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皇太子殿下夫妻とお茶をしました。

フローラは薄桃色のドレスを着て、髪をアップに上げ、王宮のカフェに急いでいた。

午後2時にご一緒にお茶でも如何と招かれているのだ。ディオン皇太子とセシリア皇太子妃に。

皇太子殿下の元へ向かう前にローゼンと王宮の中にあるカフェで待ち合わせをしていた。


ローゼンは、奥のカーテンで仕切られた席で待っているはずである。

そのまま、見える場所で座っていたのでは、美しすぎて目立ってしまう。

他の貴族達から注目の的である。


カフェに入り、奥の席を目指して行けば、一人の女性に呼び止められた。

メルディーナ皇女である。

護衛騎士2人とカフェでお茶をしていたようで。


「あら、どこの誰かと思ったら、この間の小娘じゃないの。」


「これはメルディーナ皇女様。ごきげんよう。」


フローラはドレスの裾を両手で持ち、頭を優雅に下げる。


メルディーナはチラリとフローラの上から下までを眺めて。


「どこへ行かれるのかしら?」


「こうた…いえ、ちょっとそこまで。ローゼン様とデートですわ。」


「今、何か言いかけたわね。」


「時間がないので失礼致します。」


カーテンの奥にいるであろうローゼンに声をかける。


「フローラです。遅れてごめんなさい。ローゼン様。」


「いや。構わない。」


カーテンを開けて、ローゼンが顔を出した。


「これはメルディーナ皇女様。先日はどうも。」


ローゼンも優雅に挨拶をする。


「まぁ、ローゼン。貴方、いたのね。ごきげんよう。」


ローゼンの姿を見れば、メルディーナだけでなく、カフェにいた貴族の女性達はきゃあーーと声を上げてこちらを見る。


ローゼンはメルディーナに向かって。


「急ぎの用があるので、失礼致します。フローラ、行こう。」


フローラとローゼンは共にカフェを出た。


王宮の奥へ行き、ディオン皇太子殿下に面会を求める。


奥へ通され、ディオン皇太子の部屋の庭へ出れば、ディオン皇太子とセシリア皇太子妃、聖女リーゼティリアと一人の幼い少女が細長い四角いテーブルを囲って座っていた。


ローゼンをその少女が見れば、アッカンベーをしてきた。ローゼンはその少女を睨みつける。


フローラがその様子を見て驚いて。


「あの子はお知り合いですの?」


「憎たらしい聖女見習いだ。」


ディオン皇太子がローゼンに向かって。


「フィーネといい加減に仲直りしろ。ローゼン。」


「しかし、この女は我が騎士団の騎士を変な力を使って倒した女です。許せません。」


フィーネという名前にフローラは覚えがあった。


「もしかして、グリザス様のお知り合いのフィーネちゃんかしら。」


「え??私の事を知っているの?お姉さん。」


「ローゼン様の婚約者のフローラ・フォルダンです。以前、タダカツベアのぬいぐるみをグリザス様に差し上げましたわ。」


「あの時は…有難うございます。」


以前、タダカツベアの店でローゼンとイチャイチャしている所をクロードとグリザスに見られたのだ。口止めとして、大きなタダカツベアのぬいぐるみをグリザスにプレゼントしたのだが、グリザスはお世話になっているフィーネにあげたいが為にぬいぐるみを買いに来たのだと言っていた。だからそのぬいぐるみはフィーネの手に渡ったのであろう。


ディオン皇太子がきっぱりとした口調で。


「だが、フィーネの力は今や役にたっている。癒しの力、敵を倒す力、全てにおいて。

お前は北の牢獄へ送れと言ったが、俺は送らなくてよかったと思っている。この子は力の使い方を解っていなかっただけだ。お前が間違っている。謝れ。俺ではなくて、フィーネにだ。」


