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人間のお友達が出来ましたわ。まさか貴方がお友達になって下さるなんて。

フローラがローゼンと婚約してから、学園に登校し教室へ入ろうとしたら、突如、呼び止められる。

「フローラ様。」


振り返ればそこには物凄い目で睨みつけるマリアンヌが立っていた。

「この泥棒猫っー。」

いきなり頬をビンタされる。

「盗られる方が悪いのではなくて。」

フローラも負けていない。バシっとビンタし返した。マリアンヌがフローラを床に押し倒して、更にバシっとビンタをする。


「ローゼン様はわたくしの婚約者よ。汚い手で盗るなんて許せない。」

フローラは頭にきて、マリアンヌの長い金髪を引っ張る。

マリアンヌも負けていない。フローラの金髪の三つ編みを引っ張った。

ゴロゴロと転がって互いをひっぱだき、引っ掻きあう。


周りの生徒達は止めようにもあまりにも激しく取っ組み合うのでどうすることも出来ない。

誰かが先生を呼んだのか。しかし、先生もおろおろするばかりだ。

フィリップ第二王子が二人に駆け寄って。

「やめないかっ。マリアンヌっ。フローラっ。」

二人は揃ってフィリップ第二王子に向かって叫ぶ。

「殿下は黙っていて下さいっ。」

オロオロしていたマギーが叫んだ。

「おやめください。フローラ様っーーーーーー。」

突如。廊下のガラス数枚、粉々に砕ける。


近くにいた生徒達は悲鳴をあげた。幸い避けて、けが人は出なかったようだが。

他の先生方がマギーを捕まえて、連れて行こうとする。

フローラは追いすがって。

「マギーは悪くないっ、私が悪いのよ。だから連れていくなら私をっ。」

担任の男の先生が。

「マギー・エスタルは魔法を使った。危険人物だ。」

フローラは先生たちの前に立ちはだかり。


「マギーをお放し。マギーは我が大切な眷属。フローラ・フォルダン公爵家の名で命じる。

それとも、第二魔国、魔王が妹の私に逆らうというのか。」


フローラの頭に、角が浮かび上がった。

皆、悲鳴をあげて逃げていく。

マリアンヌは腰を抜かして、フィリップ第二王子は茫然と立ち尽くしていた。

マギーはフローラに抱き着いて。

「ごめんなさい。ごめんなさいっ。」

「いいのよ。私の為に…有難う。」

優しく抱きしめる。

フィリップ第二王子に向かって。

「マギーに害を及ぼさなければ、お前らに何もしない。」

「知っていたけど…父上から我が国は魔族と手を組んでいると。実際目の当たりにすると驚くな…」


マリアンヌがわめく。

「こんな悪魔っ。学園から追い出せばいいのよ。いえ、国から追い出してよ。」

王子がマリアンヌに向かって。

「何を言う。お前は国を滅ぼす気か?魔族を敵に回してどうするつもりだ。魔国はこの国の地下にある。主に第一魔国と第二魔国だ。手に手を携えて、秘密裏にやってきたのだ。我が権限を持って、学園にいられるようにしよう。」


