最後の言葉
大きくて傷だらけのあなたの手が大好きだった
その手で頭を撫でられるのが楽しみだった
戦いの中で目にする
あなたの大きな背中をいつも見つめて
あなたの様に強くなりたかった
強くなっりたかったのに
私があの日
任務を失敗しなければ……
君という存在を失うことが
僕にとって
とても怖いことなんだということを
わかってほしい
ずっと傍にいることこそ
叶いはしなかったが
君を守ることはできる
だから死に急がないで
今を楽しく生きてくれ
辛いことも
悲しいことも
たくさんあるけれど
楽しいことも
愛にあふれることも
それ以上にあることを
忘れてはいけないよ?
大丈夫
僕がいなくても
君のその優しさに気づいて
君の内側にある愛に気づいて
君を大切にしてくれる人が
きっといるから
泣くことなんかないさ
先が怖いのはみんな同じだ
でも
怖いことばかりじゃないだろう?
だからほら
笑って
笑顔見せて
僕を送り出してくれ
遠い未来で必ず会えるから
約束だ
あなたの傷だらけの大きな手は
少し震えながら
私の頬を包んで
あふれ出す涙を
親指でそっと拭い
最後の言葉を口にした後
ゆっくりとその手は力なく地面へ向かう
その手を抱きしめ
私は自分の愚かさと
力の無さを悔いて泣いた