フィーネは震えながら。


「このおっかない人に私、殺されそうになったんだ…。怖いよーー。」


聖女リーゼティリアにしがみついて震える。


フローラはローゼンに向かって、拳を握り締めながら。


「フィーネちゃんを北の牢獄へなんて。許せませんわ。謝って下さいませ。」


ローゼンはフィーネの傍に行くと、跪いて、騎士の礼を取り。


「申し訳なかった。私が間違っていた。許して欲しい。」


フィーネはリーゼティリアの方やディオン皇太子の方を見てから、ローゼンを見て。


「解りました。私も騎士を倒した事を謝ります。ごめんなさい。仲直りしましょう。」


ローゼンに向かって手を差し出した。ローゼンは立ち上がると改めて身を屈め、優しくその手を握り握手をする。


セシリアが皆に向かって。


「さぁ、お茶にしましょう。今日、呼んだのは、見て頂きたいものがあって。」


フローラが疑問に思って。


「何ですか?それは…」


そこへルディーンが布に包まれたものを両手で持って現れた。


「これはフローラ様、ローゼン様、お久しぶりです。」


二人に挨拶をしてから、ディオン皇太子に向かって。


「聖女様の冠、お納めください。」


ディオン皇太子はリーゼティリアを呼び、


「出来たぞ。リーゼティリア。被ってみてくれ。」


「承知しましたわ。」


ルディーンが冠をテーブルに置く。


布を解けば中から、金色に輝く冠が姿を現した。細かい装飾、そして中央に美しい水晶がはめ込まれている。


皆、それを見てあまりの美しさにため息をつく。


聖女リーゼティリアは冠を手に取り、頭に被った。


空に手を挙げれば、冠が輝き、ふわりと地から気が昇って行く。

鳥が何かを感じたのか飛び立って…


フィーネがリーゼティリアの方を見て、


「凄いオーラを感じます。空に登っていく…綺麗なオーラ。」


ディオン皇太子もしみじみと。


「俺には見えないが…だが…感じる。癒しの力だ…」


フローラも思った。ああ…なんて癒される…。凄いわ…


ルディーンは嬉しそうに。


「苦労した甲斐がありましたよ。ああ…なんて凄い気だ…」


しばらく皆、ぼうっとリーゼティリアが放つ気を眺めていたが、リーゼティリアは冠を外して、テーブルに置き、ルディーンに向かって。


「ありがとうございます。期待以上の気の流れですわ。素晴らしい水晶…。デザインも申し分なく力を発揮するデザインです。これで鎮魂祭、沢山の魂を天に返してあげられそう…」


「そいつはよかった。ほっとしましたよ。」


ディオン皇太子もルディーンに向かって。


「ありがとう。ルディーン。お前のお陰だ。感謝する。」


「いえ…色々とありましたが、こうして出来上がってよかったです。」



冠は使用人に大切にしまわせるように命じて、

皆、テーブルの前の席に座る。

ふと、セシリアが、ディオン皇太子に向かって。


「せっかく、ルディーンが来ているのですから、この際、お聞きしたい事が。

側室契約とか愛人契約とか手続きが進められているようですけれども…私、報告受けていませんわ。」


ディオン皇太子が紅茶を飲みながら。


「側室が一人位増えても問題なかろう?今、既に二人いる事だしな。」


「おおありですわ。ルディーンは男性です。」


「そうだな…クロード達にも反対された。だから、愛人契約に変えようとしている所だ。」


「愛人ならばよいと思いますわ。ただ、逃げられないように、契約違反の場合は罰則を設けておいた方がよいかもしれませんわね。」


ルディーンは慌てたように、


「契約違反の罰則って…」


セシリアは立ち上がり、ルディーンの傍に行って。


「王家を舐めないでいただきたいですわ。愛人契約でも王家を相手に契約をするのならば、正式な契約ですから、罰則を設けさせて頂きます。どのように致しましょうか?ディオン様。」


「週2回、奉仕する。一月、金3でどうだ?正騎士と同じ給与額だ。お前が逃げて、奉仕できなかった場合は…どうしてやろうか。ただし、俺の都合で回数が減った場合は仕方がないこととする。金は払う。」


