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午前八時
「尊師。あと十分で午前八時です」
信者のひとりが報告する。
「手抜かりはないな?」
「ありません」
「午前九時の分は?」
「すでに手配済みです」
尊師は満足そうにうなずくと、部屋の一番奥にある祭壇の前に正座した。その動きに合わせて信者も正座する。
「儀式の始まりだ」
そういうと尊師は唸るような声で祈りをささげた。この部屋を異様な雰囲気にさせているのは、電灯の類が一切なく、明かりは無数の蝋燭だけであることと、尊師と呼ばれたこの人物をはじめ、部屋にいる全員が白装束を着ており、頭には目、口、そして耳を除く顔のすべてを覆い尽くす白い頭巾をかぶっていることだ。祭壇には茅子元像と、一枚の旗が飾られていた。その旗は、黒地に白抜きで6つの花びらが並び、中央には記号が添えられていた。