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異世界転生ビルドマスター ~チートが無くても俺には土木がある!  作者: 孤狗


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プロローグ 召喚!大和 築という男

 はじめまして、手垢の付いた異世界転生ものですが、自分らしさをいれていく予定です。(異世界転移では?という方もいるかもしれませんが、そこはシナリオギミックがあるのでご了承ください)

 二昔前テイストなスケベポジティブ勇者と、一昔前のニッチ属性詰め合わせヒロインによるサクセスストーリーになります。お楽しみに。

 寒空の中、重機の音と威勢の良い男達の掛け声が響き渡る。


「おーい、大和(やまと)君!養生終わったか?」


 監督役の課長が声をかける。解体予定の古びた3階建てビル。組まれた足場の奥にある最上階の窓が開き、一人の若者が顔を出す。


「はい!外と中の窓際のテープ張り完了っす!搬送は終わらせてます。クレーンは午後からになりますかね?」


 軽くも良く通る高めの声。26歳らしい染めた金髪のおちゃらけた印象だが、頭の回転が速そうな早口だ。


「そうだな、飯にしよう」


「よっしゃ♪あ、念のため各部屋回って人が居ないか、忘れ物がないかまで確認しておきます!」


 こちらから追加指示を出すまでもなく、連絡をして引っ込む男に、課長は溜め息を付く。


「全く、惜しい男だな」


 若者の判断に間違いはない。少々口が軽いが、コミュ力があるという解釈ならばそれも長所だ。むしろ惜しいというのは有能さに掛かっている言葉だった。


 大和(やまと) (きずく) 26歳

 並の大学出ではあるが、在学中に簿記や一級土木施工管理技士補など様々な資格を取得し、掘り出し物の新人と思い採用してみれば、僅か数年で土木系の最高資格である一級建築士を取得するなど、極めて優秀な男。

 人材難のこの時代において、本来ならば会社の未来を担う幹部として厚遇したい存在だ。彼が強い独立系の志望を持っているとしても、それはそれで独立したてのうちは下請けとして、大成したならば逆にうちの会社を下請けとして使ってもらえば良い。

 では何が問題なのかというと、彼の()()なのだった。


「課長~」


 大和が再び顔を出す。今度は二階だ。


「何か裸のDVDあったんすけど、ここにあった前の店のモノっすかねぇ?」


 ヒラヒラと青年が剥き出しのディスクを見せる。遠目だが課長が見る限り特にラベルが貼ってあるようには見えない。


「いや、フランチャイズ元が全て回収済みだ。未回収の商品があるとは聞いてない」


 この小さなビルの二階に入っていたのはフランチャイズのレンタルアダルトビデオショップだ。雇われオーナーが失踪して潰れた、一種の事故物件である。

 しかしこのインフレと情報化が進む現代、時代遅れの店で経営難から夜逃げする者など珍しくもなく、不動産会社や警察もさっさと手続きを進め、ビルの解体となって今に至る。


「マジっすか!?」


(ほらきた)


 顔を輝かせる大和、課長は再び溜め息を付いた。


「言っておくが大和君、拾得物は警察に届け出るのが法律で決まっているぞ」


「判ってますよ、俺明日非番っすから他の拾得物と併せて持っていくっす」


「……万が一如何わしい裏ビデオだったら犯罪だからな」


 ― ギクッ ―


 二昔前のギャグ漫画かと思うくらい分かりやすく動揺する青年。


「な、何言ってるンすか!そんなヤバイもんじゃないことを確認してから、警察には出しますよ!」


「……はいはい」


 そう、彼は無類の好色家なのだ。思春期の男子ならば道端に捨てられたエロ本に興味を持つこともあるだろう。だが彼はそうした好奇心を20代半ばになっても棄ててはいない。モテ願望が強く給料もキャバクラや風俗、合コンにつぎ込んでいる。

 彼程のスペックと持ち前のコミュ力があれば、女性との交際相手には困らなそうではあるが、なろうだがなんだかとかいうオタク小説趣味も相まって、中々上手く行かないようだ。

 

(あの性癖を直さなければ仕事でもいつかは大火傷をするな)


