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Named















『なんてこった…』




『こんなことが…隊長…』






「………クソが」




俺は視線の先を浮遊する部下達だったものを見てそう毒づいた。




部下達は6機を残して全滅。ハクバ隊も残っているシグナルは4つしかない。




なぜこんなことになっているのか。それを説明するには、少し時を遡る必要がある───




**************************************





俺とツルギ2が敵隊長機と思われる角つきのtempestを落とした後、俺達はハクバ隊と協力して順調に敵の数を減らしていった。




『ツルギ3、左上方に敵機!』『分かってる!』




『クソ、抜けられた!ハクバ4、5に敵機2機向かう!』『任せろ、俺が堕とす!』




『ハクバ14、17そっちに敵機3追い込んだぞ!見えるか!?』『あぁ、捕捉したーーー破壊する』




通信で怒号が飛び交い、あちこちで破壊された敵機体の光が瞬いている。




(敵tempest部隊の約半数はすでに破壊できた。敵隊長機を撃墜できたのもあるが、何よりハクバ隊の火力支援が大きいな…ヒビヤ艦隊の方も状況は悪くない。このまま耐えきれれば…)




そんな時だ、突如敵部隊が撤収するような動きを見せ始めたのは。




「なんだ?なぜ引いて行った?」




『分かりません、艦砲射撃は相変わらず艦隊に向いているようで『各パイロットに通達!敵未確認HFに動きあり。敵機は巨大なバズーカ系武装を構えている模様。直ちに回避行動をとれ!ツルギ9以降の機は艦隊のシールド内に!何が来るかわからんぞ!』っ隊長!』




今考えれば、ただ運が良かっただけなのかもしれない。たまたま近くにあった数百メートル級の小惑星が盾になったおかげで俺の周囲にいた部下達は助かった…が、次の瞬間に起こった巨大な爆発により、展開していた他の機体は破壊されてしまった…








****************







(クソ、どうする!?)




部隊は壊滅、艦隊を守っていた部下達もほとんどやられてしまった。決して未確認HFをノーマークにしていたわけではない、明らかにヤバそうな奴らだったからな。




しかし機体の警報はならず、ソウルキーパーもおそらく目視確認で警告を出したのだろう。でなければもっと早くに警告が飛んできていたはずだ。




(いや、今はそんなことを考えていても仕方ない!やれることをやるしか…)




だが、悪夢は未だ終わらない




『っ!!敵未確認HFにエンブレムを確認!照合完了、コイツは…』




「……ハハっ、嘘だろ…?」




送られてきた情報に、俺は笑うしかなかった。




『敵未確認HFは、ロイヤル航宙軍のNamed部隊、Nemesisだ…』






〈Named〉それは精鋭の代名詞であり、各国が広告塔として世界に発表しているエースパイロット達だ。有名なエースパイロットと言うものはその存在だけで敵に圧力をかけ、味方を鼓舞することができる。それこそ白虎が良い例だな、彼が戦場に出るだけで味方の士気は爆上がり、敵は恐れ慄いて逃げ出す奴なんかもでてくる有様だ。




そして彼らは例外なく、圧倒的な強さを持っている。




1部隊で戦略目標を達成した…




数機の殿で数百単位の敵を抑えた…




単機で戦争の結果を左右した…




などなど、公式非公式問わず多数の目を疑うような記録が存在する。





そんな彼らが、今、俺たちに狙いを定めている。





大勢の部下を失ったことと、Namedと相対しているという事実に、俺は半ば呆然としながら連中がバズーカを投げ捨てこちらに向かってくるのを眺めていた。





『隊長!しっかりしてください!』




『ツルギ1、指示をお願いします!』





だがそんな俺を、部下達の声が正気に戻す。





(っ!!クソ、何やってんだ、俺は隊長だろ!)




俺は頭を振ると各機に通信を行う。




「各機陣形構築!ハクバ隊!合わせられるか!?」




『任せてくれ!これでも君達との付き合いは長い!』




「なら良い、後ろは頼んだ!よし各機、〈Anti-Named FormationF56〉!」




俺達のようなただのパイロットがNamedに勝つには連携をとって戦うしかないが、ただの連携じゃ意味がない。そこで俺が作成したのが〈Anti-Named Formation〉という戦闘プランだ。連携をとる複数の機が攻撃、防御、欺瞞など、それぞれ一つの動きに集中して敵Namedに対応する。1機では敵わなくても、部隊全体が1つの機体として完璧に動ければ勝機はある。




(だが問題は…)




しかし、この戦闘プランも万能ではない。相手Namedが複数機だった場合、格段に対応は難しくなる。ただでさえこちらの数が少なくなっている状況で、どこまでやれるか。




(いや、こんな状況も訓練のパターンにあっただろう!なんのために数十年訓練してきたと思ってるんだ!)




震える手足を気持ちで抑えつけ、俺は向かってくるNemesis隊を睨む。





「よし、じゃあ行くぞ!」









*************************************************






ロイヤル航宙軍:第7試験戦闘飛行隊 





通称、Nemesis







その巨大な人型は自らが放った兵器が莫大なエネルギーと共に、敵機を葬り去る様を記録していた。そして記録した情報を整理しつつパイロットに提示した。




『ふむ、新型制圧弾頭の性能は悪くないな。だが小惑星の裏にいる敵機には効果がなかったか』




『仕方ありません、連中の盾になった小惑星は数百m級です。対艦兵器でもないと破壊は出来ないでしょう』




『それより、この[MRJS](機械的認識妨害システム)はかなり優秀なようです。確実に敵のセンサーは反応を示していませんでした。最後は目視で確認されてしまったようですが…』





『それでもかなりの効果は期待できる、か。どちらにしろ、大量生産はかなり先になるだろう』




そんな会話を聞きながら、人型は通信を受け取る。




『そうですね…っ隊長、司令部より敵部隊を殲滅せよとの指令です』




『来たようだな…では行こう』




そう告げて自らを操作するパイロットに従い、人型は手に持っていたバズーカを投棄、スラスターを全開にし敵へと向かう。





ある程度距離を詰めた時、人型は敵機に動きがあるのを認識した。その情報を即座にパイロットに伝え、自身は各部センサーで敵機の挙動の一切を逃さないことに集中する。






『っ隊長、敵部隊に動きが』





「…多くの味方を失い、Namedの我々と相対しても怖気ついていない…なかなか、楽しめそうじゃないか』




『そうですね、では手筈どうりに?』




『あぁ、敵部隊は私が相手をする。お前達は敵艦隊を頼むぞ』




『『Roger』』






(…さて、どこまで私を楽しませてくれる、〈草薙剣〉の諸君?)





神経接続で繋がっている人型は、主のそんな思考を読み取り、何も感じることはなくただパイロットの操作に従うのだった―――――













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