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ローゼン様のプライド・・・でも私は支配したい。

フローラが学園から帰ってくると、クロードが訪ねてきて、

部屋に通せば、頼みごとをされた。


「ジュエル帝国の王宮にある秘蔵図書にグリザスさんが人間に見える事が出来る魔法が書いてあるらしいんだ。その図書を探すのにフローラとマギー。サラ。人手が欲しい。協力してくれないかな。」


ジュエル帝国とは、隣国アマルゼ王国の隣にある広大な帝国の事である。


フローラは大事な友達のクロードの頼み事である。

快く即答した。


「協力するのは構わないわ。マギーには私からお願いしておくから。」


サラも紅茶とチョコレートケーキをクロードに差し出しながら。


「私も協力することを惜しみませんわ。」


クロードは礼を言う。


「有難う。二人とも。でも、とても危険な事なんだけど…夜に忍び込んで、こっそりやる予定だから。」


フローラが驚いて叫ぶ。


「えええええ?それって、捕まったら、マズイって事じゃないかしら。」


サラも首を振って。


「捕まったらそれこそ、牢獄行きですよね??」


クロードは慌てて。


「スーティリアも連れていくから、危なくなったら、すぐに女性陣を優先して、転移させるから。後、ロッドとシルバにも協力を頼んでOKしてもらえた。高級豆菓子5袋で。」


フローラが呆れて。


「あの人達、本当に豆が好きなのね。第三魔国と第五魔国大丈夫かしら…。」


クロードがハハハと笑って。


「いい奴らだよ。シルバも改心してくれた。これからも友達でいたいってさ。

それからミリオンとルディーンも協力してくれるから。

9人で秘蔵魔法書の中から、該当する魔法を探すんだ。スーティリアが用意してくれる検索水晶を使えば、大量にある書物の中から見つかるはずだよ。その間、外ではディオン皇太子殿下、ローゼン騎士団長、ユリシーズ、グリザス、リンドノールが敵をひきつけておいてくれる。」


「まぁ、マリアンヌ様も安心して下さるわね。あら?」


フローラは疑問をぶつける。


「リンドノールって、どなたかしら?」


「昨日、ジュエル帝国の勇者ファルギリオン、第三王子ファルナード殿下の事だけど。後、その従者の竜騎士リンドノールを王宮にディオン皇太子殿下が保護したんだ。でも、それは秘密の事項で。何故なら、彼らはジュエル帝国から逃げてきて、ロベルト皇太子からあまりの勇者の力の強さに命を狙われているんだって。ファルギリオンの聖剣を王宮の庭から取ってくる事にもなっているんだ。」


「そうなのね。でも、クロード。攻撃陣が少なすぎない?」


「そうなんだよねーー。ミリオンにも攻撃陣に回って貰おうかな。」


サラが人数を数えて。


「男性4人と女性4人が、図書捜索をするんですね…攻撃する方たちが6人。」


クロードがため息をついて。


「あああ、時間との勝負だよね。だから出来るだけ、人数を揃えたいんだ。」


フローラが頷いて。


「わかりましたわ。ともかく、私とマギーとサラは協力します。グリザス様の為、頑張りましょう。」


「有難う。フローラ。そしてサラ。」


クロードが帰って行くと、フローラはサラに頼んでバスケットにサンドイッチと珈琲の軽食を用意し、王宮へ転移する。


今回のジュエル帝国の件でローゼン様にもお話を聞きたいわ。


騎士団事務所へ行くと、まだ仕事をしているであろうローゼンの部屋を訪ねた。


「ローゼン様、フローラです。」


「入ってくれ。」


ローゼンは積み上げた書類を前に書き物をしていた。


顔を上げるとフローラに向かって。


「仕事中に来るとは珍しいな…。フローラ。」


「たまには差し入れを持ってきたのですわ。」


バスケットを掲げて見せる。


「有難う。一休みすることにしよう。」


ソファに移動するとフローラと向かい合って座る。


フローラはバスケットの中からサンドイッチと珈琲を出しだ。


珈琲は熱を逃がさない容器に入っていて、そこからカップに注ぐ。


「お仕事お疲れ様。さぁどうぞ。」


「ありがとう。」


カップを受け取ると珈琲を飲むローゼン。


「温まる…。」


「サンドイッチもお食べになって。」


頷いて、優雅にサンドイッチを摘まんで、食べ始めるローゼン。


フローラはローゼンに向かって。


「ジュエル帝国へ聖剣と図書捜索の件、クロードから聞きました。私とマギーとサラも協力いたしますわ。まだマギーに話していないですけど、OKだと思います。」


ローゼンは眉を寄せて。


「あれ程、私は反対したのに…君を危険な目に合わせたくない。」


「スーティリアも一緒ですから、大丈夫ですわ。危なくなったら逃げます。それより。ローゼン様の方が危険ですわ。敵をひきつける役目ですから。攻撃陣の6人は。」


「そうだ。私達は聖剣を持って帰ると同時に、図書捜索隊から目を逸らす役目もあるからな。

敵は聖剣を厳重に警備しているだろう。血眼になって勇者ファルギリオンを探しているのだから。それからフローラ。私達皆、マディニア王国の人間だという事を相手にバレてはまずい。国の問題になるからな。特に皇太子殿下は…」


