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ローゼン様と喧嘩してしまいましたわ。

闇竜騒ぎがあって10日後、ローゼンの怪我は大分良くなり、フローラと二人で夜の王都での高級レストランで逢瀬を楽しんでいた。


高級レストランと言っても、個室を予約してあり夜なので暗い中、5階建ての建物のテラスで向かい側に座り、豪華な食事を楽しむ。

松明の灯りが揺らめいていて、幻想的だ。


ローゼンは高価な赤ワインを頼む。フローラはまだお酒は飲めない年頃なので、そこは我慢だ。

前菜のサラダと洒落た魚の料理に、濃厚なソールがかかった高級な牛のステーキ等、食した後、食後には、二種のアイスクリームと苺が添えられたデザートに、香り高い珈琲を楽しむ。



フローラは毎回思う。

こんな幸せでいいのかしら。


でも、この間の闇竜騒ぎでローゼンが怪我をしたっていうのが今だ心配だった。


「ローゼン様、お身体の具合は如何ですの?」


心配そうにローゼンに尋ねれば、ローゼンは珈琲を一口飲んだ後に。


「大丈夫だ。大分良くなった。」


「それは良かったですわ。私、心配で心配で。すぐにお仕事に戻ってしまうのですもの。」


「私は騎士団長だから仕事をしないと、心配かけてすまない。」


ローゼンは立ち上がると、フローラの隣に座って。


「愛しいフローラ。今日も可愛い…。」


頬を優しく撫でられて、唇にチュっとキスを落とされて。


フローラは真っ赤になる。


そして、耳元でローゼンは熱く囁いてくる。


「後、2年もお預けとは…私は早く君を妻に迎えたいのに…」


手を握られて、フローラはドキドキして倒れそうだった。


やっとの思いで言葉を紡ぐ。


「お、お預けの後だからこそ、楽しさも倍増するのですわ。」


「そうだな…。その時を楽しみに。君を熱く愛してあげよう。」


婚約中の公爵令嬢に婚前交渉をする程、ローゼンシュリハルトという男は馬鹿ではない。


今回のフォバッツア公爵家とフォルダン公爵家の婚姻は、政略的意味が強いのだ。


ローゼンはフローラから身を離すと、熱が冷めたように不機嫌になり。


「ところで、フローラ。学園で騒ぎを起こしたそうだな…」


「えええ?騒ぎって、あの…校庭でのことですか?」


「そうだ。校庭で闇竜の幻を出現させて、多くの生徒が心的恐怖を感じ、中には登校拒否をする生徒もいまだいるそうじゃないか。」


フローラは拳を握り締めて、


「だって、ローゼン様。学園の生徒達はフィリップ殿下の悪口をこそこそと言っているのですよ。闇竜を見て腰を抜かしたとか、あの破天荒な勇者ディオン皇太子殿下の弟らしからぬ臆病者とか。面と向かって言えば不敬罪ですから、陰口が酷くて。

私、許せなかったんです。だから、下校時間に魔法で闇竜の幻を校庭に出現させたのですわ。そうしたら、皆さん腰を抜かして。スっとしましたわ。」


「君はまだ、フィリップ殿下の事を愛しているのか?それに、王立学園の生徒達に恐怖を与えるとは、許される事ではないと思うが。」


問い詰めるローゼンの言葉に、フローラはまっすぐローゼンを見つめ。


「フィリップ殿下は今は、お友達です。婚約者の時はお互いに嫌っていましたけど。

婚約破棄致しましたら、帰って距離が出来て良い関係を築けるようになったのですわ。お友達の名誉を傷つけて黙っていられる私ではありません。ローゼン様にはお友達はいないのですか?」


「残念ながら、私には友と呼べる者はいない。だからお前の気持ちが解らない。」


「王立学園に通っていらっしゃったのですよね。その時はどうしていたのです?

騎士団に入ってからお友達は出来なかったのですか?」


フローラが問い詰めると、ローゼンは苦々しげに。


「学園在学中はディオン皇太子殿下の守りをするように命じられて傍にいた。皇太子殿下はあのように面倒見が良い性格だ。友が沢山いた。逆に私の方が皇太子殿下に気を使って貰った。一人で居ないように、色々と誘って下さって。グループでする課題…。組んでする運動とか…。優先して頂いた…。

騎士団に入ってからは、周りは全てライバル扱いしてきた。私は他人にも厳しい性格だ。友など一人も出来なかった。」


フローラは優しくローゼンの手を両手で握り締めて。


「私も以前は友達はいなかったのです。我儘令嬢で有名でしたもの。マギーは父の部下のエスタル伯爵の娘で。父に頼まれて私のお友達をしているだけでしたわ。

でも、私は恵まれて…マギーとは本当に仲良くなって。サラやルシアという召使達も傍にいてくれて心配してくれる。

婚約破棄騒動から、ソフィアやマリアンヌ様とも仲良くなれましたわ。

フィリップ殿下も、今は大切なお友達です。

ソフィアの事を殿下は愛していらっしゃいますわ。

ローゼン様…。ローゼン様にも、大切なお友達が出来ると良いですわね。」


「友など必要ない。フローラ、王立学園で、これ以上騒ぎを起こすことは許さない。

フォバッツア公爵として、我が婚約者に命じる。」


ローゼンの冷たい言葉にフローラは叫んだ。

「お友達の名誉を守るためなら、お友達のためなら私はいくらでも戦います。

今日はお先に帰らせて貰いますわ。」


フローラが立ち上がる。


ローゼンは不機嫌に眉を寄せる。しかし公爵令嬢を一人、帰らせるわけにはいかない。


「送っていこう。少し、共に歩いて頭を冷やさないか…フローラ。」


「そうですわね。」


二人はレストランを出て、横に並んで歩いた。


いつもは手を繋いで歩く道筋、今日はなんだか、気まずい。


フローラがポツリと。


「ごめんなさい。お友達は大切ですけれども…。ちょっとやりすぎましたわ。」


「私の方こそ、すまない。フィリップ殿下が腰を抜かしたのは、当たり前のことだ。闇竜を見たものでないとあの恐怖は解らない。王立学園の生徒達がフィリップ殿下の陰口を言っていたのなら、殿下の名誉の為、それは許されない事だ。やりすぎた感は確かにあるが…名誉回復は大事な事だと思う。フローラ、君が元婚約者を庇った事に、つい頭に血が上ってしまった。」


フローラはローゼンの顔を見上げて。


「まぁ、嫉妬してくださったのですか?」


「当然だろう。」


フローラはローゼンの腕に両腕を絡めて。


「ローゼン様、大好きですわ。」


ローゼンもほほ笑んで。


「私もだ。フローラ。」


フローラは思った。

高いプライド。自他ともに厳しい性格…。

この人は孤独に生きてきたんだわ…。


何だか、愛しさが増して…


その孤独な心を癒してあげたい。



仲良いカップルに戻って、腕を絡めながら歩く二人に、夜の月が優しく照らしていた。



なんとなく書き始めたら、痴話げんか始めちゃいました。最近、バカップル丸出しですよね(笑)この二人。

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