プロローグ
幼い頃から三つ年上のアレクが大好きだった。
「アレク大好き! 他の人間になんて好かれなくたっていいわ」
「ありがとう。だけどユニカ、友達はいた方がいいよ?」
アレクが言うから、友達も作った。
だけど男の子の友達なんていらないわ。
「男嫌いとか言わないで、きちんと社交上の付き合いはしないといけないよ」
「アレクが言うなら、善処するわ」
アレクが言う通り、ちゃんと令嬢の仮面をかぶった。
だけど、一つだけ頷けないことがあった。
「ユニカ。数多ある婚約の申し込みを断ってしまうから、君ももう年頃なのにとご両親が困っていたよ。それなら学園で好きな子を見つけたらどうかな。ユニカの周りにも魅力的な子がたくさんいるはずだよ」
どんな婚約も断っていたのは、私はアレクとしか結婚したくないから。
他の人なんて興味ない。
だけど私が「好き!」と抱きつけば、いつしかアレクは困った顔をするようになった。
小さい頃は天使のような笑顔で「僕もだよ」と返してくれたのに。
私の両親に、私が誰とも婚約しないのはアレクがいるからだとでも言われたのかもしれない。
事実ではあるけど、わかってるんだったらアレクと結婚させてくれたらいいのに。
でもアレクには、幼い頃に決められた婚約者がいる。
それに数か月後私は、アレクは国境の戦線に送られてしまうと聞くことになった。
そんな絶望に打ちひしがれていた私は、ある日この世界の理を知ってしまった。
どんなに思っていても届かないなら。
幼馴染の女の子から脱することができないのなら。
こんな世界、ぶっ壊してやるわ。




