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合流、そして疑問













「さて、俺も始めさせてもらうぞ!」






そう言うが早いか、のんびり部下をビームライフルで狙っている1機のtempestをすれ違いざまに両断、続けて切り掛かってきた1機を蹴り飛ばして手に持たせた粒子砲で破壊し、自身へ向けられたの射線軸から離れた。




俺が離れたほんの数秒後に、さっきまで居た場所をビームが通り過ぎ、俺はスラスターを吹かせたまま撃ってきた機体を捉える。




(敵の王国製MIビームライフルの再充填時間は1.56秒、俺がやつに辿り着くまで約1.4秒…いけるっ!)




限りなく短い思考と判断の後、俺は全力でその敵へ突撃、砲口に集まるエネルギーを認識しつつもスピードは緩めない。ここで緩めたら死ぬことがわかっているからな。




『なっ!?突っ込んで「遅せぇよ!」』




砲口に充填されたエネルギーが放たれる直前、スラスターを全力で前方に吹かせると共に、俺は敵機体の懐に飛び込み腕部内臓の高速衝撃砲をゼロ距離で叩き込んで黙らせる。




だが、そこで足を止めたのが良くなかった。




『隊長、後方注意!』




「っ!?あっぶねぇ!!」




いつの間にか接近していた1機のtempestが脚部ブレードで切りかかってきたのだ。




慌てて俺は距離を取り、その敵機をツルギ2が粒子砲で仕留める。




「すまん!助かった!」




『構いませんが、気を付けて下さいね!』




「あぁ!各機、しっかり連携をとって戦えよ!さもないと俺みたいになるぞ!」




『分かってますよ!』




『隊長みたいなヘマはしませんって!』




(お前らなぁ…)




まったくヒドイ言われようだ。だが、俺の指示を聞いて、俺達が訓練時間の殆どをつぎ込んでいる連携戦闘で次々と敵機を仕留めていくのを見ると、結局何も言えなくなる。




「俺も負けてられないなっと…よし、ツルギ2、俺達も行くぞ」




『了解』




ツルギ2とそう通信を交わし、スラスターを吹かせてもっとも近い敵機に向かう。




俺はシールドを構えて突撃し、ツルギ2はcruise形態へと変形し迂回して接近、俺に気を取られていた敵機はツルギ2に気づけず粒子砲に貫かれて爆散した。





次に俺達は、先程俺が放った粒子砲に被弾し中破したtempestに目を付けた。




機体のバックパックとスタビライザー、さらには右脚を失い、こちら狙うのもままならないだろうが必死にビームライフルを放ってくる。




もちろん俺達が当たることはないし、中破状態まで追い込まれたこの機体の脅威度は、実際あまり高くない。だが、まだ交戦の意思が残っている以上見逃すことはできない。




(悪いな)




心の中で相手のパイロットに謝ると、ツルギ2に火線が向いている隙に背後に回り込みせめてもの情けでコックピットを一撃で貫く。そのままビームソードを横凪に振るうと周囲に目を向けた。




(敵が立て直し始めたな…)




突然の急襲に動揺し碌な抵抗も出来ていなかった敵tempest部隊だが、時間が経つにつれて立て直し始めたようだ。




事実、先程までは俺達に翻弄されるばかりだったものがお互いの死角を埋め合い、一撃離脱を行う部下達にカウンターを行うようになっていた。それによってツルギ隊に被撃墜こそないものの、損傷した機体がいくつか出てしまっている。




さらに俺の機体にある頭部のブレードアンテナを見て、指揮官機を優先して落とそうとしてくるtempestがこちらを囲う動きを見せているため、俺自身も危機にあると言っていいだろう。しかし、彼らは本来の目的であったハクバ隊のことを今も認識しているのだろうか?




刹那、小惑星に隠れながら俺に接近していた1機のtempestが一条の光に包まれて消滅する。




「遅いぞ〔タクマ〕、いや、ハクバ1」




『そりゃ悪かったね、君らが敵部隊の中をうろちょろするせいで狙えなかったなんて、申し訳なくてとても言えないな。そもそも───』




「…相変わらずだなお前は」




コイツは俺達に救われた自覚があるのか?開口一番嫌味を言ってくるとは思わなかった。




(なまじ腕があるだけ…まったく)





『───だからね。それで?ここから僕らはどうすれば良い?』




「急に真剣な声音になるんじゃない」




驚くだろうが。







**********************************************







ロイヤル連合王国航宙軍:第673戦術戦闘飛行隊






俺が隊長を務めるこの部隊は、敵部隊に翻弄されて壊滅しつつあった。






『クソっ、なんだコイツ!』





『この敵機共…決して型破りな動きをしているわけじゃないのに、なんで当たらない!?』





『ダメだ!イジェクト、イジェクt』





(…また1機やられたか!)





