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エピローグ

魔王討伐から、5日後、フローラは、ローゼンと、フォルダン公爵、ユリシーズ、アイリーン、そして、アスティリオ・フォバッツアと、シュリアーゼ夫妻と共に、王都の広大な墓地の一角にあるリリアの墓にお参りに来ていた。


皆、黒の服装をしており、フローラは黒のワンピースを着て、リリアの墓の前に花を供える。

ユリシーズが持ってきた布で、墓石を綺麗に掃除しながら。


「リリア。この間は有難う。助けてくれて。君のお陰で黒竜魔王を討伐出来たよ。長かったね。」


シュリアーゼもリリアに語り掛ける。昔馴染みのリリア相手なので、男言葉だ。


「まさか、100名にも渡る人数で討伐するとは、時代も変わったものだな。これで、リリアも安心して眠る事が出来るだろう。リリア。本当に有難う。お前と私は永遠に良き友人だ。勿論、ユリシーズもな。」


ユリシーズが笑ってシュリアーゼに。


「でも、まさか、リリアが俺の義母上になるとは思わなかったけどね。」


「本当だな。まぁ、私もリリアの娘の義母になるとは思わなかった。人生は面白い物だ。」


アイリーンがリリアの墓に向かって話しかける。


「お母様。もうすぐ、子供が生れますわ。ユリシーズとの赤ちゃんが。きっと可愛いでしょうね。私とユリシーズと赤ちゃんの事、見守って下さいませ。」


フォルダン公爵も優しい口調でリリアの墓に話しかける。


「フローラも、シュリアーゼの息子と結婚することが決まっている。マディニア王国一の美男で騎士団長だ。将来は、宰相の仕事についてもらおうと思っている。素晴らしいだろう。

勿論。アイリーンの相手のユリシーズの事は良く知っているだろうから、あえて言わないが。ユリシーズも素晴らしい男だ。」


ローゼンがリリアの墓に向かって。


「ローゼンシュリハルト・フォバッツアです。義母上。必ずフローラを幸せにしますから、安心して見守って下さい。」


フローラはローゼンの隣に行き、


「素敵な人でしょう?お母様。私、もうもう好きで好きでたまらないのですわ。」


フォルダン公爵がフローラとアイリーンに。


「きっとリリアも喜んでいるだろう。」


アスティリオはシュリアーゼの肩を抱いて、優しくそんな様子を見守っていた。


ユリシーズは目尻の涙を手で拭きながら。


「それじゃ、リリア。また、お参りに来るから。今度は俺とアイリーンの赤ちゃんの顔を見せに来るよ。」


アイリーンも嬉しそうにユリシーズに寄り添って。


「ええ、お母様。今度は赤ちゃんを連れてきます。楽しみにしていて下さいませ。」


春の風が吹き、美しい花びらが舞う、そんな春の晴天の日であった。




午後からは王宮で祝勝会が行われる。

討伐に参加した全員が招待されており、国王陛下自ら、皆をねぎらってくれる事となっていた。


10人掛けの丸テーブルが11個、配置されている。


1:神イルグ、魔女オーネット、ディミアス・マーレリー大公、王弟殿下、アイルノーツ公爵、リーナ皇女(当日は国の反対があり参加できなかった) メルディーナ皇女、フォルダン公爵、第一魔国魔王サルダーニャ、第一魔国王配ゾイドリンゲン。


2:第二魔国魔王レスティアス、第三魔国魔王シルバ、第四魔国魔王ティムゼールアウグストス。第五魔国魔王ロッド。ミリオン、ファルナード、スーティリア、ルディーン


3:ローゼン騎士団長、フローラ、ユリシーズ、アイリーン、クロード、グリザス、モリスディン、ゴイル副団長、リンドノール


4:ネリウス、レオンハルト、フェデリック、ロシェ、ロイエール、ルーティス


5:ザビト治安隊総監、ツルハ医院長、神官長、聖女リーゼティリア、フィーネ


6:神官達10名


7:近衛騎士達10名 (シリウス、ルイスを含む)


8:近衛騎士達10名


9:近衛騎士達10名


10:騎士見習い達10名(ギルバート、カイル含む)


11:騎士見習い達9名(ジャックを含む)



