ふざけんなっ!! 俺に譲れ!! そして死ね!!)」
「(コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス)」
そりゃこうなる。
……なんでこんな酷いことするの?
俺明日からこのクラスで生きていけるか怪しくなっちゃったよ?
なんか殺戮マシーンみたいな奴いるし。
「楽しみだね、音無君(これはお願いしたのに私をおいてサボろうとした罰だから。もし逃げようとしたり距離をとろうとしたら状況はもっと悪化するかもね)」
「……そうですね。……楽しみましょうね」
とりあえず、学校行事をサボるのはもうやめておこう。
バスがのろのろと動き出すと同時に内面に目を瞑れば思わず見惚れてしまいそうなほど綺麗な笑みを浮かべて俺を脅迫する天羽さんにそう思った。




