超高齢化社会なのに「訪問介護報酬」が削られる「怪」を紐解く
筆者:
本エッセイをクリックしていただき誠に光栄です。
「団塊世代」が後期高齢者になる2025年まであと1年と迫る中、
介護報酬改定でなんと「訪問介護」の報酬が2~3%減額させられるという怪奇現象について僕の考察を紹介したいと思います。
(介護報酬全体では1.59%の増額)
質問者:
それは確かに不思議な現象ですね……。
その前に今の日本の介護事業の現状を整理してもらえますか?
◇介護はキツイ上に給料は低い
筆者:
令和4年の国税庁民間給与実態統計調査結果によりますと、
全業種平均が年収457万。ですが、介護は年収408万となっています。
これは女性の介護事業者の数が多いこととパートタイマーが多いこと、そしてヘルパーの高齢化が影響しています。
(男性の平均給与はすべての業種の平均と大差がないため)
本来であれば力仕事が多い介護の業務は男性の方が向いていると思えるのですが、
実情は業務の内容と比べて給与が少なく、
正社員の枠もあまりないためにパートタイマーが中心になっているのが実情です。
特に激務のヘルパーの人材不足はとりわけ深刻で、「絶滅危惧種」とすら言われているほどです。
有効求人倍率は22年度では15.53倍に達したほどでした。
資格を取らなくてはいけない上に激務で薄給では成り手がいなくて当たり前です。
若い世代が入らず、60代や70代のヘルパーが現場を支える「老々介護」状態なのが介護事業の実態です。
質問者:
やっぱり体感通り給料のわりに激務ということなんですね……。
筆者:
政府のそれに対する対応は昨年の補正予算案に伴い2024年2月から介護職員1人あたり月6000円の賃上げという何とも寂しい結果でした。
そして今回の介護報酬改定(3年に1回)は平均で2%を切る状況です。
2023年の春闘の平均賃上げ率は3.69%だったのに対し、介護職員は1.42%と大企業においても大きく下回ったのが現状だったので、
どう見ても企業努力では厳しく、数万円~10万円単位で一人当たりで政府が大きく補助しなければ人は集まらない状況は続くでしょう。
今回の改定を“過去最高の引き上げ”としていますが、今までがあまりにも酷すぎただけで、
この程度のレベルで本当に抜本的な改革をやる気があるのか? と言いたくなってしまいます。
質問者:
実際に高齢化社会ですからどんどん介護される人は増える一方だと思いますからね……。
筆者:
現在の人口推移のまま行けば、2040年台が高齢者割合のピークを迎えるという予想です。
つまり、それまで20年拡大し続ける産業と言えます。
2040年に必要と見込まれる医療・福祉就業者数は1,070万人(現在は900万人台半ばで100万人足りず)ですが、20~64歳人口は今後20年間で約1,400万人減少する見込みです。
医療者を含めての数字ですから介護従事者はもっと不足している割合は深刻でしょう。
そして激務であることを考えるとお金の手当てぐらい無くてはお話にならないと思います。
ちなみに僕はいくらもらっても“もやし体型”なんでできるものではありません(笑)。
◇中小の「訪問介護」は消えてなくなる
質問者:
しかし、どうして訪問介護はむしろ報酬が下がってしまったのでしょうか?
訪問介護だけ凄く好景気とかそういうことはあるんですか?
