表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/56

フィリップ殿下とソフィアの為に頑張りましたわ。

雪も止んで道も雪掻きがされたので、今、久しぶりに王立学園にいるフローラである。


久しぶりの学校、皆に会えて嬉しいわ。



教室でマギーとソフィアと共にお話をする。


ソフィアが二人に向かって。


「お姉様がこの度、皇太子殿下の側室へ上がってしまったのです。ディオン皇太子殿下といえば、セシリア皇太子妃様と仲が良くて有名ですよね。」


フローラも頷いて。


「最近、よくお会いしますわ。皇太子殿下に。セシリア様と仲が良いのは有名ですわ。

何でもセシリア様の胸枕がお気に入りだとか。」


マギーとソフィアが。きゃあああ♡と叫んで口々に、胸枕なんてまぁと言ってから。


マギーが羨ましそうに。


「フローラ様みたいに、恋人がいるっていいですね。私なんてなかなかギルバート様との仲が進展しなくて。」


ソフィアもため息をついて。


「私、恋人欲しいですわ。」


フローラが真顔で。


「フィリップ殿下はどうしたのかしら?」


フィリップ殿下とは、冒頭でフローラに婚約破棄したこの国の第二王子である。ソフィア・アルバイン令嬢が好きになったからと言ってフローラは婚約破棄されたのだ。


ソフィアは遠い目をして。


「フィリップ殿下との婚約は、あまりにも王家の反対が強いので、諦めました。私…。伯爵令嬢程度では、側室になれても、正室にはなれないのですわ。」


その時、フィリップ殿下がこちらへやってきて。


「両親ともに反対していて困っている。母上は新たにアイルノーツ公爵ゆかりの女性を紹介しましょうだなんて言ってくるのだ。」


フローラは首を傾げて。


「アルバイン伯爵家はアイルノーツ公爵の派閥だったわよね。」


ソフィアは頷いて。


「アイルノーツ公爵家に、我が家はとてもお世話になっていますわ。」


マギーも考え込むように。


「アイルノーツ派閥のアルバイン伯爵家なら王妃様もOK出しそうな気がしたのに。」


フローラはフィリップ殿下に向かって。


「まどろこしいですわ。ここは男をどーーんと見せびらかして、ソフィアとの結婚を認めさせたら如何ですの?」


フィリップ殿下は困ったように。


「闇竜退治で腰を抜かしたからな。私は…。」


その時、マリアンヌが扇を片手にこちらやってきて。


「情けないですわ。フィリップ殿下。闇竜ではなくて、もう少しランクが下の魔物を倒し、ソフィアとの婚姻を認めさせる男気がないんですの?」


二人の令嬢に詰め寄られ。フィリップ殿下は、


「剣の腕は自分でもあると思っている。兄上に小さい頃から鍛えられた。しかし、実践した事がない。魔物相手に…」


皆が口を揃えていう。


「実践しましょう。フィリップ殿下。」


フローラが右手を振り上げて。


「ソフィア・アルバイン伯爵令嬢を娶るために、フィリップ第二王子殿下が、魔物を退治する。このビラを国中に撒きましょう。」


マギーが目をキラキラさせて。


「宣伝ですね。これなら王家も嫌とは言えませんね。」


ソフィアが首を傾げながら。


「退治する魔物をどうするんです?」


フローラは考える。


最近、出た魔物は何だったかしら。


一番、恐ろしいのは…ああ、駄目だ。お姉様だった。

それから転生者…。以前の転生者の首を元凶の魔導士ディルフィムの家の玄関に転がしておいたからおとなしくなったはずなんだけど。

闇竜は最近出たって噂は聞かないわ。

そういえば、グリザス様がクロードの話によると、200年前のアマルゼの魔物に狙われているって言ってたような…。でもそれもいつ出るか解らないし…。


そこでフローラは考えた。


「魔物をでっちあげましょう。」


皆が驚く。


「ええええええー???」


フィリップ殿下が慌てて。


