旅立ち
中高学年向け(9~12歳)にしているので小学校3~6年生で習う漢字にはふりがなをふってあります。
中学で習う漢字はひらがなになっています。
あらかじめご了承ください。
「ランジュ、誕生日おめでとう。
そなたも大人になった。
しきたりに従い、旅に出よ」
そう言って父であるロアージュが持っていた箱を開けます。
中にはペンダントとかぎが入っていました。
「さあ、これを。この里の人間だというあかしの
ペンダントと、聖園のとびらを開けるかぎだ。
受け取なさい」
ランジュが手に取ると
むらさきの石がはめこまれているペンダントと
水色のかぎがきらりとひかり、すぐに消えました。
「それとこれがこの世界の地図。
旅は大変だ。
無理はせず、体に気を付けて。
国に着いたら必ず連らくはするのだぞ?」
「行ってらっしゃいランジュ」
「はいお父さま、お母さま、行ってまいります」
家を出て、リュックを背負い歩き出します。
「ランジュさま〜!」
走ってきたのは父の部下の息子であるハルト。
「お誕生日おめでとうございます!
もう旅に出るのですか?」
「うん、そうよ。ハルトは何をしていたの?」
「ぼくはいのりをささげに行く所です。もう少しで終わりますけれど」
「ああ、ハルトは来月誕生日だものね。
きちんと行うのよ」
「はい!ランジュ様も気を付けて」
わたしが住むこの里では、大人になると同時に旅に出て
世界を見て回る、というしきたりがあります。
それは住んでいる場所が山の中にあり、
里長がみとめた人達としか交流していないから。外の世界を旅する事で、経験を積ませることを目的として、大人になった者は外に出ます。
なんで山の中に住んでいるのか。
それは私たちが変わった能力を持っているから。
それは『幻獣』とよばれる、強大な力を持つ伝説の生き物の声を聞き、その力を借りて使う事ができる、という能力。
この世界にはドラゴンやユニコーン、フェニックスなどたくさんの幻獣がいて、ふつうの人は声を聞く、力を借りる事はできませんが、わたしたちはそれが出来ます。
昔はその力を使い、いろいろな王国に仕えた時もありましたが、当時の王様達が力を悪いことに使う、自分達で独りじめしようとしたため幻獣達がおこり、世界をほろぼそうとした(ほろぼした国もある)ため、先祖様がなだめ、力を悪用されないようにと今の場所に住みました。
わたしは里長のむすめで次の里長。
次の里長になる者は、聖園という聖獣が暮らす場所へ行き、あいさつをしなければいけません。
歩き続けると、里と外を分ける結界がある門まで来ました。
この結界は、里長の許可が無い人間が入ろうとするのをはばむもので、
ここからでしか外に出られません。
(うう〜ドキドキする。でも楽しみ。商人から聞いていた物事が、
この目で見られるんだから)
わたしはふり返り、おじぎをすると、外へと歩き出しました。
『む?ロアージュのむすめが旅に出たの。もうそんな年ごろだったか?』
『あら、時が経つのは早いわねぇ』
『ここに来るのはだいぶ先だねー。あちこち行かなきゃならないなずだし』
『だいぶ先!?ってかあっちこっち行くとか長のむすめはメンドクセーな。
国のトップにあいさつだのしないで真っすぐコッチ来ればいいのによ』
『あーあーフェンリルちゃんは相い変わらずねー』
『ちゃん付けすんのヤメロっつってんだろーがこの馬モドキ!!』
『馬モドキってなによこの大食い馬鹿オオカミ!!!』
『これ、けんかするな。なーにすぐ会える。わしらにとっては時間なんぞあっという間じゃ。
ゆるりと待とうではないか』
『はーい』『そうねぇ、ゆーっくり待ちましょ♪』『チッ、しゃーねぇな』
『会うのを楽しみにしておるぞ。ランジュ』
読んでいただきありがとうございます。いかかでしたか。
少し長かったかな?
オマケで幻獣にほろぼされた国のお話書きます。