黒竜魔王討伐
第一魔国の魔王、サルダーニャから、連絡があった。
黒竜魔王を覆っている氷が砕けてきていて、それを抑えている魔導士達の力もそろそろ限界を迎えていると。
氷が砕け散り、黒竜魔王が地上、もしくは魔界で暴れたら、損害は計り知れない。
30年前は魔物を引き連れて、アマルゼ王国を中心に莫大な被害を与えたのだ。
マディニア王国は魔族と繋がっていたから、攻撃対象にはされなかったが。
今回はどうなるか解らない。ともかく、黒竜魔王が暴れ出す前に、倒さないと大変な事になる。
そして討伐人数は多いのだ。
予定しているのは、
黒竜魔王を拘束する、拘束隊は、ディオン皇太子、ローゼン騎士団長、そしてそれを補助するのが第四魔国魔王ティムゼールアウグストス。
攻撃隊は第一魔国魔王、サルダーニャ、第三魔国魔王シルバ、第五魔国魔王ロッド、そして
黒騎士グリザス、ザビト治安隊総監、前魔王の息子ミリオン、勇者ユリシーズ、
フォルダン公爵、勇者ネリウス、レオンハルト、勇者ファルギリオン、ジュエル帝国皇女メルディーナ、竜騎士リンドノール、そして、グリザスの昔の友、黒騎士モリスディン。(彼はどうしてもと願って参加する事となった。)
皆に力を与えるのが、フローラ、クロード、第二魔国魔王レスディアス。援護隊である。
魔王の意識を逸らしたりするのが、ルディーン、スーティリアである。
ツルハ医院長、聖女リーゼティリア、フィーネ、神官長、神官達10名が怪我人や体力が落ちた人の回復を担当。フェデリック、ロシェ、騎士団見習い達、ギルバート、カイル、ジャック等19人達は回復係達の手伝いだ。
ゴイル副団長、シリウス、ルイス他近衛騎士28名、二つに分かれて、拘束隊と援護隊を守護。
ニゲル帝国騎士団ロイエール、ルーティスと、治安隊10名は回復隊等を守護する役目をする事になる。
攻撃隊と、ルディーンとスーティリアは動き回るので守護はいらない。
100名近い人数が黒竜討伐隊に抜擢されたのだ。
神イルグと魔女オーネットが立ち会ってくれることになった。
暴虐の勇者ネリウスは、ディオン皇太子に対して、
「絶対に長引くから、簡易トイレと、飲み物と食事を用意しておいたほうがいい。」
「ネリウス、お前心配症だな。そんなに長引く物なのか?以前、行った訓練では、なかなかいい手ごたえだったぞ。」
「そう、上手くいかないのが世の常ってもんだ。それから…拘束はお前とローゼン、ティムっていうガキの3人とは少ない。俺もそちらへ回ろう。後、フォルダン公爵も拘束へ引き入れた方がいい。」
「ああ、解った。」
ネリウスは念を入れるように、
「お前が今回の討伐の頭だ。拘束だけに力を注ぐだけでなく、全体を見て指示も出さねばならん。だから、俺とフォルダン公爵が加われば、お前にその余裕が生じるはずだ。ただ、攻撃隊の頭を決めておいたほうがいい。」
ディオン皇太子は考えるまでもないという風に。
「サルダーニャしかいないだろう。フォルダン公爵が拘束に回ってくれるのなら。」
フォルダン公爵がその話を聞いていて。
「サルダーニャ以外にいないでしょう。回復隊はツルハ医院長、守護隊はゴイル副団長に任せれば大丈夫だと思われます。皇太子殿下。」
「ではそうしよう。」
ディオン皇太子は思った。暴虐の勇者として評判は悪く、自分自身もネリウスの事があまり好きではないのだが、なかなか頼りになる男だと。
食事はネリウスの提案で、東の国にあるコメを使った「お握り」というものが、効率よく栄養が取れるという事で、釜という物にコメを炊き、宮殿にて用意することにした。
戦いが長引いたら、スーティリアの転移魔法で、お握りを運び出す手筈を整えた。
