鎮魂祭(ディオン皇太子)
鎮魂祭当日、王宮の庭で、ディオン皇太子殿下と、聖女リーゼティリアは、マディニア国王陛下や、グリザス達の見送りを受けた。
転移する同行者はセシリア皇太子妃、フローラ、勇者ユリシーズ、ローゼン騎士団長、ルディーン、勇者ネリウス、レオンハルト、神官長、フィーネ、ニゲル皇女リーナ、ジュエル皇女メルディーナ、魔界から第四魔国魔王ティム、そしてスーティリアである。その他に近衛騎士15名が同行する事となった。率いるのはシリウス・レイモンド近衛騎士である。そして、ニゲル帝国騎士、ロイエールとルーティスも同行してくれる。
グリザスは、転移魔法陣の上に乗り、転移を待っているディオン皇太子殿下と聖女リーゼティリアに頭を下げた。
「どうか、気を付けて。よろしくお願いします。」
ディオン皇太子はグリザスに向かって。
「お前も気を付けて過ごせ。間違っても、連れて行かれる事のないようにな。」
聖女リーゼティリアもグリザスの顔を優しい眼差しで見上げて。
「私も精一杯頑張ってきますわ。だから、貴方も…約束して下さいね。生きて必ずまた、会いましょう。」
グリザスは跪いて騎士の礼を二人に取り。
「お二人のお陰で、俺はこうして幸せな人生を送っています。本当に感謝してもしきれない。必ずまた、会いましょう。ディオン皇太子殿下、聖女リーゼティリア。」
転移魔法陣が作動する。
マディニア国王陛下が、ディオン皇太子達に声をかける。
「皆の者、頼んだぞ。」
皆、頷く。そして転移魔法陣が作動して、ディオン皇太子達は鎮魂祭の会場、国境へと転移した。
国境の鎮魂祭の会場では、周りの木々に聖女の紋章があしらってある皆が作った花が木々に飾り付けられている。
祈りを捧げる木製の台も完成されており、そこにも聖女の紋章がユリシーズによって細かく彫られていた。
会場ではアマルゼ王国皇太子、ジョセフと皇太子妃カロリーヌが、アマルゼ王国の近衛騎士達と共に待ち受けていた。
ディオン皇太子はジョセフ皇太子と握手をし。
「今日は有難う。ジョセフ。よろしく頼む。」
「いい天気になってよかった。こちらこそよろしく頼むぞ。ディオン。」
聖女リーゼティリアが、台の上に登る。
ルディーンが冠を捧げ持って、台の上に登り、身を屈めるリーゼティリアの頭に被せた。
冠を被ったリーゼティリア、その中央には美しい水晶が輝いている。
参列者に向かって。
「では、これから祈りの儀式を始めます。皆様も一緒に祈って下さいね。」
天に向かって両手を掲げようとしたその時、凄い風が吹いて、黒い渦が空間に出現し、緑のドロドロとした鱗を持つ、魚の化け物が次から次へと湧き出て襲ってきた。口が裂けて目がぎょろりと飛び出ている。
ディオン皇太子は壇上に飛び乗って、リーゼティリアを庇って、聖剣で魚の化け物に斬り付ける。
グアアアアアっーーー。魚の化け物は叫んで、ジュウウウウっと音を立てて消えていく。
セシリア皇太子妃達といた、フローラ、フィーネ、神官長、リーナ、スーティリアは、ユリシーズとローゼン、メルディーナ、ティム、ルーティス、ロイエールや近衛騎士達が守っている。
湧き出た魚の化け物を、ユリシーズとローゼンは聖剣を持って、次から次へと斬り付けて行く。メルディーナやルーティス達も、剣を振るって、魚の化け物達を斬り付け退治して行った。
アマルゼ王国のジョセフとカロリーヌはアマルゼの近衛騎士達が守っているようだ。
ネリウスとレオンハルトがそちらへ駆けつけたが、不思議と魚の化け物たちは襲い掛かってこなかった。アマルゼ王国の死霊関連の化け物だからか?
