幽霊母ちゃん
「たける、 お母さん死んじゃったみたい」
そう言って俺の前に現れたのは10年前に死んだ母ちゃんだった。
母ちゃんは俺が10歳の頃に交通事故に遭い還らぬ人になった。その日は俺の誕生日であり、毎年母ちゃんは俺の大好きなケーキを買ってくれていた。その帰り道での事故だった。
短い髪に、お洒落とは遠い服装、悲しい顔は見せずにいつも笑っていて明るかった母ちゃん。
「母ちゃん、どうして、、、」
突然現れた母ちゃんは当時の姿のままで、手にはケーキの入った袋を持っていた。
「お母さん頑張ったんだけど、駄目だったみたい。
でも、お父さんとたけるなら大丈夫!
お母さんこれから天国に行けるみたいだから、そこからちゃんと見てるから、何かあったら必ず助けるからね! そっちには行けないけど、大丈夫だからね!」
俺は首を括ろうとしていたロープから手を離し、踏み台から降りた。
真っ暗な部屋を出て、下に降り水を飲もうと冷蔵庫を開けた。
そこには10年ぶりに見る大好きなケーキが入っていた。
俺は黙って泣きながらケーキを食べた。
「母ちゃん、、ありがとう」
今日は
俺の誕生日だった。