いよいよ、黒竜魔王の氷が砕けるペースが速くなってきたという事で、急遽、明日の朝、出発という事になった。王宮の庭に100人近くが集まって、一斉に転移する事となる。
今、魔法で黒竜魔王の結界を保っている第一魔国の魔導士達は、ディオン皇太子達が到着したら、撤退する事となっていた。
救護テントや、持って行く荷物、簡易トイレなどを王宮の庭に準備する事で、ディオン皇太子はネリウス達と共に忙しく王宮の庭で支持を出していた。
そこへ、フィリップ第二王子がやって来て、
「明日は私も同行させて下さい。騎士団見習い達が、手伝いに行くのでしょう?私だって、手伝いなら役に立ちたいです。」
ディオン皇太子は心配そうに。
「お前に万が一の事があったら、王国の未来はどうなる?」
「ディミアス・マーレリー兄上に任せればよろしいでしょう?ディオン兄上はディミアス兄上に冷たすぎます。」
「双子だと色々と思う所がある。」
「それでも、ディミアス兄上は兄弟なのです。仲直りした方がよろしいかと。」
「俺が生きて帰ってきたら考えよう。お前の同行も許可はするが、くれぐれも無理をするな。いいな。」
「解っています。兄上。」
セシリア皇太子妃が近づいて来て、
「明日のお米を炊く準備は出来ていますわ。ディオン様達がお出かけになりましたら、お握りを使用人総出で作る支持を致します。」
「そうだな。万が一、戦いが早く終わるようでも、皆をお握りでねぎらう事が出来る。勿論、豪華な食事も用意して接待する予定だが。長引かない事を願うばかりだ。いや、ともかく失敗しない事を願わないとな。」
セシリアはディオン皇太子に抱き着いて。
「どうか、御無事で帰って来て下さいませ。私は王宮で願っておりますわ。」
「有難う。セシリア。必ず成功させて戻って来る。」
愛しいセシリアの身体を抱き締める。
そんな二人の様子をルディーンは、柱の陰から見ていた。
クロードに声をかけられる。
「愛人は辛いね。ルディーンだって、抱き締めたいだろう?」
「ま、仕方無いですよ。愛人ですから…。」
その時、セシリアがこちらに向かって声をかけてきた。
「ルディーン、いらっしゃい。貴方だって、抱き締めたいでしょう?ディオン様を。」
「セシリア様。俺なんて気にしなくてもいいんですよ。」
ディオン皇太子はルディーンに近づいて、ぐいっと抱き締めて。
「明日は共に頑張ろう。頼りにしているぞ。ルディーン。」
「いや、何だか貴方にそれを言われると、頑張りましょって言えないんですが。」
「相変わらず、素直じゃない。」
セシリアは二人の傍に近づいて、微笑みながら。
「大丈夫ですわ。ルディーンは頑張って下さいますから。ルディーンだけではなくて、他の皆も。」
ディオン皇太子は満足げに頷く。
「そうだな。皆、頼りになる…。」
その頃、フローラはローゼンと共に、王宮の庭の準備の様子を眺めていた。
「いよいよ、明日なのですね…。ローゼン様…。」
「フローラ、出来れば君には参加してほしくない。女性が参加する戦ではないだろう?」
「聖女様だって、フィーネだって、女性も参加しますわ。私は聖剣に選ばれたのです。
ここは頑張らないと。」
その時、ユリシーズとアイリーンが近づいて来た。
アイリーンがフローラ達に。
「私も参加するわ。お腹の子は心配だけど、じっとしてなんかいられない。」
ユリシーズはアイリーンを心配そうに見つめ。
「俺は止めたんだけど、どうしてもって言うから。」
フローラはアイリーンの手を握り締めて。
「無理はいけませんわ。万が一、何かあったらどうするのですか。お姉様。」
「無理はしないわ。危ないと思ったら、後ろへ下がるから。だから、私も参加するわ。
黒竜魔王に負けたら、未来はないのですもの。」
「ああ…お姉様。本当に無理はなさらないでね。」