前列のテーブルに国王陛下、王妃、ディオン皇太子殿下、セシリア皇太子妃、フィリップ第二王子殿下が座っていて。


まずはマディニア国王陛下、アルフォンスが皆に向かって、


「この度は、我が国の勇気ある国民、並びに魔国の魔王達の協力を得て、無事に黒竜魔王を倒すことが出来た。マディニア国王アルフォンスの名において感謝を捧げよう。

今宵は馳走を楽しみ、ゆっくりとくつろいでくれ。」


次にディオン皇太子が、杯を手に持ち、


「本当に皆、協力をしてくれて有難う。破天荒の勇者、そしてマディニア王国皇太子の名において感謝をする。さぁ、乾杯をしよう。乾杯。」


「「「乾杯。」」」


乾杯を皆で行い、運ばれてくる食事も豪華な祝勝会が始まった。


和やかな祝勝会という訳にはいかない。


席を見ても解るであろう。第一のテーブル等は恐ろしさ満載のメンバーであった。


サルダーニャが優雅に食事を楽しみながら、


「凄いメンバーが揃っておるのう。わらわが第一魔国魔王サルダーニャじゃ。」


神イルグが酒をごくごくと飲みながら。


「よーーーく、知っておるぞ。美しさと色気ナンバーワンである事はこのわしでさえも、よーーく知っておる。」


「美しさと色気だけではないぞ。実力だって兼ね備えておる。」


魔女オーネットは、ちらりとイルグを見つめながら。


「ちょいと耄碌しかけた神でのう。気にするではない。」


皇女リーナは嬉しそうに。


「でも、神様なんて間近で初めて見ましたわ。もっと神様って威厳があるものだと…

親しみが持てます。」


皇女メルディーナが呆れたように。


「神様全般が、ああいうのでは世も末ですわね。」


アイルノーツ公爵が宥めるように。


「まぁまぁ皆さん。今日は祝勝会、和やかに参りましょう。」


食事が一通り終わると、皆、席を移動し、色々と交流を深める。


その中で、ネリウス一行は何だか浮いていた。

暴虐の勇者として有名である。だが、黒竜魔王討伐でディオン皇太子を一番助けたのも彼なのだ。

ディオン皇太子はネリウスの席の隣に腰かけて。


「国へ帰るのか?」


「ああ、用も済んだし、店も心配だ。あまり長く閉めていちゃマズイからな。」


「前、一月程、共に冒険した時は有能だとは思っていたが、軽蔑もあった…。尻を狙われていたからな。だが、今回の件で見直した。有難う。ネリウス。」


「礼等いらねぇよ。ディオン。良い国を作ってくれ。俺は俺だ。国へ帰って俺らしく生きるさ。」


そこへ、フローラがやって来て、


「国へお帰りになりますの?」


「ああ、もう用は済んだからな。」


フェデリックの横の椅子にちょこんと座っている一夜人形のロシェ。

今はまだ昼間なので、白い小さな人形のままである。


フローラはロシェに話しかけて。


「フェデリック様に可愛がって貰うのよ。ロシェ。元気で。」


ローゼンと同じ姿の人間に化けるロシェ。フローラは気になって仕方がなかった。

ロシェは僅かに首を動かして頷く。

フェデリックはフローラに。


「ロシェは俺の大事な友達だ。大丈夫。ずっと傍にいるし、大事にするから。」


「ええ…そうね。よろしくお願い致しますわ。なんだか私が言うのも変ですけれども。」


そう言うと、フローラはローゼン達の元へ戻った。



ディオン皇太子は、魔国の魔王達の元へ行き、


「今回は有難う。魔王達のお陰で助かった。」


ロッドはディオン皇太子に向かって。


「何かあったらこれから先も協力しよう。」


シルバも頷き。


「俺も同感だ。逆に魔国で何かあった時には協力して欲しい。」


ディオン皇太子は頷いて。


「勿論だ。魔国とはこれからもよい関係を保ちたい。」


フィリップ殿下が進み出て。


「私は更に、文化的交流も深めたいと思います。」


第二魔国魔王レスティアスがディオン皇太子に。


「マディニア王国と、魔国との関係を、さらに深めつつ、互いの国が良い方向に行くように導きたい。よろしく頼む。ディオン皇太子。」


「ああ、レスティアス。こちらこそよろしく頼む。」


各国魔王と握手を交わすディオン皇太子。


フローラとクロードはそんな様子を見て、安堵したように。


「これから、マディニア王国は更に栄えるわね。」


「ああ。人間と魔族…ともに良い関係を持って、突き進んでいきたい。

俺達も良い橋渡し役に、これから先もなれるといいな。」



賑やかに色々な人達の交流があり、そして、祝勝会は終わった。



そして時は過ぎて、2年経った。とある晴れた日の朝。


フローラは神殿の一室にいた。


今日は待ちに待ったフローラとローゼンの結婚式である。


真っ白なウエディングドレスに身を包み、支度を終えた娘を見てフォルダン公爵はしみじみと、


「ああ、リリアに良く似ている。美しく育ったな。フローラ。」