フローラはほほ笑んで。

「有難うございます。フィリップ殿下。」

しかし、今回の件があってフローラは思った。

今までもマギーと二人、孤立していたけど、更に孤立する事になるなぁ。この学園で。

マギーがいればいいわ。マギーを守れて満足するフローラであった。


でも。それから数日後。

マギーが風邪を引いたとかで、学園をお休みした。

「ああーー。お弁当一人はつまらない。」

いつもはマギーと二人、教室で楽しく食べるのだが。今日は一人なので、寂しく食べている姿を人に見せたくない。


中庭に行きベンチに座り、お弁当を広げる。

サラの手作りだ。色々とオカズが入ってとても豪華である。

「どんな美味しいお弁当も、マギーがいないとつまらないわ。」

その時である。中庭の入り口から声をかけられた。


「あの…ちょっとお話があるのですが。よろしいでしょうか。」


そっちを見れば、ソフィア・アルバイン伯爵令嬢、以前、自分からフィリップ第二王子を盗った、地味で眼鏡をかけた少女が立っていた。

今までの事があるので、当然仲が良くはない。

「あら、なんの用かしら。相変わらず、さえない容姿ね。」

「ごめんなさいっ。フィリップ殿下の事は申し訳ないと思っています。」

いきなり謝るソフィアに驚く。

「かまわないわ。私が怖くなったのかしら…魔族だから。」

ソフィアは首を振る。

「いえっ。かえって興味を持ちました。」

「えっ???」

目をキラキラとさせて。

「魔族でいらっしゃるなんて、なんて凄いんでしょう。魔法もいろいろと使えるんでしょうね。」

「いえその…。」


首を振って。

「本当の姿でないと、大きな魔法は使えないし、万能って訳でもないのよ。」

「それでも凄いですわ。」

フローラは驚いた。

ソフィアはニコニコしながら。

「色々とお話を聞かせて下さい。よろしければ。あっ…今日はお願いがあって。」

「何かしら。」

「皆さんにお願いしているんですが、私達数人で今度、ユリシーズ祝祭日にバザーをやろうと思っているんです。」

ユリシーズが魔王を倒した日は国民の休日になっていた。


ソフィアは言葉を続けて。

「それで何かいらないお洋服とか、ぬいぐるみとか、小物とかありましたら寄付をお願いしたいのです。その収益を孤児院に寄付しようと。」

「ぬいぐるみとか小物は宝物だからあげられないけど、お洋服なら着なくなった物を差し上げられるわ。」


「有難うございます。助かります。良かったら祝祭日、マギー様と是非、バザーにいらして下さい。他にも出店している方がいらっしゃるんで、買い物をすることも寄付になると思いますよ。面白い物も見つかるかもしれませんし。」

フローラはソフィアをまじまじと見つめた。


自分と比べてなんて立派なんだろう。孤児のことなんて考えた事もなく、基本、他人なんてマギーやローゼン様、愛する父や姉、知人以外どうなっても構わないけど。

それでも、母を早くに亡くしているフローラにとって、もし父も姉もいなかったら孤独だったらどんなにか辛いだろう…ふと、孤児の子供達がかわいそうに思った。


「負けたわ。貴方に…。」

「え??」

「フィリップ殿下が選ぶはずよ。素晴らしいもの。」

「素晴らしくなんてありませんわ。地味な容姿ですし。この通り。」

ソフィアは自らを指さしてニコニコする。フローラも笑って。

「でも頭も良いですし。首席ですもの…。貴方は…。」

「有難うございます。あの…身分が下位の私から言える事ではありませんが、お友達になってくださいませんか?」

フローラは慌てて首を振って。

「下位のって。将来はフィリップ殿下と結婚なさるのでしょう?」

「うちが伯爵家なので、国王陛下の許可が下りないんです。でも、結婚出来なくても、フィリップ殿下のお役に立ちたい。事務官でも構わないと思っているんです。私。」

「国王陛下は、フィリップ殿下をもっと政治的に得のある令嬢と結婚させたいのね…。他の魔国の姫君でも狙っているのかしら…」

「きっとそうでしょうね。」


「解ったわ。お友達になりましょう。私のお友達になったからには…貴方の力になるわ。」


慌てて首を振って。

「いいんです。ただお友達になって下されば。魔界のお話を聞かせてくれませんか?私、魔界を色々と知りたくて知りたくて。もうウズウズなんですよ。」

フローラはソフィアと一緒にお弁当を食べながら、第二魔国の事を話してあげた。


マディニア王国の地下にある第二魔国。魔族達は地下で暮らしていて、そこはいつも暗闇に光が灯る世界だけれど。森の下にある場所は、光が差し込む場所もあって。


そこで農作物を育てていたりする。移動はドラゴンと呼ばれる小さな飛ぶ龍である。地下空間の天井は高いので、ドラゴンは暗闇も見えるが、乗る方は灯りを灯してドラゴンに乗り、操縦して暗闇の空を飛ぶ。建物はレンガ作りの建物が沢山立っていて、魔族達の市が頻繁に開かれている。


そこで、商品の売り買いをするのだ。第二魔国は彫金が得意で、アクセサリーや、凄く美しい細かい織物などをマディニア王国に売り出している。そのお金で人間界の服や食料等を買っているのだ。


フローラの話をソフィアは興味深く聞いて。

「美しいアクセサリーや織物ですか?王妃様が着けていらっしゃった首飾りとか羽織とかですかね?」

「そうね。他にもお金持ちが買って楽しんでいるわ。」

「もっと交流が増えるといいですね…魔族の方々が市を地上で開けるようになるとよいのではないかと。」


「人は魔族を恐れているわ。そうなるには時間がかかるわね…きっと。」

「少しずつでもいいんです。人と魔族の交流。もっともっと互いに利益を得て、仲良くできるそんな世の中…実現してみたい。それにはフローラ様。貴方がカギになりますわ。」

「私がカギに?」

「だってローゼン様と結婚なされば、人と魔族が結婚した最初の例になります。」

首をフローラは振って。

「最初ではないのよ。魔界には人の血を引いた魔族が何人かいるわ。」

「でも公には最初の例という事になります。良い看板になりますわ。私、事務官として協力します。」


ソフィアは燃えていた。

フローラはソフィアの手を握り締めて。

「貴方は素晴らしいわ。人と魔族は相容れる事は難しいと私は思う。でも…前に進む事は悪い事ではない。一緒に頑張りましょう。」

フローラは人間のお友達が初めて出来た。

ソフィア・アルバイン伯爵令嬢。彼女がお友達になるなんてなんて運命だろうって思うフローラであった。


こんなにソフィアと仲良くなるとは書いていて私も思わなかったです。二人を仲良くしたいなぁとは思っていましたが。

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