皆、様子を見に来ている。明日、黒竜魔王討伐の決戦なのだ。
だが、まさか、黒竜魔王討伐が前代未聞の戦いになるとは誰も思わなかったのである。
翌日、マディニア国王陛下、王妃、ディミアス・マーレリー大公、そしてセシリア皇太子妃が見送る中、100名位の人数が次々とスーティリアの魔法陣で転移していく。
こんな大人数の魔王討伐なんてかつてあっただろうか。多分、これから先も無いに違いない。
行くのは魔王城ではなく、魔国の地下にある滝の傍で氷漬けになっている黒竜魔王の所だ。
そして、勇者は破天荒の勇者ディオン。暴虐の勇者ネリウス、凄絶なる勇者ファルギリオン、
伝説の勇者ユリシーズの4人。
聖剣だけでも、今回、9本揃った。さて、黒竜魔王に勝てるのであろうか。
全員、転移を済ませると、巨大な滝の傍に、氷漬けになっている黒竜魔王が見えた。
竜の姿をしており、大きい。皆、その迫力に圧倒される。
魔導士の一人がディオン皇太子の傍に来て。
「それでは我々は撤退します。氷は大分、砕けていますので、急いで拘束に入った方がよろしいかと。」
「解った。それでは皆、始めるぞ。頑張って黒竜魔王を倒そう。」
ディオン皇太子は緑の聖剣に力を籠める。地面から太いツタが数本伸びて、黒竜魔王の身体を拘束する。ローゼンも金の聖剣から、金色の網を広げ、黒竜魔王の身体にそれは巻き付く。
ティムが二人に補助魔法を使い、力を倍増させる。
グオオオオオオオオーーーーー。
黒竜魔王が目を覚ましたようだ。
フォルダン公爵も魔法を使い、見えない力で黒竜魔王を拘束する。
もがく黒竜魔王、凄い力だ。地が揺れる。
ネリウスも聖剣を使い、ディオン皇太子の力を真似て、黒いツタを出現させ、ギリギリと黒竜魔王を締め上げる。
ディオン皇太子もローゼンも汗だくになり、
「凄い力だ。」
「引っ張られる…」
クロード、フローラ、アイリーン、レスティアスが攻撃隊に魔法を送る。
攻撃力がアップする魔法だ。
その頃、攻撃隊はまずロッドの敵の弱点を探る、探査魔法で黒竜魔王の弱点を探り始めた。
「首だ。今から光らせる。そこを重点的に攻撃だ。」
ロッドの言葉に皆頷く。
サルダーニャが皆を鼓舞する。
「3人ずつ、波状攻撃じゃ。行くぞ。」
サルダーニャはシルバ、ロッドと共に、まずは攻撃をかける。
炎の槍をその光った首元へ投げつける。シルバは氷の槍、ロッドは稲妻の槍だ。
次に魔法で羽を生やしたユリシーズ、グリザス、モリスディン。
レオンハルト、ザビト、メルディーナ。
ミリオン、ファルギリオン、リンドノール。
人間はフォルダン公爵の魔法で羽を生やして、黒竜の首を聖剣や魔剣等、剣で次々と攻撃していく。
最後に聖剣で斬り付けたミリオンは叫ぶ。
「何だ。硬いっ…。」
まるで歯が立たない。これが自分の父親である黒竜魔王の力か。
グアアアアアアーーーーーーー。
口から黒竜が衝撃波を吐き出す。
ゴイル副団長や近衛騎士達が、攻撃を受けたディオン皇太子達を盾でそれを防ぐ。
攻撃隊は何度も何度も攻撃を繰り返す。
黒竜魔王はもがき続けるも、弱点の首に一つも傷を与える事が出来ない。
メルディーナが剣を振るいながら叫ぶ。
「本当に正しい弱点なの?」
レオンハルトが剣で攻撃を仕掛けながら。
「信じるしかあるまい。」
ザビト総監が巨大な斧を振るい、黒竜魔王の首に叩きつける。
「硬い硬い。これはもっと力を出さねばな。」
どのくらいの時間が経っただろうか。
何度も何度も攻撃を繰り返し、こちらも黒竜魔王からの衝撃波を、ゴイル副団長達に防いで貰い、スーティリアやルディーンは黒竜魔王の注意を逸らすように。動き回ってくれているが、あまり効果はなくて…。
