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闇竜退治(フィリップ第二王子は決意をするが…)

ちょっと流血表現っぽいのが出てきます。闇竜退治の話です。R15は保険でつけました。

フィリップ第二王子は悩んでいた。

いつまでたっても、マディニア国王からソフィア・アルバイン伯爵令嬢との婚約の許可が出ない。どうも王は魔国の姫と婚約させようと、探しているらしい。


そして、ソフィアにも、愛を囁いているのだが、どうも乗り気でないみたいで。

「私のような者と婚姻するよりも、もっと身分の高い姫君と婚姻なさった方がよいのではないでしょうか。殿下の私に対するお気持ちはとても嬉しく思っておりますし、光栄に思っております。でも、世の中にはどうしようもない事があるのです。私は宮廷の女官になって殿下をお支え致したいと思いますわ。」


秋の木の葉が舞う中庭で、ソフィアにそう言われてしまえば、返せる言葉も無く、

フィリップ第二王子は、教室へ帰って行くソフィアの後姿を見つめるしかなかった。


最近のソフィアはフローラとマギー、そしてマリアンヌと一緒に居る事が多くなった。

お昼のお弁当の時間、4人で教室でお弁当を広げながら、マリアンヌはフローラに。

「ちょっと貴方、第一魔国の魔王と、第二魔国の魔王を私に紹介しなさいよ。毎週土日に第三魔国に行って、あちらの宮廷の者にいろいろ教わっているんだけど、大変なのよ。貴方と違ってまったく知らない世界に飛び込むんですもの。でも、私は負けないわ。マリアンヌ・マディニアの誇りにかけて。」


マリアンヌの言葉にフローラは。

「さすがマリアンヌ様、素晴らしいわ。尊敬致します。姉とサルダーニャ様を紹介いたしましょう。きっと力になってくれるわ。」

「有難う。フローラ。お互い持ちつ持たれつの関係で、ね。」

第三魔国の魔王、シルバは第二魔国のフォルダン公爵を出し抜きたいと思っているのだが、

マリアンヌの思惑は違うようである。


そんな二人の会話をお弁当を食べながら、にこにことソフィアとマギーは聞いている。


フィリップ第二王子は、そんな4人の傍に近づいて、お弁当を食べているソフィアの前に立って。

「私は諦めないぞ。ソフィア。君と婚姻したい。私の妻になって欲しい。」

フローラが呆れたように。

「そういうのは二人きりの時に言って下さらないかしら。元婚約者の前で言う事?」

「君はフォバッツア公爵と婚約したのだからいいではないか。過ぎた事を私は気にしない。」


ソフィアは困ったようにうつ向いて。

「私の気持ちは先程、申し上げた通りです。宮廷の女官として働きたい。私は第二王子と婚姻できる身分じゃありません。本当に申し訳ありません。」

決意の強いソフィアの態度に、フィリップ第二王子は傷ついたように教室を出ていってしまった。


マギーが心配そうにソフィアに向かって。

「本当にそれでよかったの?ソフィア。」

「だって仕方がないじゃない…マギー。私、私…。」

涙をぽろぽろと流すソフィア。マギーがぎゅうっとソフィアを抱きしめて。


フローラがマリアンヌに向かって。

「マリアンヌ様、なんとか出来ないかしら。」

マリアンヌも頷いて。

「そうね。私とフローラで、王に頼んで…いえ、駄目だわ。ただ頼むだけじゃ駄目。何か代案を考えないと。王家は私が魔国に行くだけではなくて、魔国の姫を欲しがっているわ。