フローラがにっこり笑って。


「フォルダン公爵であるお父様にご相談なさったらいいですわ。それはもう、素晴らしい罰則を提案してくださるかと。」


「うわっ…勘弁してくださいよ。フォルダン公爵が考える罰則って、絶対にえげつないですから。」


ルディーンにもお父様の怖さが解っているみたいだわ。


ディオン皇太子はフローラに。


「契約は魔族が使う特別な契約紙を使用したいんだが…」


「契約違反に対して罰則が落ちる物がいいかしら、それとも強制力がある紙がいいかしら。」


「契約違反に対して罰則が落ちる紙の方が楽しそうだ…」


ニンマリ笑うディオン皇太子。ルディーンは降参したという感じで頭を抱え。


「アンタたちは皆、怖すぎますよ。解りました。愛人契約受けましょう。罰則だけは勘弁して下さい。」


リーゼティリアがポツリと。


「そういう罰則って殿方のいけない所に雷が落ちるとか…その手の物なのかしら…」


男性陣がそれを聞いて皆、真っ青になった。


セシリアは笑って。


「まぁ怖い事…そのような罰則がある契約を皆様、結ばないように気を付けて下さいませ。」


ディオン皇太子は頷いて。


「騙されて結ばないように気を付けるようにしよう。ルディーン。安心しろ。罰則はなしにしておいてやる。」


「有難いですな…」




「あら、私もお茶会に呼ばれたかったですわ。」


声のした方を向くと、メルディーナ皇女が、護衛騎士2人と立っていた。


真っ赤なドレスを着て、こちらに向かってくると、


「ディオンと、ローゼンの間に座りたいわ。開けてくださいませ。」


仕方がないので、ローゼンとフローラとルディーンは席をずれる。


ディオン皇太子の斜め前にセシリア皇太子妃が座っていて、その正面にメルディーナが座る事となった。隣はローゼンだ。


ディオン皇太子が不機嫌に。


「メルディーナ、いい加減に帝国へ帰れ。ファルナードをクズ発言し、奪還発言をした時点で我が国と帝国の仲は冷え切っている。戦にならないのは、アマルゼ王国を挟んでいる事と、互いに戦をするのは利益がないと解っているからだ。」


「嫌よ。私はこの国で暮らしたいわ。貴方、私を娶って頂戴。当然、正妃として。」


「俺の妻はセシリアだ。アマルゼ王国に失礼だと思わないのか?」


「アマルゼ王国に圧力をかけようかしら。我が帝国とアマルゼ王国は取引があるわ。

アマルゼ王国から泣きつかれれば、貴方もセシリアを離縁するしかないわね。」


「ふん。それでも…帝国のメギツネを嫁に迎える訳にはいかない。また、ローゼンも、他の公爵家もお前を嫁に迎える訳にはいかないのだ。お前は我が国の社交界から嫌われている。

それは我が母上が帝国嫌いだからだ。」


フローラが納得したように。


「それで、いつも目の敵にしている私達フォルダン公爵家を庇ったんですね。」


メルディーナが怒って。


「どういう事よ。」


「俺の祖母が帝国から来た王女だって言うのは知っているよな?」


「ええ…私のおじい様の妹君ですわ。」


「母上はその帝国から来た前王妃に虐められまくっていた。アイルノーツ公爵も手を焼いていた。アイルノーツの妹が俺の母だ。そりゃもう帝国嫌いになる。いつも帝国と違って田舎の国はが口癖だったからな。だからお前がもし、この国に嫁に来たとしても、社交界からつまはじきにされるぞ。」


