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闇竜退治続き(俺達にとっては熊退治だ。しかし、でかい熊だなぁ。BY騎士団見習い)

ディオン皇太子とミリオンが新たなる闇竜に飛び掛かっていったその頃、

クロード・ラッセルと見習い騎士達、全20名は、騎士の一人に引き連れられて、

王都の外れの山近くに来ていた。


いつもクロード達、騎士団見習いを面倒見るゴイル副団長は、ローゼン騎士団長が留守ということで、王宮の守りの責任者となっていて、王宮を離れるわけにはいかない。

騎士ジェームズは見習い達に向かって。

「良いか。これから熊退治をする。これは訓練だ。どこに熊が出るか地元の人に確認を私は取ってくる。お前達はここで待機して待て。」

「「「はいっ。」」」


空は青空。いいお天気である。

クロードは仲の良いギルバートとカイルと共に立ち話をしていた。

ギルバートが二人に。

「熊って見たことあるか?」

クロードが首を振り。

「有名なタダカツベアなら知っているが、あれはとても可愛らしい物だな。」

カイルが頷き。

「確かに、目がつぶらで、こっちを見ているあの縫いぐるみは、可愛いもんだよ。その熊を退治するなんて信じられないよな。」


ジャック・アイルノーツという男が近づいてきて。

「お前ら馬鹿か?熊というのはデカくて凶暴らしい。人間なんてひと殴りで死人が出たというぞ。」

クロード達は顔を見合わせて。クロードが腰の聖剣を握り締め、

「油断は出来ないな。」

ギルバートも頷き。

「心してかからないと。」


その時、地面から魔法陣が現れて、スーティリアが飛び出した。

「クロード様っ。助けて。」

「何かあったのか?」

「ともかく来てっ。」


クロードの手を引っ張って魔法陣に引き込む。

騎士団見習い達は。

「熊が出たのか?」

「俺達も後を追うぞ。」


消える前の魔法陣に19人は飛び込んだ。


魔法陣から出れば、スーティリアが後を追いかけて来た皆に向かって。

「みんな来てくれて助かったわ。さあこれを持って、この坂を駆け上がるのよ。」

黒いこぶし大の玉を二つずつ渡される。」


皆が首を傾げて受け取ると、

スーティリアは。

「さぁ。行って。化け物を見たら、この玉を投げつけてっ、急いで。」


クロードは聖剣を握り締めながら、坂を駆け上がる。

他の19人は玉を二つずつ持ちながら坂を駆け上がった。


その先に見たものは。


血まみれのローゼン騎士団長が、それも傷だらけの巨大な首の長い竜のような魔物、2匹と戦っている。

その時、全員思った。


熊ってデカいっーーーーーー。熊退治っていうけど、これが訓練の範囲なのか????