本当なら貴方がフィリップ殿下に嫁ぐはずだった。でもそれが駄目になってしまったから。」


「あああ…私のせい?いえ違うわ。私は婚約破棄された身よっ…」

フローラが叫べばソフィアが。

「申し訳ありませんっ。私がっ。私がっ…」

泣いて謝るソフィアに、マギーが。

「収集つかなくなりますね。この件は…。」

マリアンヌもため息をついて。

「フィリップ殿下がとんでもない行動に出なければよいのでしょうけど。」


その頃、フィリップ第二王子はある決意を持って、マディニア王国の王である父を探す。

マディニア王は広間でディオン皇太子殿下と立ち話をしていた。


フィリップ第二王子はマディニア王に向かって。

「父上、ソフィア・アルバイン伯爵令嬢との婚姻を認めて頂きたいと思います。私はその決意の為に、最近西部で騒がしている闇竜の退治に向かいたいと。」


闇竜。魔王が30年前に倒される前には、各地に出没し人を殺しまくったという、赤い目を持つ巨大な黒い首長竜である。

つい先日、西部の村で目撃情報があった。ここの所、魔物は魔王が倒されたと同時に封印されたのか、出没すらなかったというのにだ。


王宮の庭に以前、現れた黒龍はちょっと訳があるのだが、それは今は置いておく。いずれ訳は判明するだろう。


マディニア王は驚いて。

「闇竜退治だと?それはお前にははっきり言って無理だ。」

兄であるディオン皇太子も。

「今の所、闇竜の被害は出ていないが、あれが暴れだしたら、被害は計り知れない。

俺とローゼン騎士団長、近衛騎士団10人で退治に向かう。遊びじゃない。」


「遊びじゃないから、私も行きます。破天荒の勇者、兄上の弟です。見事退治致しますから、どうかソフィアとの婚姻を認めて頂きたい。」


真剣なフィリップ第二王子の言葉に、マディニア王とディオン皇太子は顔を見合わせた。

マディニア王は。

「そこまで言うのなら、闇竜退治にお前も同行するがいい。見事退治した暁には、ソフィア・アルバイン伯爵令嬢との婚姻を認めよう。」

「有難うございます。父上。」


翌日、ザビト総監の案内の元、ディオン皇太子、フィリップ第二王子、ローゼン騎士団長と10人の近衛騎士は、西部の村へ馬で向かった。

ザビト総監は、国の治安部隊の総監である。

立派な髭を蓄えた、人相の悪い大男だ。


「ガハハハハ。皇太子殿下に、第二王子に騎士団長と、素晴らしい顔ぶれだ。それを案内できるとは光栄極まりない。さぁ参りましょうや。」


豪快に笑うと、先頭に立って馬を走らせる。

皆も後に続けば、道の真ん中で馬に乗った3人の男女に行く手を阻まれた。


黒服にマントを羽織り、真っ赤な長髪の男を見て、ディオン皇太子が叫ぶ。


「ミリオンっ。」


「ディオン皇太子。俺を置いて行くとはつれないぜ。こんな楽しそうな事にな。」


共にいる二人の女性、胸が実り切っているお色気担当の銀髪美女ラリィーンと、桃色の髪の可愛さロリ担当のスーティリア。

ラリィーンもウインクして。

「私達も同行するわ。」

スーティリアも楽しそうに。

「ワクワクするよ。さぁ行こうっ。」


ディオン皇太子は二人の女性に。

「闇竜は化け物だ。女性は危険ではないのか?」

ミリオンがにやりと笑って。

「危なくなったら逃げるように指示してある。そちらの坊やこそ危険じゃないのか?」


フィリップ第二王子を見れば、フィリップ第二王子は怒ったように。

「私は闇竜を退治し、愛しい人と結ばれるのだ。これは愛の戦いだ。」


一同、一抹の不安をフィリップ第二王子に覚えたと思うのだが、ミリオンは楽し気に。

「愛の戦、いいねぇ。協力してやるよ。それじゃ行こうか。」


更に、一同は馬と共に山道へ入っていく。

道はだんだん狭くなり、途中で馬を木に繋ぎ、歩いて徒歩で村に向かって行けば、

空がにわかに暗くなり、あたりに霧が出て来た。


ザビト総監が空を見上げて。

「これは…何やら嫌な予感がしますな…」

ローゼン騎士団長は近衛騎士10人に向かって。

「騎士団。あたりを警戒しろ。」

スーティリアが焦ったように。

「ミリオン。魔力が効かないよ。転移魔法陣が展開されない。逃げ道を作っておこうと思ったんだけど。」

ミリオンが楽しそうに。

「ふふん…。逃げ道がないということか。」


ディオン皇太子が前方を睨みつけ、腰の緑の聖剣に手をやる。

「来るぞっ…」


ひゅっーーー。


何かがディオン皇太子の横を掠めていった。


「うわっーーー。」

「ぎゃああっーーー。」


近衛騎士達の悲鳴があがる。


皆、鎧の上から腕やら、足やらを切られ血を噴き出していた。


その攻撃は視覚に捉える事が出来ない。しかし、振り子のように、ディオン皇太子を襲ってくる。


ディオン皇太子は聖剣でその攻撃を弾いたが、ひどく手ごたえが重い。


ローゼンは叫んだ。

「危険だ。下がれ。怪我をした者は血止め。重傷者の確認。」

近衛騎士の一人が叫ぶ。

「大丈夫です。重傷者はいません。皆、血止めを。」


ラリィーンも服を切られたようで、たわわな胸があらわになる。

「もうっ。スケベな攻撃ね。」

怪我はないようだ。