「ばれるって。兄上がすぐに見破るよ。自分から退治に乗り出す。なんせ破天荒の勇者だ。」


フローラがフィリップ殿下の手を両手で握り締めて。


「そこを上手くやらなくてどうするの?魔物は私がどうにかします。まずは魔物を出現させないと…。マギー。協力を頼むわ。」


マギーは困ったように。


「大丈夫かしら…。頑張ってみます。フローラ様の命なら。」




そして、その夜、王都に魔物が出現することになる。


緑色のどろどろとした化け物が、夜、通行人を脅すという事件が勃発した。


ぐおおおおおっと声をあげて、通行人を脅すというのだ。


別に襲われた人がいた訳でもなく、ただ脅かされたというだけなのである。


それと同時にビラが派手に配られた。


フィリップ第二王子殿下が、王都を騒がす化け物を退治し、ソフィア・アルバイン伯爵令嬢を花嫁にする戦い。


そして翌日の夕方。

ディオン皇太子は、魔王討伐に4つの魔国の魔王達と、神官長様や聖女様、ザビト総監の部下10人を新たに加える交渉が無事終わり、ほっとしている所であった。

そこへ、王都に化け物が出るという報告と、フィリップ第二王子のビラを手に取って。


すごく不機嫌にフィリップ殿下を呼ぶ。


「フィリップ。このビラに書いてある事は、父上はご存知なのかね?」


フィリップ殿下は頷いて。


「先程、許可をもらいました。さっそく今宵にでも退治しにまいります。」


「近衛騎士を連れていくか?それとも俺も行こうか?」


「私一人で行きます。必ず、退治し、ソフィアとの婚姻を父上に認めて貰います。」


そう言うと、止めるまでもなく、凄い勢いでフィリップ殿下はその部屋を出ていってしまった。


怪しくないか????


ローゼン騎士団長を呼ぶように、使用人に命じる。


ローゼン騎士団長が来ると、ディオン皇太子は。


「フィリップに今夜同行しろ。王都を騒がしている魔物をフィリップが退治するという。

一人で行かせるわけにはいかない。」


ローゼン騎士団長は手を胸の前に当て、頭を下げて。


「承知しました。近衛騎士6人と共に、フィリップ殿下に同行します。」


「任せたぞ。」



その夜、剣を持ってフィリップ殿下は、魔物が出るという場所で待ち伏せをしていた。

後ろには困った事に、ローゼン騎士団長と近衛騎士6人が、あたりを警戒している。



茂みの中でしゃがみ込みフローラとマギーは困っていた。

「ローゼン様が来るなんて。」

「しかし、ここはやるしかないです。」


第二魔国から借りた、魔物ステッキを取り出して、

フローラは魔物を出現させる。


グオオオオオオオオオオーーー。


緑色の巨大な化け物がフィリップ殿下の前に出現した。


「私は愛するソフィアの為にも魔物を倒す。覚悟しろ。」


魔物に向かってフィリップ殿下が突撃しようとしたのだが、ローゼン騎士団長が、庇うように前に出て。


「私が相手だ。聖剣で真っ二つにしてやろう。」


「いやローゼンっ。これはソフィアを娶る戦いなのだ。私が戦わないでどうする?」


「フィリップ殿下を危険にさらず訳にはまいりません。」


フローラは困った。


何、もたもたしているのかしら。


魔物はグオオオオオオオオと吠えるだけで、二人の言い争いが終わるのを待っている。


すると、フローラの隣で、聞いたことのある人物の声がした。


「本当に、何をやっているんだ。あいつらは。」


ディオン皇太子が身を屈め片膝をついて、魔物相手にもたもたしている連中を見ている。


フローラとマギーは驚いた。


フローラは叫ぶ。


「こ、皇太子殿下っ。何をしていらっしゃるのです?」


ディオン皇太子は二人に向かって、


「お前達こそ、何をしているんだ?ともかく、フローラ、もう2匹魔物を出現させて、ローゼン達をそっちにひきつけるようにしろ。これじゃいつまでたっても、フィリップが手柄を立てられないだろう?」


