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兄さん、なのです

 余計な時にいらない気が利くという人はどこにでもいるもので、プリン姫の兄であるグダグダ王子はまさにその典型であった。

 プリン姫の返事も聞かずに裏で良かれと思って行動していたのだが、その全てがプリン姫にとって悪い方向へと進んでいたのだっが。もちろん、百合ちゃんは関与していなかったのだけれど、プリン姫の兄が無能な働き者だという事を認識したうえでのことなので関与しなかったことで無駄な罪悪感を覚えてしまっていたのだった。


「あなたがプリンプリン姫だな。お初にお目にかかりますが、俺様がダルダル王国のメシアン王子だ。王子と姫の結婚なんだから式は盛大に執り行おうと思っているのだが、何か希望はあるのか?」

「ちょっと待ってほしいの。プリンはメシアン王子と結婚するつもりなんてないの。結婚することを前提に話を進めるのは止めて欲しいの」

「何を言っているんだいプリンは。これはとってもいい話だと思うよ。メシアン王子はまだ若くていらっしゃるし何が不満なのかな。僕もメシアン王子と会うのは今日が初めてだけど、とってもいい人だと思うよ」

「そうだぜ。俺様は若いからな。プリンプリン姫も若いんだし、若者同士で結婚すれば俺のおやじみたいにたくさん跡継ぎを作ることが出来るんだ。プリンプリン姫はそれのどこが不満だって言うんだ?」

「そうだよプリン。君はこの若いメシアン王子と結婚することがこの国にとっても一番いい事だと僕は思うよ」

「ちょっと待ってほしいの。さっきから若いって言葉だけで優秀って言葉が出てないのは気になってしまうの。ダルダル王国は学者の国と言われるくらい優秀な人材が多いはずなのに、メシアン王子からはそんな感じを一切受けないのだけど、それはいったいどういう事なの?」

「お、おい。俺様は別に優秀じゃないってことは無いぞ。周りがちょっと勉強が出来たり戦闘技術が高かったりしてるだけで、俺様はきっと平均だと思うぞ。そ、そうだ、俺様の国では平均かもしれないが、世界的に見たらきっと上位に位置していると思うんだ。俺様は大魔王ルシファー討伐隊の二次審査まで残ったくらいの人材だからな」

「そうだよプリン。メシアン王子も言っている通り、彼は若くて優秀な人材なんだよ。プリンも初対面の相手に意地を張っているのかもしれないけど、こんなにいい人は世界中どこを探しても見つからないと思うんだけど、何が不満なのかな?」

「逆に聞きますけど、メシアン王子程度で不満に思わないなら相手が誰でも変わらないと思うの。それに、メシアン王子よりも百合ちゃんの方が優秀だと思うんだけど、兄さんはそう思わないの?」

「確かに、百合さんはとても優秀だと思うよ。でもね、メシアン王子はあの大魔王ルシファー討伐隊の選考を勝ち抜いているんだよ。それって凄い事だとは思わないのかな」

「兄さんの事はバカだとは思っていたけれど、ついにバカの限界を突破してしまわれたみたいなの。大魔王ルシファー討伐隊の選考っていったい何なのか教えて欲しいの」

「そ、それは。なんだろうね」

「おいおい、そんな事も知らないで言ってたのかよ。世間には物事の本質を理解していないのに否定するだけの人間ってのがいるとは聞いていたが、プリンプリン姫がそのタイプだとは思っていなかったな。いいか、俺様がきっちり教えてやるよ。大魔王ルシファーってのはとても危険な奴だったんだ。そいつに挑もうとするというだけでも相当な勇気が必要になるってのは誰でも知っているな。そこでだ、勇気ある者達が大魔王ルシファーの討伐に名乗りを上げたんだが、ダルダル王国では勇気はあっても戦闘に向いていないものも多くてな、無駄死にをさせないために選考会を突破した物だけが大魔王ルシファーを討伐しに行くことが許可されたというわけだ。俺様は惜しくも二次審査で落ちてしまったが、大魔王ルシファーの討伐隊に選ばれる可能性が高かったってことなんだよ」

「メシアン王子凄いよ。僕はムチムチ王国の王子であるだけで大魔王ルシファーの討伐に行こうなんて思わなかったけれど、そんなことが出来るなんて勇気のある行動だよ。僕は心から君を尊敬するよ」

「やめてくれよ。俺様だって大魔王ルシファーを討伐したいとは思ってたんだが、選考を突破できなかった以上グダグダ王子と立場は変わらないと思うぜ。あんたとは初めて会ったけれど、これから仲良く出来そうな気がしているぜ」

「メシアン王子。僕も心の底からそう感じているよ」


 大魔王ルシファーの討伐隊の選考会って何だろう。ムチムチ王国ではそんなものは開かれなかったし、バカ兄貴たちが逃げたせいでプリンが大魔王ルシファーを倒しに行くことになったんだけどな。それに、旅の途中でダルダル王国の人とは一度も会わなかった気がするんだけど、ムチムチ王国以外に大魔王ルシファーと戦っている国ってあったのかな?


「プリン姫。あの二人はどうやら同じ程度のバカみたいですよ」

「やっぱり百合ちゃんもそう思うのね。どうしてバカ同士って惹かれあうのかその理屈を教えて欲しいの」

「そればっかりは私も分かりかねます」

「それに、ダルダル王国の選考を勝ち抜いたって人達に会ったことが無いのだけれど、百合ちゃんはどこかで会ったことがあったりするの?」

「いいえ、私達以外に大魔王ルシファーを討伐しようとしたものはいなかったはずですよ。これは私の予想でしかありませんが、ダルダル王国で開かれたその選考会とやらは、全員落ちているか大魔王ルシファーが生きている限り終わらずに続いていたのではないかと思います。他の王国も同じような状況だったと思いますよ。途中に立ち寄った国々でも大魔王ルシファーと戦う者の募集はあったようですが、実際に応募している物はほとんどいなかったと聞いていますからね」

「え、それって、プリン達は誰にも助けてもらう事が出来なかったってことになるのね。でも、百合ちゃん一人で全部の問題が解決しちゃったから関係ないってことなの」


 グダグダ王子とメシアン王子は互いに思うところがあったようで、初対面とは思えないくらいに意気投合していた。プリン姫と百合ちゃんはお互い何がそんなに良いのだろうと思ってはいたけれど、同じバカ王子という事で案外ウマが合うのではないだろうか。

 プリン姫の知らないところで進んでいた結婚の話ではあるのだが、メシアン王子のお付きの人も結婚の話など聞いていなかったようでアタフタしている様子が見てとれたのだ。そもそも、結婚の話は王子二人の間だけで進んでいたようで、バカ王子とバカ王子が力を合わせると周りが迷惑するだけという事が学べたのだが、それはわざわざ実行してくれなくてもわかるのだと思っていたプリン姫と百合ちゃんであった。

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