クロードはこのままではローゼン騎士団長が危ないと思った。


「全員、攪乱行動っ。俺は攻撃に移る。」


「「「了解っ。」」」


騎士見習い達は、スーティリアに渡された玉をいかに効率よく使うか、瞬時に判断した。


5人の見習い達が巨大な魔物に向かって玉を投げつける。


それは爆発を起こし、魔物2匹は首を向け、そちらへ注意を向けた。


そこをすかさず、クロードは飛び上がって魔物一匹の首に斬りかかる。

キンっーーー


ローゼンが叫ぶ。


「普通に斬りかかっては駄目だ。右へ注意をそらせ。今度は私がやる。」


更に5人の見習い達が玉を魔物達に投げつける。


魔物2匹が右へ向いた途端、ローゼンは金色に剣を光らせ刀身に稲妻を纏い飛び上がり、上段から首を斬り下げた。


バチバチバチと首が稲妻に覆われて。


どさっ。一匹の首が落ちる。もう一匹は避けて素早くローゼンの身体に嚙みついた。


クロードが横殴りに聖剣で魔物を頬を殴りつける。


その勢いで、ローゼンの身体は離れ、吹っ飛んだ。


地に叩きつけられる。


踏みつけようと魔物が右足を上げた途端、ギルバートとカイルがすっとんで行き、ローゼンと共に転がり間一髪、避けさせた。


クロードが叫ぶ。


「ナイスっ。二人とも。」


ジャックが叫ぶ。

「左へ注意をそらす。今度こそ決めろ。クロード。」


ジャックが見習い5人と共に、玉を投げる。


クロードは叫んだ。

「決めろって。俺にその力は…。くそっーーーー。負けるかっ。」


魔物が左側へ首を向けた途端、その首に向かって聖剣を叩きこむ。聖剣が輝いて、空が反転した。

一気に霧が晴れ、夜になったのである。

星の光が聖なる剣に吸い込まれ、バアアアアアンと爆発した。


魔物の首が吹っ飛ぶ。


その途端、昼間に戻り、太陽の光が差し込んだ。


皆が、ローゼン騎士団長の元へ駆け寄る。

「大丈夫ですかっーー。騎士団長。」

「お怪我は。」


クロードが騎士団長を背負い。

「スーティリアの所へ急ぎ運ぼう。転移してくれるはずだ。」


その時、遠くの方で火柱が上がった。

皆、一斉にそちらを見つめる。

白い霧に覆われた黒い巨大な影が4つ見える。

すさまじい音が聞こえて来た。


クロードはローゼンの身体を、ギルバート達に預けて。

「騎士団長を頼む。」

ローゼンはクロードに。

「行っては駄目だ。あそこは…修羅の世界だぞ。」

「でも行きます。」


クロードは走り出した。その修羅の世界に向かって。


近づくにつれて、白い霧に覆われて行く。

森の中を進んだ開けた先には、傷だらけになったディオン皇太子とミリオンが、すさまじい勢いで魔物4匹と戦っていた。


魔物も切り傷だらけで、弱っているようだが、2人も大分、疲れてきているようだ。

地面をえぐる鋭い攻撃が、魔物達から繰り出される。

それを避けながら、二人は魔物に斬りかかって行く。


クロードは念じた。

一人じゃ駄目だ。どうかアイリーン、フローラ。力を貸してくれ。


聖剣が煌びやかに輝く。

その輝きはディオン皇太子とミリオンを包み込んだ。


ディオン皇太子は笑って。

「まだまだいけそうだ。」


ミリオンは魔物の首を駆け上がり。

「俺は飽きたね。そろそろ決着つけようじゃないか。

はぁあああああああっ。」


すさまじい黒い雷を纏った聖剣を振るい、上段斬りで魔物の首を斬り下げる。

返す刀でもう一匹の首を斬り上げた。


ディオン皇太子も負けていない。

はぁああああああーーーーー。


気合を入れると、地面から草木が突き出して、魔物二匹の身体を貫く。

そのまま走り、聖剣を振るい、立て続けに二匹の首を跳ね飛ばした。


空が晴れ渡る、

ディオン皇太子とミリオンは大の字に地に横たわった。


クロードが二人に慌てて近づいて。

「大丈夫ですか?」


ディオン皇太子はほほ笑んで。

「有難う。おかげ様で助かった。」


ミリオンも。

「俺からも礼を言う。ただな…今は眠い。寝かせてくれ。」


スーティリアがやってきて。

「魔物の死体と、この二人を回収にやってきたよーー。」


クロードが呆れて。

「これ、熊じゃないだろう?」

「熊って言ったっけ???あれ?まぁともかく、これ闇竜っていうんだよね。

食べると美味しいんだよ。魔界のお肉屋さんに持っていくねーー。いいお金になるから。」


闇竜4匹の死体がその場から消える。

大した怪我はないという事で、ディオン皇太子は王宮へ、ミリオンは魔界の泊まっている宿に転送された。

クロードも王宮の宿舎に帰ってみると、そこには騎士団見習い達が宿舎の前で、待っていてくれて。


ギルバートがクロードに抱き着いて。

「無事でよかったーー。クロードっ。」