ギリギリと悔しそうなメルディーナ。


リーゼティリアが立ち上がって。


「お帰りはあちらですわ。メルディーナ様。」


出口を指し示す。


「覚えてらっしゃい。ディオン。」


そう言うと、メルディーナは立ち上がって、その場を去っていった。



「ハァ。しつこい女だ。早く国に帰って欲しい。」


ディオン皇太子はため息をつく。


ローゼンがディオン皇太子に。


「それはそうと、鎮魂祭の準備を本格的にしないとならないです。皇太子殿下。

如何いたしますか?」


リーゼティリアは。


「祈りを捧げる台が必要です。皆さんが作ってくれた花を持っていって、木々に飾らないとならないですわ。」


「正騎士達にやらせるか…。国境まで移動には魔族の転移魔法の協力が必要だな。」


ルディーンが紅茶を飲みながら。


「それじゃ俺が転移魔法を使って、移動を手伝いましょうか?人数が足りなけりゃスーティリアとミリオンにも手伝って貰いますかね。」


「それは助かる。よろしく頼む。」


その後、美味しいケーキや焼き菓子を食べ、紅茶を優雅に楽しみ、茶会は終わった。


フローラはローゼンと共に、王宮内を歩きながら。


「フィーネちゃんと仲直り出来て良かったですね。」


「私も大人げなかった…意地になっていた。皇太子殿下が認めた聖女候補。もっと早く仲直りをするべきだったな。」


フローラはローゼンの手を握り締めて、そっと囁く。


「ローゼン様、添い寝して差し上げましょうか?この前は我慢出来なくて、求めて来たローゼン様は可愛かったですわ。」


ローゼンは立ち止まって、真っ赤になった。


普通のカップルなら、婚前前の男性が添い寝に我慢出来なくて、女性に飛び掛かっていったような会話であるが、フローラとローゼンである。その事実はフローラが触手を持つ魔族なのだ。察して欲しい。


ローゼンに手を引かれて、人気のない庭に出た。

夕陽がローゼンの姿を照らして、それはそれで美しい。

金髪がキラキラして、思わず見とれていると、聞かれた。


「フローラに聞きたい。魔族は皆、男女問わず触手を持っているのか?クロードも、ミリオンも、ルディーンも…魔国の魔王達も…。それから、魔族の精は中毒性があるのか?大事な事だ。」


「高位魔族なら、当たり前に持っていますわ。男性は6本、女性は5本所持しています。

ただ、男性は使うのをヨシとしない風潮がありますわ。お前は触手に頼らないと、女性を喜ばす事が出来ないのかと、魔族の間で馬鹿にされますから。

ただ、高位魔族の女性に襲われそうになった時は使います。支配したい。って気持ちが高位魔族である程、女性も強いですから。襲われたら男性もプライドがどうのこうのって言っていられませんわ。勝つ為に1本多いのですわ。

中毒性については、それを願えば、中毒にすることが可能です。そうでないと、ミリオンやルディーンのような遊び人の方は遊べなくなりますから。」


「君は私の事を…中毒にしたのか…」


ああ…怒っているわ。どうしましょう…


「だってあまりにも悲しかったから…貴方はとてもモテますわ…」


「もし、ルディーンが悪意を持った男だったら、皇太子殿下は操られていたかもしれない…。君が悪意を持っていたなら…私は中毒性を盾に何かを要求されていたかもしれない。ユリシーズがこの間、そのことを心配していた…。だが、私は答えたよ。フォルダン公爵や君や、クロード、アイリーン、ルディーン、私が知っている魔族は皆、悪意を持っているとは思えないような人達だ。むしろこの国の為に、皆、一生懸命働いたり、学んだりしてくれているってね。クロードも、魔族を信じて欲しい。マディニア王国発展の為に働きたいって改めて言っていた。ああ…だから、何がいいたのかというと、私はフローラを愛しているって事だ。もう、離れる事は考えられない。そして、魔族を信じたい…。」


ぎゅっとローゼンに抱きしめられた。


「ああ…幸せですわ。ローゼン様…。私はローゼン様を操って国に害を及ぼすなんて考えていません。だって、この国で私は育ったのですから。この素敵なマディニア王国を愛していますわ。ローゼン様、そして貴方の事も愛していますわ。」


ぎゅっと抱き返して、互いに口づけを交わす。


そして、フローラは囁いた。


「今宵も素敵な夜にしましょう…ローゼン様。」


ローゼンは何とも言えぬ顔をしたが、フローラの手を取って。


「さぁ、帰ろう。日も暮れてしまう…寒いだろう?」


「ええ…参りましょう。」


男としてのプライドが許さないのであろう。


ああ…そういう所がまた、可愛いわ。ローゼン様。


二人は帰途に向かうのであった。空にはキラキラとした星が瞬き始めたのであった。


ローゼンとフィーネの仲直り、そして冠がやっと出来上がりました。ルディーンも愛人契約を結びめでたしめでたし。

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