「ありがとうございます。お父様。そして今まで育てて下さって感謝いたしますわ。」


そこへ、小さな男の子を抱いたアイリーンが、入って来て。


「とても素敵よ。フローラ。ああ、子供が悪戯すると困るでしょうから、後でね。」


すぐに出て行ってしまった。


真っ白な礼服を着たローゼンが部屋に入って来て、フローラを見るなり、


「ああ、本当に美しい。」


「ローゼン様こそ、美しいですわ。」


二人は見つめ合う。

結婚まで、2年、我慢したのだ。

特にローゼンは今年、29歳。貴族の結婚する歳としては遅い方である。

国一番の美男はやっと結婚出来るのだ。


時間になり、ローゼンは先に祝いの間へ向かい、

フローラはフォルダン公爵の手に引かれて、神殿の祝いの間の扉の前に立つ。

そして、扉が開けられてゆっくりと、フォルダン公爵と共にバージンロードを歩く。


見知った顔が参列してくれて。

ディオン皇太子殿下夫妻や、大事な友、クロード。伴侶のグリザスが隣に。

他にも仲良くしてくれた、マギー。

婚約者のギルバートと一緒に来てくれた。彼女ももうすぐ結婚する事になっている。

アイリーンが子供を抱っこして、ユリシーズと共に見守っていてくれる。

そして、ソフィアは…

今日、フローラ達の前に結婚式をフィリップ殿下とこの場で挙げた。

控えの間でフローラとローゼンの式が終わるのを待っているのである。そう、この後に全国民に姿を披露するために。


神官長の前で、フォルダン公爵の手から、ローゼンにフローラは手渡されて、

二人で共に並ぶ。


「ローゼンシュリハルト。其方はフローラを妻にし、苦難を共に乗り越え、良き家庭を作る事を誓いますか。」


「はい。誓います。」


「フローラ。其方はローゼンシュリハルトを夫とし、苦難を共に乗り越え、良き家庭を作る事を誓いますか。」


「はい。誓いますわ。」


「それでは誓いのキスを。」


ローゼンがフローラのベールをめくり、顔を近づけて、優しく唇にキスをしてくれた。


ああ…なんて幸せなんでしょう。私はやっとローゼン様の妻になれたわ。


皆の拍手に送られて、祝いの間を出る。

そして、フィリップ殿下とソフィアと共に、ローゼンとフローラは、大勢の国民の前に姿を現した。

そこには、今日、先に魔国で結婚式を挙げた第三魔国魔王シルバとマリアンヌも、待っていてくれて。魔国の正装は黒なのだが、マディニア王国でのお披露目は白に着替えていた。

3組のカップルは美しい真っ白な正装で、国民の前に姿を見せれば、大勢の国民からは歓声が上がった。花婿達も美しいが、ウエディングドレス姿の3人の花嫁の女性達は美しくて…


「おめでとうございますっ。フィリップ殿下っーーー。」

「きゃあああああっ。美しいっ。ローゼン様っ。マリアンヌ様のお相手も美しすぎますわ。」

「おめでとうございますっーー、マディニア王国万歳っーーーー。」


皆、大騒ぎである。


その中、フローラはマリアンヌと、ソフィアと共にブーケを持って、前に進み出た。

マリアンヌがフローラに。


「まさか、貴方とこうして、結婚を披露する事になるなんて思わなかったわ。」


フローラも微笑みながら。


「本当ですわね。でも、嬉しいですわ。こうしてマリアンヌ様とソフィアと、いえ、今日からソフィア様ね。」


ソフィアは首を振って。


「私はいつまでも、フローラ様とマリアンヌ様のお友達でいたいと思っています。どうかこれからも仲良くよろしくお願いしますわ。」


国民からブーケコールが始まり、


フローラが2人に。


「それじゃ、投げましょうか。」


マリアンヌもソフィアも頷いて。


「そうね。」

「投げましょう。」


3人はブーケを空に向かって一緒に思いっきり投げた。


春の風に乗って、ブーケは3人の笑い声と、それを見守るそれぞれの伴侶達の優しい微笑みと共に、ゆっくりと国民の元へ、流れて行った。








マディニア王国はその後、強盛を誇る事となる。

ディオン皇太子殿下の銅像が、王都の広場に建てられて、お披露目の時に初めて見た、何故か上半身裸で、黒百合の痣が目立つような姿に、ディオン皇太子は頭を抱えたという。

国民に人気があり、作り直しが出来なかった。

黒竜魔王討伐に関わった人達の名前の石碑も作られ、大人数で3日3晩かかった戦いは後世に長く語り継がれたと言う。


フローラはローゼンと結婚した後、子供にも恵まれて幸せな生涯を送ったとされている。


書き終わりました。単なる婚約破棄物が書きたかったんですけど、偉く解りにくい魔王討伐話になってしまった。そして、ユリシーズのお話もここで決着がつきました。

ローゼン様とディオン皇太子殿下、大好きです♡。

ここまで読んで下さった方、いらしたら有難うございます。

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