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第3話

『この二日何してたの?』と人に聞かれたら答えに困る程度には特になにもせず過ごし、出発の日を迎えた。

 出発当日、僕は何故か王城の門の前で、国王陛下と肩を並べて人を待っていた。

 魔王退治の旅の同行者となるべく、僕と同じように辞令を受けたのは、僕をいれて二人らしい。

 少ない。そう思ってしまった。

 最初は僕一人かと思っていたのに、仲間がいると聞いて期待を寄せすぎたようだ。

 しかも遅刻となれば、第一印象は決してよくない。

 仲間としてちゃんとやっていけるんだろうか。魔王を倒せるのかよりも目先の不安の方が募ってきた。

「遅れてさーせーっん!」

 王城の中から、両手を振りながらバタバタと走ってくる人影。……が、二つ。二つ? 王城の中から?

 僕と国王の前で立ち止まり、膝に手をついて息を整える青年と、その後ろで涼しい顔をしている美女。二人とも、旅仕度は万全だ。

 僕はその二人に見覚えがあった。が、きっとそっくりさんだ、そうに違いない。あの二人がこんな旅に出るわけがない。

 そう思って彼らの自己紹介を待ったが、青年の息はなかなか整わず、美女は喋らず、結局国王が重々しく口を開いた。

「見知っておるとは思うが、大臣の嫡男と、我が娘の第一王女だ」

「あっ、はい、ですよね」

 そっくりさんじゃなかった。

「旅の同行者は一人と聞いていました。王女はお見送りですか」

「王女は辞令ではなく、自らこの旅への同行を志願した」

「マ、…………左様ですか」

 思わずマジですかと言いそうになってしまった。

 一瞬甘い考えが過ぎったが、二人を見て分かった。時折見え隠れする王女の甘い視線は僕ではなく、大臣の嫡男に向けられていた。

 ははあ。なるほど。そうですか。はいはい。

「勇者よ、若い二人は何かと力にもなろうが、所詮は若輩。くれぐれもよろしく頼むぞ」

「……………………」

「よろしく頼むぞ?」

「…………はい、承りました」

 あまり承りたくはなかったが、国王に二回もよろしく言われて返事をしないわけにもいかなかった。

 つまりこれは、二人を守りつつも、節度を超えたお付き合いに突入しないよう見張れと、そういうことですか。

 目で尋ねると、国王は満足げに笑った。そうですかよ。

「俺めっちゃ頑張るんで、よろしくおねしゃーす!」

「…………」

 息が整った大臣の息子の無駄に元気で少々無礼な挨拶と、元気と愛想を彼に全て任せているかのような王女の無言の会釈。

 僕は曖昧に笑って、よろしく、と返した。

 部下がつくのも仕事上のチームを組むのもは初めてではないが、こんなに先行き不安なチームは初めてだった。

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