どの位、戦い続けてきたのであろう。
魚の化け物達は、次から次へと湧いてくる。
ユリシーズが叫ぶ。
「キリがないよーー。」
ローゼンがバサっと魚の化け物の胴体を斬り。
「耐えるしかない。ともかく、斬り続けるしか…」
しばらく、魚の化け物達を皆で、斬り付けていれば、渦の奥から巨大な目玉の化け物が飛び出て来た。
ギロリと黒い目玉が殺気を持って、皆を睨みつける。
周りに無数の青い人間の顔を着けている。
人間の顔は死霊である。
皆、口々に恨みつらみを口にしていた。
クルシイよう…。何でこんな所で死ななければならなかった・・
帰りたい。愛する恋人の元へ帰りたい。
助けて…助けてよ…
何の為の戦だ???何でこんな所で俺は…
その時、女の声がどこからか聞こえてきた。
「アハハハハハハ。皆、聖女リーゼティリアのせいよ。お前達が死んだのは、
殺しておしまい。憎い、聖女も、マディニア王国皇太子も。」
目玉から離れ、無数の青い首がディオン皇太子と聖女リーゼティリアを襲う。
台の下にいたルディーンが叫ぶ。
「祈りを。リーゼティリアっ。今こそ。」
「ええ。」
リーゼティリアは立ち上がり、両手を空に向かって掲げた。
水晶から強烈な光が発せられ、青い首の死霊たちは、悲鳴をあげる。
ぐあああああっーーー。
何だ?この光は…
あああああああああああああっーーー。
首は消えて行き、小さな青い丸い光に代わっていく。
木にくくり付けられていた聖女の紋章の花が、空へとゆっくり昇り始める。
それに釣られるように、青い丸い光も光の尾を引いて空に登り始めた。
台の下にいたフィーネ、リーナ、神官長も両手を組んで、祈り始める。
いつの間にか、魚の化け物の攻撃は止んで、
ディオン皇太子も、ジョセフ皇太子も、皆、参列した者達は祈り始めた。
目玉の化け物の周りに憑いていた、死霊たちも皆、青い光になって天に昇っていく。
それだけではない。付近の地からも青い光が湧き出て無数の魂が空へ空へと帰って行って。
恐らく200年前の戦場で彷徨っていたマディニア王国の黒騎士や兵士の死霊なのだろう。
目玉の化け物の周りの死霊が消えると、シュウウウウウウっと音を立てて目玉の化け物も消えてしまった。
女の声がする。
「おのれ。聖女っ。かくなる上は…」
黒髪のキツイ顔をした女性が、黒いフードとドレスを纏って空中に現れる。
台の上で鎮魂の祈りを行っている聖女リーゼティリアに襲い掛かった。
台の上で聖剣を構えているディオン皇太子と目が合う。
その時、セシリア皇太子妃が叫んだ。
「おやめなさい。貴方は自分の子孫を殺すのですか?ディオン皇太子殿下は、貴方の子孫にあたる方…。貴方だって子は可愛かったはずでしょう?」
女は空中で静止して、セシリアを睨みつけ。
「お前に子がいないくせに私の気持ちが解るものか…教えてやろう。ディオンとお前の間に子が出来ぬのは、私の力だ。私はアマルゼ王国の為に、200年前にマディニア王族マルセオ第一王子に近づいた女よ。
マディニア王族とアマルゼ王族の子が出来る事等、私が許さない。アハハハハハ。ディオン。私を殺せば王家は滅びるぞ。私はお前の祖先だからな。私の魂は200年前に今、繋いでおるわ。これは私の復讐よ。
だが、私はディオンを殺す事にためらいはない。さぁ、聖女リーゼティリアと共に滅びるがいい。」
その時、ジョセフ皇太子が、女に向かって叫んだ。
「もう、許してやってくれないか?今は和平を結び、同盟国として仲良くやっているのだ。
お前の働きのお陰で戦は終わったと聞く。我が祖先も感謝しておろう。聖女はお前のせいで昔、火炙りになったのだろう?だからもう、今世では許してやってほしい。」
ディオン皇太子は聖剣を鞘に収めて。
「俺は…聖女リーゼティリアを陥れた事を許してはいないが、我が祖先を産んでくれた事、それは感謝している。子を産んだ後、すぐに亡くなったと聞いた。
子は可愛くなかったのか?心配ではなかったのか?いかに、にっくきマディニア王国の王族の子とは言え、お前は母では無かったのか?」
女の夜叉のような、顔がフっと優し気な顔になって。
「可愛かった…。子が産まれてすぐに私は亡くなったから、傍に居る事が出来なかったけど…。産まれた子を見る事は出来た。いかに憎いマディニア王族の子だとしても、可愛かった…。聖女の呪いで、天候が不順で作物も取れず、病が流行っていて、とても心配だった…。
