表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風見鶏邸のハリー  作者: 日南田 ウヲ
デュラハンへの祷り
16/32

その8 終わり

(8)おわり


 翌日、ロドリック教授を迎えに来た大僧正会の派遣隊に石化した教授を渡すとハリーは盾も一緒に引き渡した。

 事情についてはダンから彼等に説明したようだが、彼等は一様に恐れた様子で教授とマントに覆われたペルセウスの盾を引き取って言った。

 引き取る際彼らがハリー達に言ったのは、教授の石化の回復には十年はかかるだろう、と。

 派遣隊を見送るとハリーは不意に誰に聞かせる風もなく、話し出した。横にダンが佇んでいる。

「古き世界ではペルセウスは確かにメデューサの首を取ったとなっている。しかし、その諸説は幾つもあり、ペルセウスは自ら愛する者の首を取ってゴルゴンという豊かな土地を手にしたという話がある。その話では彼はゴルゴンを手に入れる為、虚偽の愛で彼女に近づいたが、やがて本物の恋に落ちてしまった。しかし彼自身の内に潜む欲望が勝り、彼女の首を切ろ落とし、ゴルゴンを手に入れた。だがその後、彼は裏切ったその美しい彼女の事を忘れることができず、やがて自らの首を刎ねて、海に落ちたと言われている」

 ハリーの話を聞きながらダンは言う。

「何じゃ?だからお前、センチになってあの教授から首を取り戻してやったというのか。やれやれそんな諸説の長口舌なんぞ、無口(ハリー)には似合わんぞ。それとも学があることを見せたいとでもいうのか?」

 言ってからダンはホテルへ入っていった。ハリーは苦笑した後、黙って去り行く派遣隊の姿を見送った。その派遣隊が壊された玄関先の門を潜った時、彼の耳奥に声が響いた。 


 ――ハリー!!何、ぼさっとしてるの!!

 見てよ、ホテルがめちゃくちゃ汚れている。早く、掃除しなさい!!私が寝てる間にこんなに汚して、一体何をしたんだか!!

 ほら!!

 ハリー!!

 急いで!!掃除して



 それはいつもの日常を告げる彼女の自分を呼ぶ声だった。



 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