魔界の滝の天井は岩になっているが、穴が所々開いており、そこから光が漏れていて、明るかったはずなのだが、いつの間にか日が暮れてきた。
暗闇の中、魔法を使い、ルディーンが灯りを灯していく。滝の周りは明るくなった。黒竜魔王の姿が不気味に浮かび上がる。
フローラが叫ぶ。
「もう、我慢できないわ。」
アイリーンも頷く。
「私もよ。」
ネリウスが叫ぶ。
「お嬢さん達はトイレ休憩、そのついでに水分補給。アイリーンは無理するな。
スーティリア、お握りを転移してきてくれ。交代でトイレ休憩と食事休憩、水分補給。いいな。ディオン。それで。」
「ああ、OKだ。皆、各々、休憩を取ってくれ。まずはローゼン、それからティム。お前らは休憩に入れ。」
「いえ、私はまだまだ頑張れます。」
「僕もっ。まだまだ…」
「いいから、行け。」
ローゼンもティムもフラフラしている。
二人が抜けると、途端に荷重がかかってきた。
フォルダン公爵が力を強めて。
「なかなか、これは長引きそうですな。」
ディオン皇太子は頷く。
「ここで負けたら、大変な事になる。くそ…。絶対に勝たないと。」
ローゼンとティムは、フローラとアイリーンと共に、トイレに行った後に椅子に座って、
聖女リーゼティリアとフィーネ、神官長の癒しの力を受ける。
身体が楽になっていく。
栄養が入った水分補給とスーティリアが運んできたお握りを食べて、一息つく。
攻撃隊も、3人ずつ休憩に入る事になった。
ユリシーズがアイリーンを気遣って近づいて来て。
「アイリーン。身体の具合は?」
「まだまだいけるわ。大丈夫よ。ユリシーズも頑張って。」
「うん。俺は負けない。」
グリザスとモリスディンも椅子に座って。
モリスディンが呟く。
「久しぶりの戦いに身体がついていかぬな。」
グリザスは首を振って。
「そんなことは無い。さすが、モリスディンだ。鍛えていたのか?」
「まぁ少しは…。」
フローラはローゼンを気遣う。
「ローゼン様、心配ですわ。」
「フローラこそ、無理をするな…。」
30分休憩の後、皆、持ち場へ戻って行った。
次の休憩者はという感じで、交代で休憩を挟んで、黒竜魔王に挑んでいく。
その様子を神イルグと魔女オーネットは眺めていた。
イルグはため息をつき。
「苦戦しておるのう。4人の勇者と9つの聖剣でも難しいかのう。」
オーネットは。
「我が不肖の息子のせいですまぬの。お前さんはよくやった。後は皆の頑張りに期待するしかない。」
攻撃し続けていても、黒竜魔王は傷一つつかない。
皆、疲れてきていた。
シルバはしかし、ロッドを信じていて。氷の槍を投げつけながら。
「必ず、傷がつく。ここは弱点だ。皆、頑張ろう。」
サルダーニャも、炎の槍を投げつけて叫ぶ。
「ロッドの探索は信頼できる。皆、頑張るのじゃ。」
ロッドは稲妻の槍を黒竜魔王の首に投げつけながら。
「有難う。俺を信じてくれて。」
一晩中、攻撃を繰り返す。夜が明けて、光が差し込んで来た。
時間が長引けばそれだけ隙が生じる。
黒竜魔王の衝撃波を攻撃隊が受けてしまった。
ミリオンとファルギリオン、そして、リンドノールが吹っ飛ばされる。
岩壁に叩きつけられた。
ディオン皇太子が叫ぶ。
「ミリオンっーー。ファルギリオン、リンドノールっ。」
ツルハ医師が、騎士団見習い達に命じる。
「3人を回収。すぐに治療に入る。」
「「「はいっ」」」
ギルバートやカイル達や、フェデリック、フィリップ殿下が急いで走って行き、皆で3人を連れて来る。
ツルハ医師が状態を見て、聖女リーゼティリアや神官長、フィーネ、神官達が癒しの治療に入る。
フィーネも少しは腕が上がったのだ。癒しの他に切り傷位なら治すことが出来る。
ミリオンが右肩を抑えて。
「ぶつけちまったが、大した事はない。」
ファルナード(ファルギリオン)は腰をさすって。
