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プリン姫なのです

「大魔王を倒したんだからもう少し寝ててもいいでしょ。百合ちゃんは真面目過ぎるんだからもっと気楽にしてよね。プリンは戦いで負った疲れがまだ抜けてないんだからその辺りも考慮して欲しいの」

「そうは仰いますが、姫様が大魔王ルシファーを倒したのはもう三年も前になりますよ。それほど抜けない疲れだとしたら、大魔王の呪いかもしれませんのでその体に呪いの痕跡が無いか確かめさせていただいてもよろしいでしょうか?」

「百合ちゃんにはわからないかもだけど、プリンは本当に疲れているんだから近付かないで欲しいの。あんまりしつこくすると、プリンは怒るかもよ」

「ですが、プリン姫の身になりかありましたら私も困りますので、そのお体を確かめさせていただきますね」


 嫌がるプリン姫を無視して百合ちゃんはベッドの中に潜り込んだ。ゆっくりと近付くその手を多少は嫌がるそぶりを見せるプリン姫ではあったのだが、完全に拒否をするわけではなく言い訳をするように嫌がっているだけなのだ。


「プリン姫は本当に綺麗な肌をしていらっしゃる。私のように戦いに明け暮れていたものとは違って、本当に女性らしい体つきをしていて羨ましい。王妃様もそうでしたが、どれだけ自堕落な生活をしていても崩れないそのプロポーションは全女性のあこがれでもありますね。そんな体も今は私の手の中で大人しくしているのですね。たまには抵抗なさってもいいと思うのですが、私を受け入れてくれるという事はそう言う意味ととらえてもよろしいのですね?」

「そんな、プリンの力で百合ちゃんに抵抗なんて出来ないのは知っているのに、そんな言い方はずるいの。百合ちゃんの事は嫌いじゃないけど、そんないい方しちゃ駄目なの」

「嫌いじゃないという事は、好きだと受け取ってもよろしいのですか?」

「そんな事はプリンの口からは言えないの」


 百合はメイドとして主人であるプリン姫の体調を確認する義務があるのだ。見た目だけではわからない体調の変化を見逃さないのも一流のメイドとしての務めである。

 彼女らは毎朝そのチェックをかかさないだけなのだが、他の者が万が一にも部屋に入ってこないように多重結界が張られているのはプリン姫は知らない事なのだが。


「もう、もう少し寝ていたかったのに百合ちゃんのせいで目が完全に覚めちゃったじゃない。今日の予定は何だったか教えて欲しいの」

「今日は特に予定も入っていません」

「ちょっと待ってほしいの。予定もないのに午前中に起こすなんてやめて欲しいの。もう少し寝ていたかったの」

「そんなに寝ていたいのでしたら、私が隣で添い寝して差し上げましょうか?」

「そ、それは遠慮しておくことにするの。プリンはお腹が空いたからなんか食いてえって思ってきたところなのだけど、今日は何を用意してあるの?」

「本日の朝食は新鮮な卵を使ったオムレツの予定ですよ」

「オムレツは美味しいから好きなの。半熟とろとろのオムレツを食べるの」

「の予定だったのですが、新鮮な卵を用意するのを忘れてしまいました。今から一緒にとりに行きましょうね」

「ちょっと待ってほしいの。今から取りに行くって事は用意してないってことなの?」

「いえ、卵自体はあるのですが、新鮮さに疑問を抱くような卵ですのでプリン姫が望むような半熟トロトロだとお腹を壊す心配もありますので、不測の事態を避けるためにも今から取りに行きましょう」

「じゃ、じゃあ、半熟じゃなくていいの。完熟のオムレツが食べたくなってきたの。だから、卵はとりに行かなくてもいいの」

「大丈夫ですよ。魔物が襲ってきたとしても、大魔王を一方的に追い詰めた私がいれば何の問題も無いですからね。プリン姫はただついてくればいいだけですからね」

「そんなこと言ったって、百合ちゃんの後をついていくだけでも大変だって言うのに、そんな事をしたらプリンは朝ご飯を食べる前に死んじゃうの」

「プリン姫は死んだりしませんよ。私と一緒に大魔王の前まで行ったじゃないですか。あの経験を思い出せば卵をとりに行くことなんてどうって事ないですよ」

「大魔王の前に行ったときは百合ちゃんがプリンの事をずっと背負っていてくれたから大丈夫だったけど、今回も背負ってくれるの?」

「いいえ、今回はプリン姫を襲ってくる魔物もいないと思いますのでご自身の足で進みましょう。すぐそばにいるから何があっても大丈夫ですよ」

「何かあったらいやなの。でも、プリンを背負ったまま大魔王の城を攻略した百合ちゃんの事を信頼はしているの。だけど、百合ちゃんが卵を一人で採ってきてくれたらプリンはとっても嬉しいの」

「何を甘えたことを言っているんですか。なんでも自分の力でやり遂げなさいって亡くなった王も仰ってたじゃないですか。私と二人で大魔王を倒した時の事を思い出してください」

「二人で協力したって言っても、プリンは百合ちゃんが大魔王を一方的にボコっていたのを見ただけなの。瀕死の大魔王にとどめを刺しただけで何もしてないのと一緒だったの」

「大魔王を完全に討伐するには勇者の末裔であるプリン姫の力が必要でしたからね。私はプリン姫がいなければ死んでいたかもしれなかったんですよ」

「そんなわけないの。あんなにいっぱいトラップがあった魔王城をプリンを背負って何の苦労もなく踏破した上に、襲ってくる魔物を片手で排除してる姿を見せられて負けるところなんて想像もつかないの。そのうえ、あの時は全く魔法を使ってなかったんだからおかしいを通り越して異常なの。どうしてそんなに強いのに大魔王にだけとどめを刺せないのかが疑問なの」

「それはですね、プリン姫が平和な世界を愛している勇者だからですよ」

「プリンが平和な世界を愛している勇者なら危険な場所に連れて行ってほしくないの。大魔王のいない平和な世界なんだから、ずっと平和な世界で大人しく生きていたいの」

「そんな事をおっしゃってますが、たまには刺激の一つも必要ですよ。卵をとりに行くのが嫌でしたら、一緒に昼まで寝ましょうか?」

「わ、分かったの。一緒に卵をとりに行くの」


 こうしてムチムチプリンプリン姫とメイドである青薔薇百合百合の一日は始まるのでした。

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