助けて…もう、逃げられない。(ユリシーズ)
ちょっと病んでいるような展開です。注意。
痛いっ…
痛いよ…
もう、許して…
頼むから助けて…
ディオン皇太子がセシリアと共に、眠りについた雪の夜。
ユリシーズは、フォルダン公爵に招待を受けて、アイリーン、フローラ、ローゼン、クロード、グリザスと共に食事をした。
食事をした時に、フォルダン公爵に、
「ユリシーズ、私はリリアの為にも、君をしっかりと面倒みるつもりだ。縁あって私の息子にもなってくれるのだからね。クロードと違い、君は真っ白で、黒い所がない。だから、貴族社会や、魔界の魔族界でも、苦労をするだろう。
私や、フォバッツア公爵、アイリーンが出来るだけフォローするが、覚悟をしておいてもらいたい。」
と言われた。
共にした食事の本格的な料理に、マナーが解らなくて苦労した。
何だか、一気に自信がなくなってしまった。
自分は平民育ちだ。貴族社会や魔族界で、やっていけるんだろうか?
その後、居間でお茶をしていた時に泣いてしまった。
共に居た人達は気遣ってくれたけど…
アイリーンも、無理は押し付けないって言ってくれたけど。
雪がやまない夜。
その日はフォルダン公爵家で泊めて貰う事になり、アイリーンと添い寝をする事になったのだが。
客間でユリシーズが寝る支度をしていたら、アイリーンが夜着で部屋に入ってきた。
ユリシーズの目の前に立つと、はらりと夜着をアイリーンは脱いで、全裸になる。
癖のある長い黒髪に、白い肌。
ユリシーズは恥ずかしくなって、目を覆ってしまった。
まともに見れない。
アイリーンはユリシーズに向かって。
「今夜、貴方の物になりたいの…。お願い。ユリシーズ。私を抱いて。」
アイリーンが近づいて来る気配がする。
だけど…俺は…そこまでまだ覚悟がないんだ。
怖くなった。怖くて怖くて。
「ごめん。アイリーン。」
その部屋からユリシーズは飛び出した。
外は大雪だ。
かまわない。
バンと扉を開けて、玄関の外へ出る。
寒い…、でも逃げないと。たまらない恐怖が襲ってくる。
雪に足を取られてユリシーズは転んだ。
寝間着が雪だらけになる。
背後から声がした。
「あら…。こんな雪にまみれて、可愛そうに…どこへ行くの?ユリシーズ。」
後ろから首筋を撫でられる。
もう、逃げられない…。
ユリシーズは覚悟した。
その夜…ユリシーズは泣きながら許しを請うた。
ベットの上で男として言えないような責め苦を受けた。
痛み…そして、尽きる事の無い快楽。
アイリーンは、満足げに赤い唇を舐めながら。
「貴方の魂ってとても綺麗。クロードとまた、違った美しさがあるわ。
隷属…魅了なんてつまらない。私に逆らえないように、隷属を使ってあげようかしら。
苦しみながら、私の為に王配になるの。楽しいと思わない。」
アイリーンが再び、のしかかってくる。
激しさの増す痛みと、快楽の中、ユリシーズの意識は飛んだ。
翌日の朝、アイリーンがにこやかに。
「おはよう。ユリシーズ。昨夜は素敵だったわ。」
逃げたい…。でも…身体が動かない。
そして、耳元で囁いた。
「望むなら、もっとお仕置きしてあげてもいいのよ。」
ユリシーズは泣きたかった。
「俺…俺…。嫌だ。こんなの…嫌だ。」
「お仕置きが足りないようね。貴方の魂をぐちゃぐちゃにして、そして、綺麗な青に戻すの…。美しい青に…。痛いわよ…もの凄く。」
「怖い…許して…。ひいっ…」
身体の奥底を黒い爪でかき混ぜられる、そんな痛み…。
痛いよ…痛い…。助けて…。
「ほら…もう少しで。綺麗な青になるわ。素敵な私のユリシーズ…」
「ハァ…ハァ。酷いよ。だけど…何だか気分が良くなってきた。」
「うふふ。そうでしょ…。貴方が壊れるたびに掻き混ぜて、綺麗な青に戻してあげるわ。
何度でも。貴方の精神が持つ限り。これが隷属の恐ろしくて楽しい所よ。」
心も身体も痛くて痛くて。でも…俺は勇者だから。アイリーンの為にも、頑張らなければいけないんだ。
「ごはん食べたくなってきたな。一緒に朝食にしようよ。アイリーン。」
アイリーンに抱き着く。
アイリーンは優しくユリシーズの髪を撫でて。
「ええ。朝食にしましょう。好きよ。ユリシーズ。」
もう、自分に自由はないのだろう。
だけど、働かなくては…。王配として、勇者として、アイリーンの婚約者として、素晴らしい人間になるために。
ベットからフラフラ立ち上がる。
助けてと泣く…心の奥底の自分をユリシーズは封じ込めた。