 それが、会社が彼を()()()と評価するポイントだった。


~~~~~~

 その日の夕方


「~~~♪」


 作業服にヘルメット、腰には工具ベルトに各種道具を付けたまま、大和はボロアパートに帰宅する。

 ゴキゲンに鼻唄を歌いながら靴を脱ぎ捨て、部屋のDVDデッキとテレビの電源を入れる。所謂独身男性の四畳半、部屋にはモノが散乱しており、本棚には建築系の本と異世界モノの小説が混在して乱雑に並べられている。

 そんな彼のチグハグさを象徴するような部屋の真ん中で、僅かなスペースに胡座をかたいた青年は、持ってきたディスクを挿入する。


「違えば明日落とし物として出すだけだし、中身あったらダビングして出せば良いしな~」


 勿論裏系だったらダビングした上で拾った方は会社に提出して破壊か警察に届け出せば良い。優秀な頭脳をくだらない浅知恵に使いながら、大和は再生ボタンを押した。


― ザザザザ…… ― 

 

 何かデータは入っているらしく、画面にノイズが走る。

 

「さあさあ、お楽しみお楽しみ~」


 ワクワクが更に高まる大和。ここまでくればエロじゃなくとも、人並みの好奇心でも気にはなるというものだ。


― ……すい……せん ―


「ん?」


 何か声が聞こえる。


― ……貴方のザザ……が必要……たす……て ―


 目についたのは金色の線、それが長い髪だと気付いた時、ノイズの向こうに女性の影が見える。


「えっ……まじ?」


 思わず固まる大和。だが興奮する訳じゃない。ノイズが酷すぎて映像の女性の顔が見えないこともあるが、何か悲壮さや不穏さを感じたのだ。


― その……に、貴方には……死んで……貰い……す ―


「ん?今何て?」


 聞き間違いだろうか、『貴方には死んで貰います』と聞こえた気がする。


― 術……を……見たら……貴方はてん… ―


 最後に一際強い光の後に女性の姿は消える。その後は六芒星、瞳、見たことのない景色や文字……猛烈な勢いでサブリミナル映像が映し出されていく。


「こ、これってもしかして……」


 大和は幼少期のトラウマがよみがえる。その映像を見たものは一定期間後に死に至るという。田舎の両親と見た古い映画を観て、暫くはトイレに行けなくなった。


― ……者よ、我が元へ! ―


 クリアに聞こえた女の声と共に、テレビモニターの奥に空間が拡がる。ブラックホールを思わせる暗闇の奥が渦巻き、中から光の腕が伸びていく。


「の、呪いのビデオだぁあああ!」


 煩悩など消し飛び、大和は反射的に立ち上がり玄関に逃げ出す。靴を引っ付かんで玄関に手を伸ばすが……


 ガッ! 


 ドアノブに触れる寸前で身体が止まる。恐怖に駆られながらも後ろを振り向くと、テレビから伸びた光る腕が自分の足首を掴んでいた。


「ひっ……」


 そのまま猛烈な勢いで腕はテレビに戻り、青年の身体も引きずり込まれていく。


「助けてぇぇぇ!」


 この日、26歳の建設会社社員 大和 築 という青年はこの世界から姿を消した。彼を知るものは心配や悲嘆に暮れる一方で、異性関係のルーズさから、トラブルを抱えていたのだろうと誰もが納得してしまっていた。


~~~~~~


 ― ……て ―


 耳元で声が聞こえる。綺麗で済んだ声質だが、囁くような微かな声。


― 起きて、早く起きてください ―


 妙な話だ。起きて欲しいなら大きな声で呼ぶべきだ。何故囁くように呼ぶのか。


(あれ?そもそも俺寝てたっけ?)


 青年は寝ながら思考する。自分は独り身だ。起こしてくれるかわいい恋人などはいない。そもそも家に帰ってまだ食事も摂っては……


(そうだ!俺貞○に襲われて!)


「おわあっ……むぐ!?」


「お願い!静かに!」


 悲鳴を上げようとしながら誰かに口を塞がれる。肉体労働をしたことがなさそうな、柔らかな指と掌が唇に当たる。


「もが(君は……)」


 覚醒し目を見開く。青年の前にいたのは、長い金髪の女性だった。年の頃は20代半ば、自分より少し年下かもしれないと思った。


「む……君は……」


 女の手を引き剥がし、小声で尋ねる。


「君、テレビの奥にいた人?」


「てれび……とはよく知りませんが、私が召喚者です」


 言葉は日本語で聴こえるのだが、召喚者という単語は良く判らない。何となくファンタジーの召喚魔法的な響きに聞こえるが……


「もしかして、俺を異世界に招待した……なんてな」


 冗談だろと頭をかく。「なろう系」は学生時代から大好きなのだが、自分の好みの女性達からはあんまり共感を得られないため、何となく敬遠するそぶりをしてしまう。

 だが目の前の女は、申し訳なさそうに首肯する。


「招待というか、そうですね。貴方様から見たら異世界に無理矢理呼び出したのは私です」


「マジで!?」


 大声を出しそうになって慌てて口をつぐむ。今更だが辺りを見渡すと、鉄格子に苔むした石畳の床、石材を切り出したレンガの壁で作られた地下牢のような場所だ。現代日本でこんな建築物があるわけない。


「すげー、俺異世界に転移しちゃったよ」


 声を静かに、だがかなり興奮する大和。女の子も好きだがロマンも大好きだ。


「転移?その……説明不足でしたらすみません」


 何故だが更に泣きそうになりながら女は謝罪する。顔立ちはかなり美人なのに何か辛気くささが勝りそうな娘だ。


「貴方様は『勇者』として、私が転生させました」


「へ?転生?」


 青年は考え込む。自分の読んでいた小説の定義では、『転移』と『転生』の違いは確か……


「改めて御伝えします。……貴方様は、私を助けていただくために、一度死んで転生してもらいました。『勇者』として」


「……え」


 時が止まる。勇者、転生、いかにも心踊る言葉に付随する単語の意味を冷静に考える。死ぬ、死んで転生、勇者となるために死んで転生……


「え?俺、もう死んでるの?」


 すっとんきょうな声を上げ、大和 築……否、勇者ヤマトの冒険は、間抜けな始まりを迎えるのだった。

 御読了ありがとう御座いました。当面はチアプログラムに合わせて週に一度更新致します。

 気に入っていただけましたらご意見、ご感想、評価、ブックマークをよろしくお願い致します。

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