フィリップ第二王子は腰を抜かしていた。

ザビト総監が第二王子を肩に担ぎあげて。


「これが闇竜だ。第二攻撃が来るぞ。」


ミリオンが赤い聖剣を手に走りだす。

見えない鋭い攻撃に、その恐ろしい気配に向かって、思いっきり聖剣を振り上げた。


「ガキっーー。」


弾いた感触がした。しかし、弾いただけだ。

「くそっーー。なんなんだ???」


ザビト総監がフィリップ第二王子を近衛騎士達に預けると。


「お前ら気概が足りないんじゃねぇか。攻撃は気概で行うもんよ。」


背中に担いでいた巨大な斧を手に取ると、第三の鋭い攻撃、風を切るその音に向かって巨大な斧を振り上げた。


「うおおおおおおおおっーーー。」


バチバチバチと音がして、あたりに大きな振動が起こる。

空を見上げれば、霧の中から黒く赤い目をした巨大な首長竜が見下ろしていた。


「うわっーーー。」

フィリップ第二王子が悲鳴をあげる。

スーティリアも。

「シッコ漏っちゃう。」

ラリィーンが平然と。

「お子様と女性は早く逃げたほうがよさそうね。」


しかし、闇竜の気が強すぎて、動く事が出来ない。


ディオン皇太子が闇竜に向かって飛び上がる。

「気概なら負けないぜ。ミリオン。勝負だ。」


ミリオンも同じく、聖剣を手に闇竜に向かって飛び上がる。

「おうっ。勝負だ。ディオン。そして、オッサン。」


ザビト総監がガハハハハと笑って。

「俺はザビトだ。聖剣が全てじゃねぇって所、見せてやる。」


3人が闇竜の身体に切りつける。


ギギギギギっーー。音がするも切れない。


ディオン皇太子が地に降りて。

「何て硬い鱗だ。びくともしない。」


ミリオンも地に降り立ち。

「攻撃が来るぞっーーー。」


見えない攻撃が地面をえぐる。


近衛騎士達と女性達とフィリップ第二王子は、必死で避けた。


ローゼンが聖剣でガシっと受け止める。


キンキンキンっーー。力任せにローゼンを切断するかのように、見えない刃が押してくる。

ローゼンはそれを必死に受け止めながら。


「皇太子殿下っ。攻撃をっ。」


「心得た。」


ディオン皇太子やミリオン、ザビトがガンガン、闇竜に向かって攻撃をかける。


しかし、斬れない。


その時である。

ローゼンが叫んだ。


「私はマディニア王国、騎士団長。ローゼンシュリハルト。気概なら誰にも負けん。」


ローゼンの身体が光る。聖剣が黄金色に輝いた。


「うおおおおおおっーー。」


ドオオオオオオオオオーーーーン。


雷を纏った聖剣は、闇竜の攻撃を跳ね返しただけではなく、その光は闇竜の身体までも地面に吹っ飛ばした。

その攻撃を見た、ディオン皇太子とミリオン。


ディオン皇太子は、身を起こす闇竜に再び切りかかりながら。


「気概なら俺の方が上だ。やああああああっーーーー。」


闇竜の胸に緑の聖剣を突き刺す。緑の光が天を貫き、闇竜がぐおおおおおおっと悲鳴をあげる。


「俺だって負けるか。ミリオン・ハウエル。ここに参る。」


ミリオンが飛び上がり、黒い稲妻を纏った赤い聖剣で闇竜の首を斬る。

ずばっと黒い血が噴き出して、闇竜の首が吹っ飛んだ。

ドオオオオンと音を立てて、闇竜の身体が地に倒れる。飛んだ首はフィリップ第二王子の目の前に吹っ飛んだ。


ザビトがひゅうううっと口笛を吹いて。


「さすがだわい。聖剣の持ち主。俺の負けだ。」


腰を抜かしたフィリップ第二王子は、吹っ飛んできた闇竜の首を見て更に腰を抜かした。


スーティリアがフィリップ第二王子に向かって。

「だらしがないわよーー。私は腰抜けてないんだから。」


たわわな胸を布で縛って隠して、ラリィーンが。

「さすがミリオン様。素敵でしたわ。」

ミリオンがラリィーンの腰を引き寄せて。

「この格好も魅力的だな。ラリィーン。」

スーティリアの頭を撫でて。

「お前も偉かったな。」


スーティリアはえへんと言っていたが、ふと空を見上げれば、霧の彼方に、三つの黒い影がゆっくりと近づいてくるのが見える。


「ひぃいいいいいいっーーー。闇竜がっ。」


ディオン皇太子が肩に聖剣を担ぎ直し、

「ここからは大人の時間だ。」

ミリオンも赤い聖剣を手に持って。

「そうだな。お前たちは今のうちに逃げろ。」


ローゼンは指示を出す。

「ザビト総監、フィリップ第二王子と女性達を頼む。近衛騎士、お前達も撤退しろ。」


ザビト総監はローゼンに向かって。

「心得た。さぁ、皆、逃げるぞ。」


フィリップ第二王子を背負い、ザビトは走り出す。

女性達もミリオンを心配そうに、見やった後、走り出した。

その後を近衛騎士10人が続く。


ローゼンは逃げた連中が無事、逃げ切れるよう、下がって聖剣を構える。


凶悪な影が3頭、近づいてくる。


ディオン皇太子とミリオンは前に進み出て、霧に光る赤い目を見つめ、楽し気に笑った。


「俺達の戦いはこれからだぜ。」


「さぁ行こうか。」


二人は聖剣を手に、闇竜へ飛び掛かっていった。


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