敵のタンチョウ部隊を奇襲、殲滅する筈だった俺たちが、たった8機のヤブサメに介入されただけで逆に殲滅されている。これもひとえに、この任務が余裕で終わるだろうという慢心のせいだ。





正直に言おう、俺たちが総司令部から敵の情報を伝えられた時に最初に抱いた感情は、同情と嘲り、そしてわずかな違和感だった。





こちらは地方統合艦隊クラス、敵はせいぜい巡洋艦と駆逐艦が数隻づつ。勝敗など最初から決まっていたも同然。だが、その程度の艦隊になぜ俺達を使うのか、巡察部隊ではダメなのか、そう疑問を持った隊員も当然多かった。そして新たに出された命令────




〘敵艦隊を拿捕せよ〙




当然だが、敵を拿捕することはいくら戦力差があると言っても、撃破することより数倍難しい。それを敢えて命令してきたと言うことは、捕捉した敵艦隊になにかあるということ。




そして何より司令部からの命令が出た後艦隊に乗り込んできた彼らの存在…




なぜ〈Named部隊〉である彼らがこの程度の任務に出張って来たのだろうか?





そしてその疑問はある意味解消されたと思っていい。俺達が侮っていた敵艦隊は、最精鋭レベルの練度を有していたからだ。




まず艦隊各艦のシールドを融合させて巡洋艦以下数隻で戦艦の砲撃を弾くなど聞いたことがないし、小惑星を利用した回避操艦も見事だ。事実、俺達の艦隊は拿捕しなければならないということも相まって、攻めあぐねてしまっている。




戦艦含む数十隻規模の艦隊が数隻の艦隊に対してだ。




そして敵艦載機部隊…こちらは理解すら出来ない。大和連邦が誇るエース、〘白虎〙の機動とは全く異なる、しかし異次元の機動。




一度見た白虎の機動はまさしく一騎当千という言葉がふさわしかった。ビームを放たれてから躱し、鍔迫り合いになろうものなら巧みな剣裁きで達磨にされてしまう。




だが、まだ理解はできた。白虎の機動は人並み外れた反応速度と空間認識能力、そして圧倒的な技量と才能に裏打ちされたものだと。




対してだ。今俺達が対峙している敵機はどうだ?決して圧倒的な技量を持っているわけではないのになぜ撃墜できない?なぜ機数で劣っているのにお互いをカバー出来る?なぜ彼らの連携には一切のブレがない?




訳がわからない。こちらが複数で囲っていたはずなのに気がついたら囲まれている。




(…また1機消えたか。タンチョウ部隊が合流してきたのか?敵艦隊に向かった部隊はどうなった?生き残っている機体は何機だ…っ!来たか!)




頭にブレードアンテナがあり、敵隊長機と思われるヤブサメが小惑星を巧みに使い接近してきた。だが、ところどころ直線的になる動きもあり、動きの予想が出来ないわけじゃない。だと言うのに…




(なぜ当たらん!)




放ったビームはことごとく躱され、いや、そもそも放った瞬間に射線に敵機が居ないと言った方が正しいか。ともかく、ビームは1発も当たることなく漆黒の宇宙空間へと消えていった。




呆然とする暇もなく、敵機がビームソードを引き抜いて切りかかってくる。それに対応するためこちらも抜刀すると、背部センサーが警報を発した。




「何!?後ろ…」




次の瞬間、俺を凄まじい衝撃が襲いコックピットの計器が殆どオフラインになる。




(…正面から1機が突撃、背後から接近したもう1機が対象を仕留める…シンプルだがそれゆえに異様だ。どうやって俺以外の機体にも気付かれないように接近した?囮となる機体も他の敵機に狙われることを考えていないのか?)




(分からない、分からない、分からない)




自身が撃墜されたと言うのに、俺はただそれだけを考えていた。





彼らから通信が入るまでは。






『……戦闘中の各機、聞こえるか、こちら〈Nemesis〉。聞こえているなら、直ちに指定する範囲より離脱しろ。指示に従わなかった場合の安全は保証しない。10、9…』




「…なんだってんだ?今更でしゃばって来やがって。チッ、各機!交戦を中断し、Nemesisの指示に従え!」




Nemesisの指示に困惑していた部下達だが、俺の指示ならばと交戦を中断し離脱していく。




(俺は…範囲のギリギリ外か)




仮に範囲内だったとしても、動けないから意味ないんだがな。




そんなことを思っていると、Nemesisのカウントが終わり…メインカメラがダウンするほどの強烈な閃光が、敵部隊の方角で発生した──────














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