他の連中もクロードに抱き着いてきて、もみくちゃにされた。


「ああ、有難う。俺は大丈夫だけど、騎士団長は?」

カイルが。

「マディニア王立病院に運ばれた。命は大丈夫みたいだよ。」

「それは良かった。」


ギルバートがしみじみ。

「凄い熊だったなぁ。」

他の騎士団見習いの連中も。

「ああ、熊って凄いんだな。」


クロードが皆に向かって。

「あれは闇竜って言うらしいよ。熊じゃないことは確かだ。」

カイルが納得したように。

「どうりで首が長いと思った。」

「竜なら首が長いよな。」

ギルバートも相槌を打つ。

「竜か。竜なんだ。ハハハハ。」

皆、納得して宿舎に入って行く。


クロードが首を捻り。

「何で皆、驚かないんだろう。変わっているな。ええっ?竜??って腰でも抜かすとか思ったけど。」

皆、平然を装っているが、怖がる所を見せたくないんだという事をクロードは解っていなかった。


そして、今回の事件で一番、自信を無くしたのはフィリップ第二王子である。

なんせ闇竜を見て、腰を抜かしたのだ。退治すると言って強がって出かけたのだが。


それから2日後、フィリップ第二王子は学園にも来なかった。どこからか漏れたのか。

フィリップ第二王子が闇竜を見て、腰を抜かしたという事が噂になっている。

フローラはローゼンの見舞いに王立病院へ今日も行こうと、帰り支度をしていると、ソフィアに声をかけられた。


「私、どうしたらよいでしょう。フローラ様…」

「闇竜を私も見たわ。クロードから助けてって念が送られてきたの。だからこちらからも、念を送ったわ。その時に見た闇竜は凄く怖かった。普通の人間なら腰を抜かして当然よ。」

「でも、フィリップ殿下は、破天荒な勇者であるディオン皇太子殿下の弟です。比べられてしまいます。世間の評判は、兄は凄いのに弟は臆病物だなんて…気の毒ですわ。」

「そうねぇ…だったらソフィアの良さを生かして、殿下の尻を叩いて差し上げなさい。」

「尻を叩く?」


「弱いままの殿下は嫌ですっ。ここは強くなりましょうーー。私も協力しますっ。って応援して差し上げたら如何。」


ソフィアは頷いて。

「剣の腕はまぁまぁ強いらしいですよ。頭も良いですし。でも。私なんかどうせだなんていじけてしまったらどういたしましょう。」


フローラはソフィアの手を引いて。

「貴方まで弱気になってしまってはどうします。これから参りましょう。マギーっ。貴方もいらっしゃい。」

マリアンヌが立ち上がって。

「私もご一緒するわ。殿下の尻を叩くんでしょう。皆で叩いて差し上げましょう。」


4人の女性たちは、フィリップ殿下の元へ押しかけた。

誰にも会いたくないというフィリップ殿下の部屋へ、マリアンヌが無理を言って、扉を開けて貰う。

4人がズカズカと中へ入れば、フィリップ殿下はベットの中から起き上がり、唖然と皆を見つめた。

フローラがフィリップ殿下に近づき、その頬を思いっきりバシっと叩いた。


「何をするんだ。フローラ。」


「男なんでしょう。ソフィアと婚姻したいんでしょう。だったらしっかりしなさい。腰を抜かしたというのなら、強くなりなさい。貴方はこの国の第二王子、この国を良くしたい、その為にならどんな努力も惜しまないってつまんない話をさんざん、私に聞かせたくせに、そんなヘタレだったの?」


マギーが慌てて。

「つまんない話って言っちゃ駄目です。フローラ様。」


フィリップ殿下はため息をついて。

「私は闇竜が怖くて怖くて仕方なかった。国民も笑いものにしているだろう。私なんてどうせ…」

ソフィアがフィリップ殿下の手を握り締める。

「フィリップ殿下には殿下の良さがあります。この国の発展の為に、この国の恵まれない人を助けたい為に尽くしたいって言っていたじゃないですか…。私は優しい貴方に惚れたのですわ。どんなに臆病者扱いされてもいいじゃないですか。殿下は殿下の出来る事を一緒にやっていきましょう。」


フィリップ殿下はソフィアを抱きしめた。

マリアンヌが。

「フローラを婚約破棄した気持ちが良くわかりますわ。」

フローラが膨れて。

「だってあまりにも情けなくて。」


フィリップは頷いて。

「フローラ。君も有難う。私は決意したよ。学園を卒業したら騎士団に何年か入隊したいと思う。強さと優しさ、両方持つ男になりたい。皆も有難う。」


翌日からフィリップ第二王子は学園へ登校した。

陰口を叩かれ辛い日々が続くだろう。しかし。ソフィアの優しさがフローラやマリアンヌ、マギーという友が傍にいる限り、前へ進めると思えるフィリップ第二王子であった。


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