ローゼン様と仲直りしましたわ。
フローラが学園の門をマギーと共に出ると、公爵家の馬車が待っていて、サラとルシアがいつものごとく、迎えに来ていた。
今日はローゼン様の事が気になって、授業が頭に入らなかったわ…
ローゼンをベットに放置したまま、屋敷に帰ってきてしまったのだ。
心配で仕方がなかったので、クロードに様子を見て来てくれるように頼んだのだが。
サラがフローラの姿を見た途端、
「クロード様から伝言です。ローゼン様が学園が終わったら部屋に来るようにおっしゃっていたと。どういたしましょうか?転移鏡を使いますか?」
マギーがフローラに。
「転移鏡を使って行かれた方がいいです。フローラ様。」
フローラは頷いて。
「それじゃ、マギー、又、明日。サラ、ルシア、マギーを送ってあげて頂戴。」
サラもルシアもお辞儀をして。
「承知いたしました。」
転移鏡を展開し、ローゼンの屋敷へ転移した。
あああ…でもどんな顔でお会いしたらいいのかしら。
トントンとローゼンの部屋をノックすれば、
「どうぞ。」
という声がして、中に入る。
「あの…ローゼン様…。具合は如何ですか?」
恐る恐る尋ねながら、ローゼンの姿を探してみれば、きちっと服を着て、ソファに腰かけていた。
フローラに向かって手招きをする。
「傍においで。私は大丈夫だから…。話をしよう。」
ローゼンの傍に近づけば、立ち上がって、フローラをいきなりお姫様抱っこした。
「キャッ…。ローゼン様っ。」
抱き上げたまま、ソファにローゼンは腰かける。フローラを横抱きにして、
そして微笑みながら。
「やっと君に触れる事が出来た。」
「私は酷い事をしましたわ。ユリシーズが受けたような…酷い事を。」
フローラの言葉にローゼンは愛し気にその身体を抱き締めて。
「私の方こそ、謝らなければならない。不安な気持ちにさせてすまなかった。
君と言う者がありながら、女性と二人でカフェに入るなど、してはいけない事だ。
今度から二度としないと誓おう。」
「アンリエッタ様の事…、本当の気持ちをお話下さいませ。私は聞きたいのです。」
身体を離して、フローラの顔を見つめながら、ローゼンは思い出すように。
「彼女は夏空のような人だ…。私は君に謝らなければならない。
2年程前に良く騎士団に彼女は遊びに来ていた。
朗らかでよく笑って、近衛騎士達の人気者だった。
時々、話をする機会があったのだが、楽しかった…。
恋といえるかどうか、解らないが…。あの笑顔を見る事に幸せを感じた。
勿論、私には当時、マリアンヌと言う婚約者がいたから、それ以上の関係に進む事はなかった。
王宮の廊下で声をかけられて、懐かしさを感じた。過ぎしの夏の日を、彼女の笑顔を見たいと望んでしまった。
だが、今の私にとって一番大事な人はフローラ、君だ。
彼女が夏空なら、君は春風のような…
頑張り屋で前向きなフローラが愛しくてたまらない。
愛している…どうしようもなく…。」
「ローゼン様…私も愛していますわ。」
「昨夜は君に触れられない事が一番辛かった…。この手で抱き締めたかった…
フローラの身体を感じたかった。」
再びローゼンはフローラを優しく抱きしめてくる。
フローラはローゼンの胸に顔を埋めながら。
「もう少し、お休みになった方がいいですわ。辛いでしょう?お身体…」
「添い寝してくれるか?」
「ええ…喜んで。」
ローゼンはフローラを優しく抱き上げたまま立ち上がり、ベットに連れていって、そっと下ろす。
自分も、そのままベットに横たわって。
フローラはローゼンの身体をそっと引き寄せる。
胸のあたりに顔が来るように。
「制服でごめんなさい。着替えてきましょうか?」
「このままでいい…。私が眠ったら、家に帰ってくれ。」
そう言うと、ローゼンは甘えるようにフローラの胸に顔を寄せて、瞼を瞑る。
そしてポツリと呟く。
「私は幸せだ…。君と出会えて楽しい事を色々と教えて貰えた。
フローラと一緒に過ごす時間は宝物だ。新しい家族も出来た。アイリーンやユリシーズ、クロードにグリザス。皆、私の家族みたいなものだ。
マディニア国王や、ディオン皇太子殿下のような、よい主君に恵まれた。
有難う…。私を婚約者に選んでくれて。」
「ローゼン様…私もお礼を言わなくてはいけませんわ。
こんな私を愛して下さって、有難うございます。
これからも、沢山、楽しい事をしていきましょう。」
優しくローゼンの髪を撫でる。
ローゼンはそのまま寝息を立てて眠ってしまった。
離れる事も出来ずに、いつまでもフローラはその寝顔を見つめているのであった。
何とも言えぬ幸せを感じながら。
ローゼン様はフローラの事が大好きなようです♡
彼にとって酷い事をされても、その事実がふっとぶ程のLOVEぶりには驚きました(笑)




