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ちょっとした悪事に手を貸してしまいましたわ。

翌日の夕方、フローラがアイリーンとユリシーズと共に居間で紅茶と焼き菓子を楽しんでいると、ディオン皇太子殿下が訪れた。


「何の用かしら…」


フローラとアイリーンに用があると言う。サラが応対して客間に通したとの事。


ユリシーズも二人についてきて客間に向かいながら。


「気になるから、俺も立ち会うよ。」


アイリーンがユリシーズの方を振り向いて。


「そうね…。3人で応対しましょう。」


客間では、ディオン皇太子がソファに腰かけて待っていた。


3人がディオン皇太子の目の前のソファに腰かける。


ディオン皇太子は出された紅茶を飲みながら。


「二人に頼みがある。私的な事だ。ルディーンを捕らえたい。逃げられた。」


フローラが驚いて。


「捕えたいって??何か悪さでもしたのですか?」


「不敬罪だ。俺以外に、性的な事が出来なくなるような首輪が欲しい。」


それを聞いた3人は固まった。


フローラは思った。


大丈夫かしら…相当、ルディーンの魔力にやられているわね。いえ、魅力かしら。


アイリーンが優雅に紅茶を飲みながら。


「要するに責任を取れという事ですわね。皇太子殿下に手を出した事に対しての。

よろしくてよ。そのような首輪ならお父様に頼めばご用意できますわ。」


ユリシーズが立ち上がって。


「ディオン皇太子殿下、勇者としてそれは間違っていると思います。

首輪をつけて人の心が手に入るのでしょうか?それに、皇太子妃様も悲しみます。」


まっとうな正論にディオン皇太子は。


「俺の方が囚われてしまったのだから仕方がない。…セシリアには了承を得ている。」


フローラも立ち上がり拳を握り締めて。


「皇太子殿下が苦しまれているのなら、このフローラにお任せ下さい。

ルディーンをおびき出すのは簡単ですわ。アクセサリーを作りたいと言えば我が公爵家に来るでしょう。彼は商売人ですから。そこをとっ捕まえて首輪を着ければ、後は皇太子殿下の意のままですわ。」