筆者:
東京商工リサーチの調べでは、23年の訪問介護事業者の倒産件数は、調査開始以降で最多を更新し67件となっています。
2023年の「老人福祉・介護事業」全体の倒産は122件で過去2番目、
倒産以外でも事業を停止した介護事業者の休廃業・解散が510件と過去最多、
とかなり悲惨なことになっています。
質問者:
それじゃ余計に訪問介護報酬が下がった意味がわかりません……。
筆者:
訪問介護報酬のマイナス改定の大きな根拠は、厚生労働省の「介護事業経営実態調査」のようです。
訪問介護の収支差率(利益率)は22年度決算で7.8%と介護サービス平均の2.4%を大きく上回ったことが根拠のようです。
厚生労働省は「収支差率の全体を眺め、調整した」と説明しています。
ただ、潰れているところが最多なのを鑑みると、儲かっている(搾取している)ところと中小との格差が激しいことを示唆していると思うんです。
大体、人材不足の業界なのに利益率を低い方に調整するのが狂っていると思います。
利益率が高いのは大規模な施設のみで中小零細の会社は潰れていくでしょうね。
質問者:
おっしゃる通り、人材不足の業界で何をやっているのだと……。
筆者:
介護報酬改定は事業者と処遇改善のために使われているから関係ないのでは? というご意見もあると思うのですが、それにしたって介護報酬を減額してしまえば従業員の給料減額につながる可能性は非常に高いです。
せめて代替えとして介護従業員の社会保険料減税などとセットで行い、従業員の可処分所得を増やす方向性にもっていくべきですが当然そんな補填はありません。
質問者:
一体何の意図があってこんな的外れな政策を展開しているんですか?
◇「訪問介護」が無くなってハッピーになる「高級特養」
筆者:
僕は2点ポイントがあると思っています。
一つは中小事業者を淘汰する点です。
訪問介護事業者の7割弱が20人以下の従業員数、3割が10人未満の従業員数となっていますので、
収入における補助の比率が高いためこの減額はとても厳しいと思います。
代わって事業規模が大きいところはちょっと痛みがあっても耐えられますがし、
むしろ中小が消えてくれた方が寡占状態になれるというメリットがあります。
寡占になれば値上げも容易になり、彼らの利益率はまた上がるでしょう。
質問者:
さらに中小の倒産件数は増えそうですね……。
筆者:
政府は基本的に献金をしてくれる大規模のお味方ですからね。
2点目は「高級特養施設優遇政策」です。
実を言いますと特養ホームの待機者は年間27万人もいるのですが、
ほとんど全てが年金で支払えるラインの月額9万円以下の従来型特養ホームを待っている方々なのです。
月15万以上の高級特養(いわゆる個室と共有スペースを組み合わせたユニット型)はむしろ空きがあるのです。
政令都市の運営している特養なんて時期次第ですが5割前後の空き率のところもあるようです。
そんな中、訪問介護を呼ぶことが出来る比較的余裕がある人達が、在宅での介護が無くなったらどうなるのか?
と言いますと、待つ人数が多い格安の従来型特養よりも「高級特養」を選ぶことになると思うんです。
2001年からの法改正でこの「高級特養」ばかりを国は推進していますしね。
※ただし要介護1や2では入れる場合もあるが3以上でなければ原則として特養には入れないです。
質問者:
なるほど、訪問介護事業を潰して「高級特養」に入れようという算段なんですね……。
筆者:
正直、国民の将来や在宅介護を受けたい希望者について微塵も考えておらず、
「利権構造」がここでも見え隠れしてしまっているわけです。
質問者:
しかし、介護施設そのものが「補助金漬け」「補助金ビジネス」
と言われていると思うのですがそれについてはどう思われますか?