フローラとマギーは、魔物スティックを更に2本出して、2体の魔物を追加した。


新たなる魔物出現にローゼン騎士団長と近衛騎士達は、剣を構え、斬り付けていく。


フィリップ殿下も、目の前の魔物を剣を持って、えいっと掛け声とともに、見事に身体の中心を貫いた。


グオオオオオオオオーーーーー。魔物は叫び声をあげてばたっと倒れる。


後の2匹も、ローゼン騎士団長と近衛騎士に斬られて、ばたっと地面に倒れた。


ディオン皇太子は、さっそうと茂みから出て、フィリップ殿下に。


「よく魔物を片付けた。フィリップ。ローゼン、それから近衛騎士達。

フィリップ。ソフィア嬢との婚約の件、俺からも父上母上に口添えしよう。」


「あ、兄上…いつの間に…ここへ?有難うございます。」


フローラとマギーはこっそりとその場を後にしようとして、茂みから出たら、


「どうしてお前達がここにいる?」


ローゼンに見つかってしまった。


フローラはにこやかに。


「ちょっと。お散歩していたのですわ。」


マギーもぺこっと頭を下げて。


「こんばんは。フォバッツア公爵。いいお天気ですね。」


ローゼンは空を見上げ。


「今にも雪が降りそうだが?」


逃げようとするフローラとマギーに向かって。


「御令嬢達が夜遊びとは…フォルダン公爵と、エスタル伯爵に報告して、厳重注意してもらうからそのつもりで。」


ひええええええっーーーーー。


二人の令嬢たちは真っ青になったのであった。





昨夜はフォルダン公爵にこってり絞られたフローラ。

しかし、学園で無事にフィリップ第二王子が、ソフィアと婚約する事が決まったと聞いて、ほっとしたのであった。


フィリップ殿下はフローラとマギーに向かって、小さな声で。


「有難う。おかげ様で婚約することになった。」


ソフィアも嬉しそうに。


「有難うございます。お二人に何と感謝していいか。」


フローラも小さな声で。


「いえいえ。良かったですわ。」


マギーがブルブル震え。


「それにしても皇太子殿下が、横にいた時にはもう、心臓が…」


フローラも思い出したように。


「ローゼン様に見つかった時もどきっとしましたわ。」


マリアンヌがホホホと笑って。


「ディオン皇太子殿下はなんでもお見通しなのよ。フローラ、貴方よくわかっているでしょう。」


「ええ、確かに。凄い方ですわ。」


フローラは同意する。


フィリップ殿下も頷いて。


「フローラ達と兄上のお陰で、こうして私はソフィアを娶る事が出来るようになったのだ。

もう、感謝してもしきれないな。」


「フィリップ殿下。どうか、ソフィアを幸せにして差し上げて下さいね。」


フローラの言葉に。


「思えば、フローラと婚約破棄をして、婚約破棄をした相手に応援されるとは思わなかった。

本当に有難う。」


本当にフィリップ殿下とソフィアが幸せになるのは良かったと、フローラは心から二人を祝福した。




その日の帰り、雪が降ってきたので、外ではなく王都のフォバッツア公爵家でフローラはローゼンと食事をすることとなった。


使用人たちが、高級なステーキ、白くてふわふわなパン。洒落たサラダ等、豪華な食事を運んできて、ローゼンとフローラの前に置く。


フォルダン公爵家の食事も豪華なので、それ程、感動はないが、貴族の食事マナーで、お洒落に頂く。


ステーキを切り分け食べながら。


「美味しいお食事ですね。有難うございます。」


ローゼンもステーキを切りながら。


「いつもは簡素な物で済ませている。ゆっくり食べている時間がもったいないのでな。肉などはパンに挟んで摘まめばいい。それに…一人で食べる食卓は味気ない。」


フローラは顔を上げて。


「それなら、時々、こちらにお邪魔しますわ。一緒にご夕食を食べましょう。よろしければ、フォルダン公爵家にもいらして。御馳走しますわ。」


ローゼンはフローラを見て微笑んで。


「有難う。とても嬉しい。」


食事が終わり、ローゼンの自室でソファに座って珈琲を飲みながら。


フローラは話をする。


「そういえば、ユリシーズの件なのですけど、隣のアマルゼ王国から、ユリシーズはアマルゼの国民だから返して欲しいと言ってきましたわ。お父様から聞きました。勿論、返す気はないと、ディオン皇太子殿下が断ったとか。」


ローゼンも珈琲を飲みながら。


「私もディオン皇太子殿下から聞いている。鎮魂祭の交渉が終わったから、勇者ユリシーズが生きていたと全世界に発表した。その途端、返せと…まったく、アマルゼ王国もユリシーズを色々と利用しようと思っているのだろう。ユリシーズとアイリーンはどうなんだ?」


フローラは微笑んで。


「仲良く暮らしています。笑い声がお部屋から聞こえてきて。

本当に良かったと思っていますわ。」


「それは良かった。」


フローラは座っているローゼンの傍に行き、その手に手を重ね。


「2年経ったら、良い家庭を作りましょう。私、頑張りますから。」


ローゼンはフローラの顔に顔を寄せて、チュっと唇にキスを落とし。


「私も頑張らねばなるまい。夫婦二人で頑張って素敵な家庭を作ろう。フローラ。」


ふと、フローラは思った。


もし、魔王討伐に失敗したら?


討伐に参加した人達が全員、死んでしまったら。


ぎゅっと椅子に座るローゼンに上から抱き着くフローラ。


「怖いですわ。私…本当は…。でもこうしていると安心します。しばらくこうしていていいですか?ローゼン様。」


ローゼンは優しく背に手を回してフローラを抱き締め。


「愛しいフローラ。大丈夫だ。必ず成功する。私はディオン皇太子殿下を信じている。」


再び、キスをするローゼンとフローラ。


ローゼンがフローラの唇をこじ開け、舌を激しく絡めてきた。


フローラは真っ赤になって、必死でその激しいキスに答える。


互いの唇を離すと、ローゼンはフローラの身体を抱き上げて、そのまま床に押し倒してきた。


再び激しく唇を貪られる。上がる熱…。ローゼンの激しい息遣いが感じられて。


「フローラ。君が欲しい…」


フローラはローゼンの身体にぎゅっと抱き着くも。


「ごめんなさい。私もローゼン様が欲しい。でも…もし、赤ちゃんが出来たら…

それに私、学生なのよ。魔王討伐も控えている。今は…ごめんなさい。」


涙がこぼれる。


ローゼンもフローラの身体を強く抱きしめながら。


「すまなかった。つい…理性が。我慢しなくてはならない。解っている。

フローラ。たまらなく君の事を愛しているよ。」


再び、二人はキスを交わす。


フローラは思った。


この人と生きて、婚姻したい、


愛してるわ。ローゼン様。この魂の全てをかけて…


外は雪が降り、寒い寒い夜だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