アイリーンがまっすぐディオン皇太子を見つめながら。


「自由を奪うのは得策ではないですわ。彼は商人であり、情報屋でもあるのですから。

性的な事とは別に首輪に強制的に夜は王宮に戻ってくる力をセットしておきましょう。後はお好きなようになさったら如何?」


納得いかないというユリシーズに向かってアイリーンは。


「皇太子殿下には恩もあるのよ。恩を返さなくてはいけないわ。例えそれが犯罪に近いものであっても。」


フローラもユリシーズに諭すように。


「それが貴族というものよ。ユリシーズ。」


ユリシーズはしぶしぶ頷いた。


ディオン皇太子は満足して。


「それでは、手筈を整えてくれ。俺が奴に首輪を着ける。よろしく頼むぞ。」



フローラは玄関でディオン皇太子殿下を見送ってから思った。


私も人の道としてどうかと思うわ。


でも、ここで恩を売っておけば、将来必ず有益になる。ローゼン様の為にもなるわ。


頑張らないと。




そして、翌日、ルディーンに連絡を取った。


「新しい髪飾りが欲しいの。お姉様も欲しいと言っているわ。オーダーメイドにしたいから、お屋敷に来て頂戴。」


すると、ルディーンは喜んで。


「午後には伺います。春を思わせる物がいいですかね…」


「相談しましょう。」



そして、ディオン皇太子に連絡をすれば、ルディーンが訪問する時間前にこっそりと来て、

客間に潜んだ。


約束した時間少し前にルディーンは来てサラに客間へ案内させる。

フローラとアイリーンは客間にて応対する為にソファに座っていた。


客間に足を踏み入れた途端、ルディーンは身を翻して、客間から出ようとした。


扉が閉まって開かない。


フローラとアイリーンを睨みつけて。


「何故、部屋に結界が…?これでは魔法が使えない。」


アイリーンが立ち上がって、手に首輪を持ち。


「これを貴方に着ける為よ。さぁ、彼は魔法を使えない。皇太子殿下、お好きになさって。」


ディオン皇太子がカーテンの裏から現れる。


ルディーンは腰から細い刀身の剣を鞘から抜いて、ディオン皇太子に向かって構える。


ディオン皇太子は聖剣を鞘から抜いて。


「お前、腕に自信がなかったはずだが…?」


「さぁ?どうでしょうかね?」


「わざと俺が夢魔に襲われた時に助けなかったのか?」


「だって…皇太子殿下が食われるのを見るのもまた、楽しいじゃないですか。」


そう言ってルディーンは斬りかかった。


ディオン皇太子は聖剣で受ける。


客間ですさまじい剣と剣のぶつかり合いが始まった。


何合も打ち合う。ルディーンの剣は細身だが聖剣と打ち合っても折れなかった。


フローラはアイリーンと共に部屋の隅に逃げる。


ディオン皇太子は楽しそうに。


「聖剣でも壊れないとは凄い剣だな…」


ルディーンは舌でぺろりと刀身を舐めて。


「魔剣の部類ですよ…。護身用が役に立つとは…」


ディオン皇太子は思った。


この客間で聖剣の力を爆発させるわけにはいかない。


さて、どうするか…


すると、ルディーンは窓に近づいて。


「魔法は使えないが…逃げる手は他にもあるでしょ。」


そう言うと大きな窓に体当たりをした。


ガシャンと音を立てて、窓ガラスが割れる。


テラスに飛び出ると、2階からふわりと一回転をし、地に着地して、魔法陣を展開しルディーンの姿は消えた。


ディオン皇太子はアイリーンとフローラを気遣う。


「大丈夫か?二人とも。」


部屋の隅で伏せていた二人は立ち上がり、


フローラがアイリーンを庇うように。


「大丈夫ですわ。部屋の隅にいましたから。」


アイリーンは微笑んで。


「面白い見世物でしたわ。でも、首輪を着けられずに残念でしたわね。」


ディオン皇太子は腕を組んで。


「さてと、次なる手はどうするか…アイリーン、その首輪、俺が貰っていっていいか?」


アイリーンは金の首輪をディオン皇太子に渡して。


「何か考えがあるのね?」


ディオン皇太子はにやりと笑って。


「大きな餌をぶら下げてやる。絶対に食いつく餌を。楽しみだな…」


フローラは思った。


ルディーン。逃げられないわね…多分…。こんな事やっている暇、無いと思うんだけど皇太子殿下。


大丈夫かしら…


ローゼン様に相談できる話ではないわ…あの方、真面目だから…


どんな餌をぶら下げるのかしら…






ディオン皇太子は、ルディーンに通信魔具で堂々と連絡をした。


「お前が喜ぶジュエリーの注文だ。王室の俺の部屋に来い。」


ルディーンは呆れたように。


「さっき、捕まえようとした癖に、どういう魂胆なんですかね?行くと思っているとでも?」


「お前は商売人だろう?俺が注文したいのは、アマルゼの鎮魂祭で聖女リーゼティリアが着ける冠だ。使う石は水晶を中心に作成する。デザインは浄化に特化したものにしたい。出来るな?」


「行きましょう。デザインは俺がやります。これはやりがいがある仕事だ。」


そして、ルディーンはディオン皇太子の待つ部屋へと転移してきた。


ディオン皇太子はにやりと笑って。


「本当に来たな…。一つ条件がある…この首輪を着けろ。お前を俺に縛る首輪だ。」


「細かいご説明を願いますかね?なんの首輪なんですか?」


「俺にしか性的な事が出来ない…夜には王宮に戻らねばならない。その二つだ。」


「何だ。そんな事ですか…いいですよ。」


あっさりとルディーンはその首輪をディオン皇太子から奪い取り、自分の首に着けた。


金の首輪で赤の宝石が中央に付いている。


そして、ディオン皇太子に向かって。


「デザインは聖女様と相談すればいいですかね?ああ、楽しみだ。最高の物を作りますよ。

予算はいくらですか?」


ディオン皇太子はルディーンの目の前に行き、


「お前いいのか?そんな簡単に…首輪を着けて。何故、あっさりと…理解できん。」


ルディーンはスっと離れてソファに座り。


「俺がジュエリーの商売人になったのは、デザインがやりたかったからですよ。

ソナルデ商会のジュエリーは殆どが俺のデザインって知っていましたかね?

ああ…聖女様の冠のデザインとは…もう、死んでもいい…。時間がないのなら徹夜しますよ。」


「俺はお前の事を何も知らなかったようだな…。」


ディオン皇太子はしみじみと言うと、ルディーンの首輪を外して。


「好きにするがいい。もう、お前を縛ることはしない。良い冠を作ってくれ。

予算は金20枚だ。頼んだぞ。」


「承りました。皇太子殿下。」


そして、ルディーンは聖女リーゼティリアと打ち合わせをすると行って、部屋を出ていってしまった。


何だか毒気を抜かれてしまった。


あの男がこんなにも聖女の冠のデザインにのめり込む性格だとは知らなかった。


まぁいい…また、ルディーンの気持ちが冠から離れた時に、改めて…


駄目だな…サルダーニャが、身も心も渇くと言っていたが、その通りだ。


愛しいセシリアがいるというのに。


今日はセシリアは、教会に慰問に出かけている。というとリーゼティリアも一緒でいないという事だ。


しばらくして、ルディーンが戻って来た。


「お留守だったようで、改めて打ち合わせに来ますよ。そう伝えてくれませんか?」


「伝えておこう。」


スっとディオン皇太子にルディーンは近づいて、耳元で囁く。


「ご褒美…俺の方から差し上げましょうか?」


ディオン皇太子はルディーンの髪に指先を絡めて。


「ああ…今日はこれから会食がある…。近いうちに…くれないか?」


「了解しました。改めて連絡差し上げますよ。」



二人は顔を近づけて口づけを交わした。


部屋に午後の冬の日差しが静かに差し込んでいた。


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