でも、私の子は育ってくれて、子孫を残したわ。憎いのに、マディニア王国全てが憎いのに…滅ぼしたい。でも…私の子は可愛くて可愛くて…」
空中から降りて涙を流す女に、カロリーヌ皇太子妃が近づいた。
そっと抱き締める。
「私には王子がいます。子が可愛い事、よく解りますわ。もう終わりにしましょう。
我がアマルゼ王国の為に感謝します。」
セシリア皇太子妃も近づき、女を共に抱き締めて。
「私もアマルゼ王国の王女です。でも、マディニア王国の事も同じ位、愛しい…。
貴方も…そして、戦で亡くなった沢山の両国の死者達も…国を想ってくれて有難う。さぁ…帰るべき所へ行きましょう。私達がお送り致しますから。貴方の子もきっとそこで待っていますわ。」
聖女リーゼティリアは、女に向かって。
「私を陥れた事は許せない。私は貴方のせいで火炙りになって死んだのだから。
でも、貴方も私を憎んでおいででしょう。聖女の祝福をして、アマルゼとの戦に駆り立てた本人なのですから。
でも、それはもう200年前の事、今は現世を生きるディオン皇太子殿下と、ジョセフ皇太子殿下に国の先々を任せましょう。」
女は頷いて。
「そうね…ディオン、ジョセフ。これからの国をよろしくお願いします。人々が戦で苦しんで死ぬ事のない国を…私からの願いですわ。」
ディオン皇太子は頷いて。
「任せておけ。ただし、こちらから戦を仕掛ける事はないが、仕掛けられた戦には、応戦する。黙って支配される程、俺は甘くないからな。」
ジョセフ皇太子も頷き。
「俺もディオンと同様だ。少なくとも、マディニア王国とアマルゼ王国は、戦に発展する事はないだろうが、ジュエル帝国は非常に怪しいからな。だから平和を約束する事は出来ぬが、少なくともこの二国は戦をすることはないと宣言しよう。」
二人の皇太子は握手をする。
女は満足そうに。
「他国に攻め入られないように願っています。私は逝くべき所へ逝きますわ。
それから安心して。200年前から魂は離したから、私が天に帰っても、マディニア王国の王族は滅びないわ。ディオン、ジョセフ、貴方達がこれから作る未来を楽しみにあの世から眺めています。」
女は青い魂になって、天に昇って行く。
空へ登って行く、聖女の花と共に青い儚げな無数の魂の光…
その美しき光景に皆、一様に魅入った。
皆で王宮に帰ってきた。
ディオン皇太子やセシリア皇太子妃達が、王宮の広間へ行ってみれば、
フォルダン公爵や魔族達がぐったりと毛布にくるまって、広間に寝ているのと、
騎士団見習い達がゆっくりと疲れたように休んでいる姿を見て驚いた。
「何だ?そっちも大変だったのか?」
グリザスが報告する。
「化け物をフォルダン公爵や魔王達が、退治してくれました。騎士団見習い達やミリオン達も俺が、アマルゼの死霊に引き込まれそうになったのを阻止してくれました。」
ディオン皇太子は満足そうに。
「そうか。皆、よくやってくれた。有難う。」
ミリオンがディオン皇太子に向かって。
「そっちも上手くいったようだな。」
「ああ、全て解決した。」
フローラが近づいて来て、拳を握り締め、ディオン皇太子に。
「次はいよいよ、黒竜魔王討伐ですわね。」
「ああ…次は黒竜魔王だな。」
ユリシーズが聖剣を握り締めて。
「30年来の決着がつくんだ。俺、頑張るから…」
クロードも聖剣を手に持ち、
「ああ…いよいよなんだな…。俺も頑張ります。ディオン皇太子殿下。」
ローゼンも腰の金色の聖剣に手をやって。
「長いようであっという間だな…。時が経つのは早い。力の限りを尽くそう。」
当初の聖剣の持ち主、フローラ、ローゼン、ミリオン、クロード、ユリシーズの顔を見つめる。
「道に連日聖剣が刺さっていて、7つも集め過ぎだと陰口を言われ続けた日々だったが。
預かっていた聖剣を皆に手渡す事が出来た。それから色々とあった。
本当に長いようで短い日々だったな。よろしく頼むぞ。」
そして、今は更に、ファルナードとネリウスという聖剣の勇者も協力してくれる。
聖剣の持ち主だけではなくて、魔界の魔王達も、頼もしい他の仲間たちの協力も得られる。
天窓から午後の日差しが差し込んで来る。
皆をねぎらいながら、ディオン皇太子は決意を新たに、先々の戦いに闘志を燃やすのであった。
グリザス達の鎮魂祭の王宮の様子は、黒騎士のお話の方に掲載しています。
こちらは、黒竜魔王討伐と、結婚式関連?ちょっと何話で終わるか、まだ考慮中です。(こちらはちょっと書くのが大変そう。色々とまだまだ長引くかも)