「すると、仮面を被りマントを羽織るのですね。」


「ああ、そういうことだ。それに自分の聖剣を私達は使う訳にはいかない…。それだけで、バレるからな…。」


「それでは余計、心配ですわね。聖剣が使えないとなると。」


気を引き締めてかからねばならないわ。思ったより危険な事を承諾したような。

ローゼン様の事がとても心配…


「今宵は添い寝したいですわ。ローゼン様…」


ローゼンの顔を見つめる。


ローゼンは困ったように。


「やはり婚姻前の男女が同じベットというのもまずい。

私に関して嫌な噂もたっていたことだし、裸を君に見せびらかしている変態とか。

しばらく控えたい。」


「嫌ですわ。そんなの寂しすぎます。」


ソファを立ち、ローゼンの隣へ移動する。


「この前、酷い事を私はしたから、嫌いになったのですか?」


「言ったはずだ。フローラと一緒に過ごす時間は宝物だと。嫌いになるなど有り得ない。

愛しくて愛しくて仕方がない。フローラ。」


ローゼンはフローラを抱き締める。


フローラはローゼンの温もりを感じながら。


「それなら、もっと宝物の時間を増やしましょう。私は少しでも貴方の傍にいたいですわ。」


「ああっ…フローラ。私は…」


何か言いたそうなローゼンであったが、フローラと離れて。


「申し訳ないが、しばらく添い寝は遠慮してもらいたい。」


そう言うと、立ち上がって。


「仕事に戻らねばならない。サンドイッチと珈琲を有難う。」


取りつく暇もなく、ローゼンは仕事机に戻って仕事を再開した。


フローラは泣きたくなった。

そして、泣き叫んだ。


「うわーーーん。ローゼン様のバカァ。」


ぎょっとしたようにローゼンはフローラの方を見た。



立ち上がったローゼンに5本の触手が攻撃する。

しかし、彼に絡まることなく、それは彼の顔の右横に左横に、胸の左側、腰の右側、足の左側の壁に鋭く突き刺さった。

壁にひびが入る。


ローゼンは身体の左右の壁に触手が刺さった状態で身動きが取れず、フローラを見つめながら。


「フローラ、人が来るかもしれない。すぐに触手をしまうんだ。」


「だってローゼン様が…」


「フローラっ。」


フローラは背から伸びていた触手をシュルシュルと音をさせてしまう。

ローゼンは胸に手をやって、ふうと息を吐いて。


「ディオン皇太子殿下も、ユリシーズも、魔族相手に離れられないのは、もしかして、魔族は…とても危険な物を持っているのではないのか?

あの夜を望んでしまう。どうしようもなく…。傷ついた、プライドも地に落ちた男として最低の夜を…。それはローゼンシュリハルト・フォバッツア公爵として、誇り高きマディニア騎士団の騎士団長として許されない事だ。

かといって、君と婚約破棄をする選択は私にはない。

私が君に望む事は一つ。普通の夫婦のようになりたい。すべてにおいて。

だから婚姻するまでは、ベットは共にしない。婚姻してからは、男としての役割を遂行させてもらう。このプライドにかけて。」


フローラは涙をぬぐって。


「確かに、魔族は特別な物を持っていると、お父様から聞いた事があります。

でもでも…私… 私は貴方を支配したい。支配したいですわ。」


二人の視線がバチバチと絡み合う。


フローラは魔族の姿になると、怪しげに笑って。


「望むならば、かなえて差し上げましょう。その時だけ、プライドを捨てればよいのですわ。ローゼン様…」


ローゼンに近づくと、優しくその頬を撫でる。


ローゼンはどこか寂し気な顔をして…


「プライドを捨てたら、私ではなくなってしまう…。フローラ、すまない。君の支配を受ける訳にはいかない。もう…これから先、ずっと…」


魅了の花びらをローゼンの魂に絡みつかせる。


しかし、決意が固いのか、断固としてローゼンの魂はそれを受け付けなかった。


フローラは涙を流す。


「ローゼン様…愛しております。貴方にもっと触れたい…」


ローゼンの魂が揺らいだ。


フローラは泣きながら呟く。


「添い寝が出来ないなんて、悲しすぎますわ…」


揺らいだ魂に魅了の花びらが入り込んだ。


ローゼンは瞼を瞑って。


「私の負けだ…。今宵、一緒に添い寝してほしい。ただ…酷い事はしないでくれ…。

頼むから。」


「ええ…今宵はしませんわ。貴方が我慢できなくなった時にして差し上げます…

愛していますわ。ローゼン様。」


二人は口づけを交わす。


静かに冬の日が暮れようとしていた。


ローゼン様が あの夜を望んでしまう云々の下りの言葉、プライドの高い彼らしくてお気に入りです。

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