筆者:
日本では年金の金額も低いために介護にそんなにお金をかけられる人もいないので、
介護事業は低報酬、低賃金になりがちです。
(一部の高齢者だけがお金を溜め込んでいる)
その上で、基本的に体を酷使する介護に対して給料が低いのにやろうとする人がそんなに多いとは思いません。
このように「辛くて安い」と「やりがい」や「ボランティア精神」だけでは持ちません。
このような必須である介護ビジネスに対して補助金を投入することは至極真っ当なことだと僕は思いますけどね。
ただ、現状「高級特養」にお金が多く投入されているのもまた事実でして、
そんな「上級国民御用達」みたいな施設を支援するのではなく、需要が無いところは統廃合されるべきです。
質問者:
年金が少ないところがここで影響しているわけですか……。
筆者:
むしろ、需要が今後も見込まれる高齢者が支払う金額が月額6万円以下の従来型特養とそこで働く人々を充実させるべきなのです。
従来型特養で採算が合わなければ、押し売り介護など不正の温床となっている「囲い込み型高齢者住宅」や法令違反施設である「無届施設」などブラックな施設も増えていきます。
無届施設は特にストレス解消のために介護従事者による高齢者の虐待事件が起きても行政が発見できないため深刻さが際立ちます。
しかし、無届施設はより安いので違法だと分かっていても利用者がいるのが実態なのです。
(2021年6月末時点では未届け老人ホームは656件で老人ホーム全体の中の4.1%)
質問者:
特養に入れないぐらいなら違法でも良いということなのでしょうね……。
筆者:
恐らくはそういう感覚だと思います。
このように、補助金を出していることに問題があるのではなく、
資源の分配の仕方が間違っているというのが僕の分析です。
淘汰されるべきは訪問介護ではなく「余剰な高級特養」です。
また、要介護3以上でなければ基本的には特養に入れないので、それ以下の要介護の方にとっての訪問介護は必須でしょう。
「無届施設」を壊滅させるぐらい従来型と訪問介護を補助するべきなのです。
質問者:
なるほど、支援している方向性が間違っているということですか……。
筆者:
今の日本政府は“建前”を持ち込んで利権をむさぼる集団があまりにも多いです。
これは介護の分野だけではなくエネルギー産業、少子化対策、宇宙産業などありとあらゆる分野で巻き起こっています。
不自然なところに補助金を出して日本がどんどん歪んでいっていると僕は考えています。
◇「介護を受けない」人間になるべし
質問者:
とは言え、このままでは訪問介護が今後無くなっていく状況を考えると、
私たちはどうすれば良いんでしょうか?
私たち世代の老後や介護のことを考えるととても不安です……。
高級特養に入れるだけ稼げるとも思えませんし……。
筆者:
凄く悲しいことなんですけど、「公助にも身内にもなるべく頼らない」ことが大事だと思います。
公的年金はマクロ経済スライドにより減額が見込まれていますし、
僕より下の世代は国が「財政破綻論」からマインドチェンジしてくれなければ増税で支え切れないでしょう。
そうなった時に「自分だけでいかに老後を乗り切れるか?」ここが大事だと思います。
質問者:
そうは言っても、具体的にどうすれば良いんでしょうか……。
筆者:
簡単に言えば「なるべくお金を使わない生活」をして「健康でいること」です。
2016年にその研究がノーベル生理学・医学賞を受賞したオートファジーという考え方があります。
オートファジーが活発であれば、感染症に対する免疫力の向上も期待でき、細胞内に侵入してきた病原体を殺す能力も向上するようです。
このオートファジーは食べ終わってから12時間から働き始めることから最低でも16時間「食べない時間」を作る「16時間断食」というのを僕は推奨しています。
食事回数が減る上に、不要な細胞を食べてくれる最高の方法だと思うんですけどね。
これについて何度か書いていますが皆さんから色よい反応は無いですがね(笑)。
質問者:
やっぱり「朝ご飯を抜く」という考えが受け入れがたいのではないでしょうか……。
筆者:
必ずしも僕の方法でなくてもいいですが、既存の枠組みの中で生活をやっていては、
将来的な良い生活は望めない状況にあると思います。
革命的なお金を稼ぐ方法か画期的な健康法を見出せなければ生きていけないと個人的には考えているので、そのどちらかを追及していただければと思います。
質問者:
なかなか難しいと思いますけどね……。
筆者:
政府が酷すぎるからこんなことになるのです。
政治的側面ではとにかく政権交代を起こし続け“ふざけた政治家”を減らしていき、
政治献金改革や選挙制度改革をしていかなくてはいけないと思います。
ということでここまでご覧いただきありがとうございました。
今後もこのような政治経済、マスコミの問題点について個人的な解説をしていきますので、よろしければこれからもご覧ください。