「聖女様のお陰で大分楽になった。有難う。」
リンドノールは心配そうに二人を見ていたが、自分自身は大した怪我もなかったらしく。
「私は大丈夫だ。ちょっと背を打っただけだ。」
リーゼティリアはリンドノールに向かって。
「でも、癒しの力を…楽になりますわ。」
「すまない。」
戦いはまだまだ続く。
クロードがぐったりと椅子に座って休憩に入り、
「しんどい…。俺なんかは大した仕事していないのに。こうもしんどいとは…」
休憩に入っているグリザスは心配そうにクロードに近づいて。
「ああ…クロード。心配だ…。大丈夫か?」
「心配してくれて有難う。グリザスさんも、心配だよ。」
グリザスに抱き着いて、鎧の口元にキスをするクロード。
「栄養補給。これで元気になるかな。」
「恥ずかしい。クロード。」
ユリシーズが赤くなって。
「こんな時でもお熱いね…。」
モリスディンがぐったりと椅子に腰かけながら。
「この戦いが終わったら、もっといちゃついてくれ。俺も家に帰って妻や子供達に会いたい。」
この戦いは翌日も更に続き、ついに3日目の夜になってしまった。
皆、フラフラで、寝てもいないのだ。
怪我人も続出し、死人が出ないのが不思議なくらいであった。
そこに、今までこの物語に名前が登場しなかったアルク・ダンゼンという騎士団見習いがいた。黒髪の変哲もない青年である。
さすがに疲れたので、ちょいと休憩しようと、岩壁の方に移動し、もたれかかった。
このまま寝てしまいたい。ふと、赤い石のペンダントが落ちているのに気が付いた。
随分と古そうな。金属は錆びてしまっている。
思わず手に取れば、その赤い石は輝いて、アルクは気を失ってしまった。
そのペンダントを首にかけたアルク・ダンゼンだったものは、立ち上がり、そして、黒竜魔王に向かって走り出した。
ユリシーズの近くにいくと、走りざまにその腕にすうっと触れると、
「借りるわよ。」
そう言えば、アルクの手に金色に輝く剣が握られていて。
「私にやらせて。」
アルクは飛び上がる。金色の剣で渾身の力を籠めて、黒竜魔王の首に剣を叩き込んだ。
グオオオオオオオオーーーーーー。
ピキっと音を立てて、首にヒビがわずかにはいる。
それをディオン皇太子は見逃さなかった。
「攻撃隊、総攻撃だ。あのヒビを狙え。」
サルダーニャがロッドがシルバが、ミリオンがファルギリオンがリンドノールが、
メルディーナが、レオンハルトが、ザビトが次々と攻撃をする。
そして、グリザスとモリスディンが攻撃をした。
攻撃を加えるたびにヒビが徐々に大きくなっていって。
怒り狂った黒竜魔王は暴れ出す。ディオン皇太子達は必死で魔王が逃げ出さないように、縛り付ける。
最後にユリシーズの番が来た。
アルクが叫ぶ。
「ユリシーズ。決めなさい。」
「ああ、リリア、リリアなんだね。解った。俺が決めるよ。」
30年来の思いを込めて、ユリシーズは聖剣を握る。
魔力の羽を生やして飛び上がれば、そのヒビに思いっきり聖剣を叩きつけた。
ミシミシミシ。ひび割れは大きくなり。
グアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーー。
断末魔の悲鳴をあげて、黒竜魔王が崩れていく。
天井が崩れ落ち、あたりは地響きを立て始める。
スーティリアが巨大な魔法陣を展開して。
「皆、退却っーーーーーー。この中へ飛び込んで。」
100人近くの人数が殺到し、皆、魔法陣へ飛び込む。ギリギリだった。
全員退避した後に、全ては崩れ落ちて、そして3日に渡る黒竜魔王との戦いは終わった。
やっと討伐出来た。後は、事後の祝勝会関連と、主人公たちの結婚式を書かないと。もう少しでラストかな。




